第45話 話しは分かった
十二氏族からの手紙を受け取ると、中身を見た。
『この領地の領主となったリウイ殿。
我ら十二氏族の総意でそちらの話しに乗る事とした。
それに従い、明後日に『ダラノ』まで来られたし。
そこで今後の事を話しあおう。
ただし、供は二人までとする。
十二氏族代表、エリュマントス』
手紙の読んでみるなり、レイモンドさんが言う。
「罠ともとれる文章ですな。どうなさいます?」
僕は直ぐに返答せず、少し考える。
罠にしては、少々、あからさま過ぎる。
そう思わせてとも考えられるが、そうまでして僕を除いても向こうが大変な事になるだけだ。
向こうの狙いは分からないこの状況でどうしたものか。
悩んでいると、ドアがノックもなしに開いた。
「何をためらっている。馬鹿息子っ」
「母さん⁉」
何で、いきなり入ってくるの?
「何か用?」
「用ではない。十二氏族から手紙が届いたのだろう?」
何故、それを知っている?
話したのかと思い、僕はレイモンドさんを見るが、レイモンドさんは首を横に振る。
「ふん。丁度、十二氏族の使者が来た時に、通りかかってなそれで知っただけだ」
成程。それじゃあ仕方がないな。
「息子よ。向こうから手紙が来たのなら、やる事は一つだ」
「・・・・・・それは?」
生唾を飲み込む訊ねる。
「行くに決まっていだろう。諺にもあるだろう『グリフォンの卵が欲しければ、グリフォンの巣に突撃して、親グリフォンを殺せ』と」
「いや、そんな諺聞いた事ないから」
僕は手を振る。
もしかして、母さんが言いたいのは『グリフォンの羽が欲っするなら、グリフォンの巣に飛び込め」じゃないのか?
でも、こうして聞くと意味的に近いな。どっちも危険を冒さないと何も手に入らないと言う意味だ。
確かに危険を冒して行動する事も必要だろう。
しかし、身の安全は大丈夫だろうか?
「えぇいっ、男だったら時には危険だと分かっていても行動するべきだ。この状況だったら考えても埒が明かないだろうがっ」
「確かに」
その言い分には一理あった。
う~ん。・・・・・・よし、向こうの話しに乗ろう。
「この手紙を渡した使者は?」
「別室で手紙の返事を待っています」
「よし、直ぐに返事を書こう」
「領主様。もしかして、行かれるのですか?」
「そのつもりだ」
「危険です。向こうは何を考えているか分からないのですぞっ」
「だからと言って、手をこまねいていたら、結局何の意味もないだろう」
「それは、そうですが」
「という訳で、向こうと話をする。これは決定事項だっ」
「・・・・・・領主様に従います」
レイモンドさんはまだ何か言いたそうであったが、ここは了承してもらおう。
僕は直ぐに手紙の返事を書いた。
その手紙を使者に渡した。使者は手紙を受け取ると、部屋を出て行った。
そして、僕はフェル姉とソフィーと呼んでこの話をした。
フェル姉は「わたしに相談なしに、そんな事決めるなんて~」と拗ねたが宥めた。フェル姉を宥め終えると、僕は供に誰を連れて行くか話し合った。
結果、母さんとアリアンを連れて行く事に決定した。
フェル姉は僕が不在時の軍団の指揮があるから無理。
ソフィーは内政官として必要な時もあるかも知れないで無理。
シャリュとティナでは戦力として心もとないという事で却下。
消去法的に母さんとアリアンになった。
母さんは文句無しに強い。
アリアンは魔獣だから鼻が強いし、結構強力な魔獣らしい。
なので、この二人|(と一匹?)を連れて行く事に決まった。
そして直ぐにその場所に向かう準備をした。
指定された場所は『カオンジ』から北に一日駆けた所にあるそうなので、今のうちに準備して、明日立たないと間に合わなくなる。
そう準備していると、母さんが声を掛ける。
「そう言えば、愚息よ」
「なに? 母さん」
「お前、ティナに遅れると言ったのか?」
はい? 遅れる?
・・・・・・。
あ、あああああああああっ⁉
す っ か り わ す れ て た⁉
今から行って間に合うかな⁉
でも、準備がっ。
「リウイ様、準備はわたしがしておきますから、どうぞ。ティナと待ち合わせの所に行ってください」
「でも」
「早く行かないと、こうなるぞ」
母さんが鬼になるというポーズをした。
た、確かに、ここは早く行った方が良さそうだ。
僕は支度をシャリュに任せて、部屋を飛び出した。
待ち合わせ場所に着くと、ティナは頭から湯気が出そうなくらいに怒っていた。
誠心誠意謝って、ティナを宥めた。
ティナが大人しくなったので、僕達は都市の散策に出た。