第50話 封鎖だって⁉ 〇インボーブリッジも出来なかったのに
会談を終えた僕達は直ぐに『カオンジ』に戻った。
向こうの提案に乗ったので、帰る途中襲われるような事はなかったが、一応警戒しつつ帰った。
そして『カオンジ』に着くと、帰りの挨拶もそこそこにして、僕は会議をした。
内容は会談で話した事だ。
レイモンドさん、ソフィー、フェル姉の三人は行くのは反対した。
罠なのでは? というのが三人の意見だ。
アリアン、母さんの二人は賛成した。
何故と聞くと、二人共女の勘とだけ答えた。
それはないだろうと思いつつも、僕は意見の一つとして聞いているフリをする。
とりあえず、反対が多いな。
さて、どのような話をして、手勢を向こうが言う『奥地』に送り出すべきか。
その後も会議は続いたが、結局決まらず、そのまま次の日へともつれ込んだ。
何せ軍を送るにしても、防衛戦力ははあっても『奥地』に向かう戦力がない。
どのような場所なのか分からないが、精鋭を最低でも五百以上は欲しい。
フェル姉の部隊だったら、それくらいお安い御用だろうけど、あくまでもフェル姉の部隊は、この領地が一定の運営が出来る様になるまで貸し出された戦力という名目で、この領地に来ている。
その戦力を『奥地』にやるのは
それだけの戦力を割けば、この都市の防衛は難しくなる。
しかし、この話を上手くいかせれば、もう襲撃に怯える事がなくなる。
会議に出ている人達の心中はだいたいこんな感じだろう。
どちらの意見も間違ってはいない。なので、どう判断すべきか悩んでいる。
そのままずるずると会議が続き、一向に話が進まない。
僕達が『カオンジ』に戻ってから数日が経った。
朝起きて、朝食を取った僕は憂鬱な気分で会議室に向かった。
「はぁ~、期日は設けていなかったけど、このままだと何時行けるか分からないな」
どうしたものかなと考えていると、前からティナが走っている。
そして、僕の顔を見ると、急ブレーキをかけて目の前で止まった。
「りりりりり、リウイ。た、たたったた、大変なの⁉」
「ティナ。落ち着いて」
僕はティナを落ち着かせる。
「な、なんか、よくわからない、結晶体から、こ、ここ、こえがきこえて、くるのののっ」
「はい? 結晶体?」
何を言って、・・・・・・ああ、あれか。
多分、エアレーから貰った魔道具だな。
「で、それから、声が聞こえるの?」
「う、うん。リウイの私室を掃除するついでに綺麗に磨いていたら、突然光って、そしたら声が聞こえてきたから、あたし慌てて」
「そっか。うん、分かったよ。ティナ」
僕はティナを落ち着かせる為、頭を撫でる。
「あっ・・・・・・・~~~」
ティナは頭を撫でられ嬉しそうな顔をする。
僕が手を離すと、一瞬だけ少し残念そうな顔をしたが、直ぐに元の顔に戻した。
「後は僕が対処するから」
そう言って、僕は私室に向かう。何故かその後をティナもついてきた。
何でも「まだ、掃除の途中だから」と言うので、仕方がないので一緒に行く事にした。
そして、僕の私室に着くと、エアレーから貰った魔道具が宙に浮かんでいる。
更に、そこから何かしらの声が聞こえてくる。
『・・・・・・・せよ・・・・・・・せよ・・・・・・・』
うん。すっごい怖い。
しかも、はっきりと聞き取れないから、余計に怖い。
僕は恐る恐る、その結晶体に近付く。
事前に遠距離通信できる物だと聞いてはいるのだが、宙に浮かぶとは聞いていない。
結晶体を手の取れる所まで来ると、僕はその結晶体に触れる。
すると、先程まで雑音混じりの声がハッキリと聞こえた。
『応答せよ。リウイ殿。応答せよ。リウイ殿』
これはエアレーの声だ。
返事をするには、この結晶体に声を掛ければ良いのかな?
「こちら、リウイ。何か用か、エアレー殿?」
『おお、ようやく通じたか。最初、声を掛けた時は女子の声が聞こえたのじゃが、その後は話しかけても、誰も応えてくれなかったのでな。とりあえず、声を掛け続けたのじゃ』
「それで、何の用でしょうか?」
まだ、こちらは準備どころか、兵を出すべきかどうか検討中だと言うのに。
『それがじゃな。一つ問題が起こって、報告に来たのじゃ』
「問題?」
『実はな』
エアレーの話を聞いて、僕は愕然とした。
「そちらの通じる道が全て、封鎖された⁉』
『うむ。『ホーユス』『イシメオン』『シルベン』最後に『レバニー』の四つの部族が、他の部族の承諾も無しに、道を封鎖しおったのじゃ』
「何で、そんな、・・・・・・いや、違うな。僕の力量を計る為か?」
『大方、そんな所じゃろう。それで、お主はどうしたのじゃ?』
それは、僕の手に余るのなら、儂らの手でどうにかしようかと訊いているようだ。
それをしたら、僕は領主として認められないだろう。
流石に勘弁だな。
「いや、こちらで対処する」
手出しは無用だと暗に告げる。
『ほっほほ、お手並み拝見じゃな』
そう言って、通信が終ったのか結晶体の輝きが止まった。
「・・・・・・・・・」
「り、リウイ?」
「・・・・・・ティナ。直ぐに執務室にソフィーと母さんとアリアンとフェル姉を連れてきて、大至急」
「わ、分かったわ」
ティナは部屋から出て行くの確認して、僕は溜め息を吐いた。
「まさか、封鎖されるなんて」
映画化された刑事ドラマでも出来ない事をするなんて。
「道が封鎖された状態で、どうやって行ったものか」
僕以外誰もいない部屋で呟いた。