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第13話 王様と会議

 そんなこんなで、僕達は食堂に行き朝食を取る。

 食堂に着いたら、既にクラスメート達は朝食を食べていた。

 僕達というか僕を見て、男子は食べる手を止めて嫉妬と羨望に満ちた目で見てくる。

(朝から、そんな目で見なくても)

 気持は分かる。我が校で三大女神の内の二人に挟まれて来たのだから、羨ましいと思うのは分かる。

 とりあえず、男子の視線を無視して、僕達が座れる所を探す。

「ノブ、ここが空いているぞ」

 ユエが座りながら手招きしてくる。

 はっきり言って、座りたくない。

 今でさえ男子に睨まれているのに、ユエが座っている所に行ったら、どうなるか目に見えている。

 しかし、食堂を見ると僕達が一緒に座れる所はない。

 仕方がなく僕達はユエの所に行く。行く途中、男子から睨まれた。その視線にビクビクしながら、僕達はユエの席に行く。

 四人掛けテーブルで、もうユエが座っている。

 何処に座ろうと思っていたら、ユエが僕を見ながら自分の隣の席を、手でポンポンと叩く。

 僕に座れという意味なのかと思い、指で自分を指す。

 ユエはコクリと頷く。

 座りたくないなあと思い、僕は顔を反らして、空いている席に座ろうとしたらユエが睨み、しきりに自分の隣の席を叩く。

 これはそこに座らないと、どんな目に遭うか分からないな。

 そう思い、僕はユエの隣に座る。

 ユエは僕が隣に座ると、嬉しそうに顔を緩ませる。

 そして、マイちゃん達を見て、不敵に微笑む。

 その微笑みを見て、マイちゃん達が悔しそうな顔をする。

 マイちゃん達は、すぐに気を取り直して席に座る。

 ユエの対面にマイちゃん、僕の対面に椎名さんという配置になった。

 僕達が座ると、メイドさん達が飲み物を持って来てくれた。飲み物で喉を潤して、僕達は今日はどんな予定なのか気になり、メイドさんに訊いた。

「今日は、僕達は何をしたら良いのでしょうか?」

「本日は、王様を交えて会議があるそうです。皆様はそれに参加するようにとお達しがありました」

「会議か、じゃあ、今後の事を話しあうのか」

 僕達が決めた事もその時に話せば良いだろう。

 見た感じ、あの王様はそれ程無体な事を言わないと思う。

(まぁ、話してみないと分からないか)

 そう思っていると、メイドさんが朝食を運んできてくれた。

 一目見て、ああ異世界だなと思う。

 青いスープに、皿に盛られているのは赤い木の葉型の物体と黒い細長い物。パンは見た感じ全粒粉のパンだ。正直、パン以外食べれるのかと思う。

(朝食は一日の始まりで一番大切だ。無理をしてでも食べないとっ)

 意を決して、僕はフォーク取り食べようとした。

「ほら、ノブ。これなんか美味しいぞ。あ~んだ」

 ユエが青いスープをスプーンで一口分取って、僕の口元まで持ってくる。

「ゆ、ユエさん、あなた、何をしているんですか?」

「何って、食べさせているだけだぞ。ほら、口を開けろ。あ~ん」

 ユエは口にスプーンを押し付ける。

 これは口を開けるまで、押し付けられるなと思い口を開けようとしたら。

 椎名さんがフォークで赤い物体を刺して、僕の口元に持ってきた。

「猪田君、こっちの方が美味しいよ。あ~ん」

 椎名さんが笑顔で僕の口に赤い物体を押し付ける。

 ユエと椎名さんの目が合った。僕には見えないが、二人の間に火花が散っているだろう。

 ここはどっちを食べてもしこりが残る。なので、マイちゃんに宥めてもらうしかない。

 そう思い、僕はマイちゃんを見ると、僕達の事なんか気にせず、朝食をバクバク食べていた。

(マイちゃんっっっっっ⁉)

