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第47話 歓待されているのが怖いけど、情報収集はする

 ユーサー達の案内で、僕達は『ダラノ』にある十二氏族の族長たちのテントがある場所に着いた。

 着くと直ぐに話し合いという訳ではなく、少し間を置いてから話し合いをする事になった。

 その間、僕達は別のテントで待たされる事になった。

 待たされるのは別に良いのだが、

「ささ、領主様、どうぞ」

 そう言って、うさ耳を生やした女性(恐らくレバニー族の人だと思う)が僕が持っているグラスに酒を注ぐ。

 酒を注がれたので、僕は舐める様に飲んだ。

 まだ、成人といえる年齢ではないので、ゴクゴクと喉を鳴らしながら飲めない。

「んぐんぐんぐっ・・・・・・ぷふ~、美味いな」

 母さん。貴方、樽ごと飲むとか、酒豪を通り越して何処の怪物ですか?

「よし、次の樽を持って来いっ」

「は、はい。直ちに」

 給仕をしてくれる人が慌てて、外に出て行く。

 そして持ってくると、それを奪うように奪い取ると、また喉を鳴らして飲みだす。

 母さん、一応護衛として着いてきたのだから、護衛らしい所を見せてよ。

 アリアンは僕の傍で水だけ飲んで、周囲を警戒しているよ。

 それなのに、酒を飲んで護衛らしい事をしないなんて、問題ありだよ。

 僕は酒を舐める様に飲みながら、周りを見る。

 僕達を歓待するうさ耳の女性達。

 露出が激しい部族衣装に身を包んでいるが、何処にも武装はしていない。

 しかし、歓待しているからこそ警戒はしないと駄目だ。

 三国志に出て来る曹操も降伏した敵から宴に誘われて、その夜、襲撃を受けて息子と甥と大事な家臣を殺されたんだ。

 でも、その話には続きがあって、曹操は自分の息子と甥が死んだ事よりも、家臣が死んだ事に悲しんだというのはどうかと思ったな。

 それで、その息子を生んだ妻と離婚したからな。

 まぁ、そんな故事があったんだ。注意だけはしないとね。

 そう思って居ると、誰かがテントに入ってきた。

 誰だろうと思って見ると、その人は女性だった。うさ耳を生やしていない代わりに鼠の耳を生やしていた。そして、子供みたいな身長なのにその数倍の身長はある尻尾を生やしていた。

 うさ耳を生やしている女性達が、入ってきた女性を見て敬いだしたので、十二氏族の中でも結構偉い人なんだと思った。

 そして、その女性は僕の前まで来ると、一礼しだした。

「ようこそ。お越しくださいました、領主様。わたしは十二氏族の一つ『カッサカル』族の族長ラタトスクと申します。以後お見知り置きを」

「おお、これはご丁寧に。僕はこの『オウエ』の領主をしているリウイと申します。今後ともよろしくお願いします」

 僕も頭を下げる。

 そして、頭を上げると、僕は訊ねた。

「族長様が来たという事は、話し合いの準備は整ったという事ですか?」

「いえ、それはまだ出来ていません。ですので、もう少しお待ちください」

「そっか、じゃあもう少し待たせてもらおうか」

 僕はグラスを飲みながら、ラタトスクと名乗った女性を見る。

 身長が小さいので僕と同じぐらいの年齢に見えるな。

 でも、こう見えて、実は僕よりも年上という可能性もあるな。

「むっ」

 あれ、母さんが唸ったぞ。

 何かあったんだろうか?

「あ、あの、何か?」

「・・・・・・何でもない」

 母さんは酒樽を飲みながら、ラタトスクを見る。

 ラタトスクは母さんの視線の圧力で、ちょっとビクビクしている。

 う~ん。怯えているんだろうけど、何か可愛いな。

 これはあれか保護欲を誘うというのだろうか?

 見ていて、ほっこりするな。

 でも、可哀そうだから助けてあげよう。

「ちょっと酔いを醒ましたいので、外に出ても良いですか?」

「え、えとえと、その、わたしも付いて行ってもいいのでしたら」

「じゃあ、それでお願いします」

「は、はい」

 僕は立ち上がると、アリアンも立ち上がるが、僕は手で制した。

「ここに残っていてくれ」

「ですが」

「いいから」

「・・・・・・・分かりました」

 アリアンは渋々だが、納得した。

 母さんは僕を一瞬睨んだが、直ぐに酒を飲みだす。

 僕はラタトスクと一緒に外に出た。


  ラタトスクさんと一緒に外に出た僕は、まずしたのは美味しい空気を吸った。

「ふぅ、空気が美味しいな」

 先程まで酒臭いテントの中にいたので、空気が美味しく感じる。

「母さんも困ったものだ」

「ははは、凄いお母様でしたね」

 ラタトスクさんは苦笑しながら言う。

 う~ん。この人、小さいせいか僕よりも年下に見えるな。  

「あの、何か?」

 じっと見ていたせいか、ラタトスクさんは困惑していた。

「ああ、すまない。ネズミの獣人を初めて見たから、つい、見てしまった」

「ああ、そうなんですか」

「ラタトスクは女性のようだけど、十二氏族の族長は女性の族長はそれなりに居るんですか?」

 話しあいが始まる前に少しでも情報収集しようと話し掛ける。

「そうですね。結構いますよ」

「族長って事だから、結構お年の方が多いのかな?」

「いえ、ご高齢の方も居ますが殆どの方はわたしより少し上か、同い年ぐらいですね」

 それを聞いて思ったのは、十二氏族の族長達の年齢層が分からなくなった。

「ちなみに、ラタトスクは何歳なのかな?」

 女性に年齢を聞くのは失礼なのは知っているけど、気になったので聞いてみた。

「わたしですか。わたしは今年で二十ですよ」

 それを聞いて衝撃を受けた。

 こんな見た目で僕よりも年上なんて。

「? どうかしました?」

 ラタトスクさんは首を傾げる。

「い、いや、別に」

 僕は驚きを顔に出さないよう頑張った。 

 その後も当たり障りのない会話をしながら、僕達は時間を潰した。  

 そうしていると、うさ耳を生やした女性がやって来た。 

「お話し中失礼します。領主様、族長様方の話しあいの準備が整ったそうです」

「わかった」 

「では、わたしはこれで失礼します」

 ラタトスクさんは一礼して、その場を離れた。

「話しあいの場だと、僕の連れは一緒なのかな?」

 そこが気になったので、聞いてみた。

「はい。一緒で構わないそうです」

 う~ん。向こうの狙いが分からなくなったな。

 まぁ、向こうがそう言うのであれば、こちらも遠慮なく、母さん達を連れていこう。

 じゃあ、まずは母さん達がいるところに行くとしよう。


 








 ラタトスクがリウイ達のテントに来た時。

「むっ」

 唸るハバキ。

 内心ではこう思っていた。

(可愛いな。わたしの服のコレクションを着せても、似合いそうだ。いっその事、こやつ用の服を用立てるか? 何が似合うだろうか。フリフリのレース付きのドレスか? それとも可愛い系の服か? はたまたクール系の服で行くか? う~む。悩むな)

 いっけん睨んでいる様に見えたハバキの視線は、内心ではこう思っていた。

 反対のラタトスクはというと。

(こ、怖いっ。な、何で、あんなに睨んでいるのだろう? わ、わたし、何かしたかな? も、もしかして、わたしを食べるつもりなのかな? わ、わたしなんか食べても、美味しくないよ~~~⁉)

 ハバキの視線に怯えるラタトスクだった。

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