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閑話 十二氏族会議

 今回は第三者視点です。

とある場所にある一室。

 そこでは男女合わせて十数人の者達が円卓に座っていた。だが一人だけ、その円卓に座らず跪いていた。

 その者は『カオンジ』に使者として向かった者だった。

「そうか。領主は我らとの対談に応じたか」

「はっ。そう申していました」

「ご苦労。下がってよいぞ」

 リウイ達の所に使者として向かった『モンガド』族の男は下部屋から出て行った。

 男が部屋から出て行くのを見送ると、円卓に座っている者が口を開いた。

「どうやら、向こうは我らを問答無用に族滅させるつもりはないようだ」

 そう話したのは、鷲の顔をした男だった。

 翼が有る事と人間の手と鳥の足を持っている事から、鳥系の獣人だと推測された。

 その者の名前はアルタイル。十二氏族の一つ『バダン』族の族長だ。

 アルタイルの言葉の後に続けて、円卓に座っている者達が話しだす。

「向こうは我らをどうするつもりなのだ?」

「話し合いで仲良くして、隙を見つけたら強襲してくるつもりかもしれないわね」

 そう話し出したのは、猿の顔をした者と兎の耳を生やした女性だった。

 猿の顔をした者の顔付きはゴリラのような顔付きだ。

 服の上からでも厚い胸筋が分かる。

 ゴリラのような顔付きをしている者は『モンガド』族の族長スグリーヴァだ。

 そして兎の耳を生やした女性はとても綺麗な顔立ちをしていた。

 白い耳に身体の至る所に白い毛が見える。

 赤い瞳で円卓に座っている者達を見回す。

 この女性は『レバニー』族の族長アルネブだ。

 過激な発言から分かる様に、十二氏族の中でも武闘派で知られている。

「やれやれ、レバニーの所は血の毛が多い事だ」

 そう言う者は犬顔というか狼の顔をしていた。

 青い毛並みという珍しい色だ。

 この青い狼は『シルベン』族の族長マルコシアスだ。

 見た目に反して十二氏族の中では知性派で知られている。

「左様。そのような事を考えていると、向こうにもそう思われるじゃろうて」

 そう言うのは羊の姿をした獣人だった。

 声からしてかなりの高齢のようだ。

 それも当然だ。現十二氏族族長の中で最年長で最古参である『ゴーゼフ』族長エアレーという。

 十二氏族の中では穏健派で通っている。

「まぁ、アルネブの言いたい事も分かるがな。俺達は魔人族に散々煮え湯を飲まされてきたんだ」

 アルネブの言葉にうなずく者は猪の顔をした獣人だった。

 この者がリウイ達に捕まったカリュドーンの父であり『イシメオン』族の族長エリュマントスだ。

 リウイの話を聞いて、十二氏族の会議の席でこの話をした張本人であるが、今だに何か裏があるのではと疑っているようだ。

「しかし、それなら最初からそう疑っていたら、上手くいく話も上手くいかなくなると思います」

 そう言うのは円卓に座っている者達の中で、一番背が小さく、それでいて若い女性の声だった。

 子供のような身長なのだが、それに反して尾骶骨あたりから生えている尻尾はその者の数倍はありそうな位に大きい。

 この女性は十二氏族族長の中で最年少の族長で『カッサカル』の族長ラタトスクだ。

 頭頂部にある鼠の耳が、しきりにピコピコ動いているので緊張しているのだろう。

「だが、用心をしても悪くはない」

 ボソとそれほど大きくない声なのだが、しっかりと聞き取れる音量の声だった。

 その者は椅子は無く床に座っている。だが、椅子に座っている他の者達と同じ位の背丈があった。

 何故、その者に椅子が無いのかと言うと、足が四本あるのでそれ専用の椅子は中々作るのが難しい。なので、会議の際、その者の一族の椅子は無い。何せ、その者は上半身は精悍な男だが、下半身は馬であった。その者は『ホーユス』族族長デイオメデスと言う。