 僕は心の中で叫んだ。

 しかし、その叫びは無情にも届かない。


 ギスギスした空気の中で朝食を食べたが、ちっとも美味しいと思わなかった。

 朝食を食べただけなのに、何故か疲れた。

 僕達は食堂から、王様が居る会議室へと案内された。

 歩く事数十分。僕達はメイドの案内で、王様が居る会議室の前に着いた。

「異世界人様達をお連れしました」

 案内してくれたメイドさんが、部屋の前に居る衛兵に言う。

「少し待て」

 衛兵は扉を開けて、中にヘと入って行く。僕達が来た事を中に居る人達に告げるのだろう。

 少しして、衛兵が戻って来た。

「どうぞ、王様が中でお待ちです。お入り下さい」

 衛兵が扉を開けてくれたので、僕達は天城君を先頭にして中ヘと入る。

 通された部屋は、換気の為に窓が幾つか天井に備え付けてられ、半円状の会議室になっていた。

 国会中継で見た議事堂みたいだなと僕はここの会議室を見て、そう思った。

 そして議長席の所に、ここの国の王様が座り、その右隣に昨日僕と踊ってくれた王女様が座る。

 左隣の席には、ゴテゴテに装飾された上に動き辛そうにデザインされた服を着た男性が座っている。

 カイゼル髭を生やした四十代ぐらいの人だ。

 王様と対面する位置に、昨日見た偉い人達と鎧を着た人達が少し離れて座っている。

 その中には、ライデル大司教とレオン騎士団長が居た。

(多分、文官と武官で分かれているんだろうな)

 王様が居るので、僕達も座って会議に参加しないとけいない。だが、何処に座れば良いのだろう。

「皆様はこちらにお座り下さい」

 僕達を案内してくれたメイドさんが、手で座る所を示す。

 そこは一番後ろの席で、臣下達の後ろだった。

 丁度、僕達全員座れる席があるようだ。僕達は言われた通りに座る。

 メイドさんは僕達に一礼して、王様にも一礼して部屋から出て行った。

 扉が閉まる音が響き、王様はこの場に居る人達を一瞥して口を開く。

「さて、異世界から来た者達も来たので、これより会議を行う。まずは、異世界から来ていただいた者達について話した」

 王様はそう言って、家臣達に何故僕達を呼んだか説明を始める。

 というか、家臣達に今まで説明していなかったのか?

 その説明が終ると、鎧を着た人達の中で、一人テーブルを叩いて立ち上がる者が居た。

「ファーン王っ、何故、我らの承諾もなしに異世界人たちを呼んだのです! 幾ら王とて受け入れる事ではありませんぞ!」

「控えろ! カシュー戦士長! 幾らそなたでも無礼であろう!」

 立ち上がっている人はカシュー戦士長と言う人らしい。

 戦士長と言うぐらいだ。武官の中ではそれなりに偉いのだろう。

 その戦士長を叱責しているのは、王様の左隣に座っているカイゼル髭を生やした人だ。

 武官の中でも偉いと思われる戦士長を叱責できるのだ。それなりに偉いのだろう。

「ですが」

「カシュ―、もう異世界人を呼んでしまったのだ。もはや、後の祭りにすぎん」

「くっ」

 レオン騎士団長にそう宥められ、カシュ―戦士長は悔しそうな顔で座る。

「カシュ―よ。そなたの気持ちも分かる。だが、国を守る為にはこの手段しかないかったのだ。許せとは言わん。だが、受け入れて欲しい」

「・・・・・・御意」

 カシュー戦士長は苦しそうに言う。

 さて、始まりから少し困った事になったぞ。

 この状態で条件付きで戦争に参加しますと言おうなら、非難轟々だろうな。

 どう言ったら良いかなと思っていると、天城君が手を挙げた。

「発言しても良いでしょうか?」

「どうぞ、え~と、失礼、お名前は?」

「天城です。天城信成です」

「では、アマギ殿、お話し下さい」

 天城君が立ち上がる。僕達もこの会場に居る人達全員天城君に目を向ける。

(何故だろう。何か嫌な予感がする・・・・・・)

 僕は漠然とそう思った。

 そして、天城君は口をおもむろに口を開く。

「俺達は、貴方がたの戦争に参加はします」

 おおっと言う声が一部で聞こえてくる。

「ですが、それには条件がある。俺達の中には戦争に参加したくない者が居る。なので、戦争に参加するのは全員で二十八名だけだ。残りの十五名はこの王宮で衣食住を保証してもらいたい」

 天城君が言い終えると、会議室はし~んと静まりかえる。

 西園寺君は呆れたように溜息を吐く。ユエは「空気よめ。馬鹿めが!」と言うし。

 椎名さんは言葉もないのか、ただ首を横に振る。マイちゃんは頭が痛そうにこめかみを抑える。

 僕は頭を抱えた。

(天城君、もっと言い方と言うものがあるだろうに・・・・・・)