「ディオメデスの言う事も分かるが、このままでは緩やかな滅びになるだけだぞ!」

 牛の顔をした男性が円卓を叩きなが叫ぶ。

 恐らく、牛の獣人なのだろうが、不思議な事にその者には角が生えていなかった。

 折れた形跡はないので、生まれた時からないのだろう。

 鼻息を荒くするこの者は『ネフタリ』族族長アウズンブラという者だ。

 アウンズンブラの言う通り、各氏族の食糧庫にはそれほど食料と言える物がなかった。

 それには理由があった。去年は天候不順で不作だった。

 余裕がある部族の食料を分け与える事で、何とか餓死者は出なかったがそれだけだ。

 去年の影響で今年も実りが良いと言える程ではなかった。

 去年は何とかなったが、今年はどうなるか分からない。

 なので、アウズンブラはリウイに自分達を援助してくれる事を期待しているのだ。

「それもあるが、もう一つ問題もある」

「ですね。寧ろ、そっちの方が大事です」

 竜の顔をした男性と上半身は人で下半身は蛇の姿をしたラミアと言う種族の女性が話し出す。

 竜の顔した男性は部族の民族衣装なのか、綺麗な翠色の生地で作られた腰骨までスリットが入った服だ。その服の下にズボンのような物を履いているので、特に問題はない。

 竜の顔をした者は『タゼブル』族の族長チンロンという者だ。

 女性の方は『ジャミニン』族族長ワルタハンガと言う。

 ワルタハンガは爬虫類特有の縦長の瞳孔をしている。

 時折、「シー、シー」と言いながら二股に分かれた舌を出している。

 何を考えているか分からないように見えるが、こう見えて知性派であった。

「そうだ。の対処だ」

 頭頂部に虎耳があり、尻から伸びた虎の尻尾を生やした女性はボノビビと言う。

 虎の耳と尻尾が生えている以外は、ツリ目がちなスレンダーでグラマラスな体型の女性だ。

 この者は『タシエル』族の族長ではない。

 現族長であるチアンリアンが奥地の対処の為に会議に出席できず、族長の妹という事で族長代行としてボノビビが出ているのだ。

「ああ、本当にそうだな。まさか、俺達以外にも先住民族がまだ残っていたとはな」

 マルコシアスは去年の事を思い出した。

 去年は不作だったので、食料を求めて魔人族の領地に襲撃を掛けると同時に、自分達の縄張りにしている所の更に北に森がある。

 彼らは其処を『奥地』と呼んでいた。

 あまりに大きな大森林なので、十二氏族達がこの地に定住した時には探索にでる事はなかった。

 だが、去年は不作だったのでこれだけ大きな森林なのだから、食料はかなりあるだろうと思い、各部族の者達を選抜した探索部隊を派遣した。

 数十日後、探索に出した者達が帰ってきた。

 しかし、帰って来たのは送り出した数の半数で、その残った半数も何処かしら傷を負っていた。

 生き残った者達の話を聞いた所、奥地にはアラクネ、吸血鬼、ダークエルフ、鎧を着た巨人族という種族間抗争にに巻き込まれたそうだ。

 何度か交渉しようと使者を出したが『そちらと話をする必要性がない」という返事がもらった。

 それだけではなく、少し前まで一部の奥地の種族が森から出てきて、部族の村に襲撃を仕掛けてきた。

 このままでは二方面に敵を作る事になる。

 ならば、どうするかという話になっていた所で、リウイが交渉を持ちかけてきた。

 これ幸いと族長達は話しに乗る事にしたのだ。

「向こうはどんな手を売って来ると思う?」

「分からん。正直、このリウイという人物の底が見えん」

 アウズンブラはマルコシアスに話しかけるが、マルコシアスはリウイと言う人物が良く分からないと言うので、皆、頭を悩ませる。

 これで単純な者なら話をこちらの好きに持って行ける。切れ者なら利害関係を説いて、上手く立ち回ろうとすればいい。

 だが、良く分からない者を相手では対処に困る。

 その後も十二氏族達の話は続いたが、結局会ってみないと分からないという結論で終わった。















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