 そして、会議室に居る人達から非難されだした。

「何故、全員戦争に参加しない! その十五名は女か⁉」

「我が国の存亡がかかっているこの時に、戦争に参加しないだとふざけるな‼」

「そんな奴らの生活を見る必要など、我が国にはないわ!」

「なっ、あんた達が呼んだのだから、僕達が帰れる手段を見つかるまで面倒を見るべきだろうが!」

「そもそも、貴様らを呼ばなくても、我々だけで十分に対処できる。陛下が国を守る為に仕方がなく呼ばれたのだ。そこ間違えるな!」

「なんだとっ! 俺らを呼んだのはあんた達だろう⁉ なら、生活の面倒を見るぐらいの事をしても良いだろうが!」

「我が国には役に立たない穀つぶしなどいらんわ! 何処ぞで野たれ死ね!」

「ふざけるな! いきなり、呼ばれてはい、分かりましたって言う奴が居る訳ないだろう!」

 天城君と家臣達で口論が始まった。

 僕達の中にも天城君の意見に同調する者が出てきて、口論は更に激しくなった。

「これは、もう収拾がつかなそうだね」

「そうだな。やはり、天城は性質が悪い。自分では正しい事を言っていると思っているだろうが、この状況でそのまま伝える奴が居るかっ」

 ユエは怒り心頭で、今にも天城君の頭をぶっ叩きそうだ。

 見た目に反して、ユエは気が短い所がある。小さい頃はちょっとした事で直ぐに怒っていた。

 僕はユエを宥めながら、この状況をどうしようか考えた。

 

 「皆の者、静まれ」

 激しく罵りあいの中で、凛とした声が響いた。

 その声で、ざわめきが消えた。

「陛下の御前であるそ。見苦しいものを見せるでない」

「も、申し訳ございません。姫様」

 武官の人達は皆、平謝りだ。

 これを見るに、どうやらこの第一王女様は軍部に影響力を持った人のだと分る。

 そして、アウラ王女様は天城君に目を向ける。

「アマギとやら、そちの今の発言は異世界人全員の総意と言う事と取ってよいな?」

「ああ、その通りだ」

 偉そうに胸を張りながら言う天城君。

 天城君、王女様にその態度は頂けないよ。現に武官と文官の人達がすっごい睨んでいるよ。

「成程。分かった。そちらの意見を聞いてやろう」

「姫様⁉」

 それを聞いて、武官の人達は皆席を立つ。

「戦う気概のない者を無理矢理戦場に出しても、何の役にたたん。何もさせないでいた方がかえって安全だ。昔から言うだろう。無能な味方は強大な敵よりも性質が悪いっと」

 アウラ王女がそう言うので、武官の人達はしぶしぶ席に座る。

 これで、ひとまず会議は落ち着くかなお思っていたら、王女様の発言を聞いて、憤慨する者がいた。

「俺達が無能だって! いきなり、呼び出しておいて無能呼ばわりするとは何様だ⁉」

 天城君が食って掛かるように、王女様に噛み付く。

(もういい加減、静かにさせた方がいいかな?)

 これでは、会議がまったく進まない。

 どうしようかと思っていたら、何時の間にかマイちゃんが天城君の後ろに回っていた。

 そして、拳を握り思いっきり天城君の脳天に振り下ろした。

「あんた、話しに水を差すんじゃないわよ。これじゃあ、話が進まないでしょうがっ」

 頭を叩かれた天城君は手で頭を抑えながら、振り返る。

「でも、真田さん」

「でももしかもない。あんたはこれ以上何も言わないの、分かった?」

「えっ⁉」

「わ・か・っ・た?」

「・・・・・・わ、分かった」

 天城君は静かに席に座る。

 それを見たマイちゃんは、自分が座っていた席に座る。

(流石はマイちゃんだ。でも、自分の取り巻きぐらいはちゃんとさせないと)

 マイちゃん達のやり取りで、場が少し変な空気になったが、カイゼル髭の人が咳払いをして、元の空気に戻した。

「さて、我らとしても、異世界から皆様を呼んだのは、我らの戦争に参加してもらう為ですが、戦闘に適さない職業や性格の方もおられるでしょう。なので、無理に参加してもらわなくても結構です。その際皆様の安全と衣食住は保証いたします」

 カイゼル髭の人がそう言うと、僕達は喜んだ。

「本日はそれを聞くために、皆様を御呼びいたしました。なので、戦争に参加しない方はどうぞ、この席を立ち、自分が居た部屋にお戻りください。道が分からないのであれば、外に居る者達に言えば案内します。戦争に参加する方だけこの場に残って下さい。少しお話があります」

 そう言われて、戦争に参加しないクラスメート達は席を立ち、部屋から出て行く。

 皆が出て行くと、今度は王様が口を開いた。

「まずは、この場に残ってくれた者達には感謝したい。よくぞ、戦争に参加する意思を持ってくれた、儂は心から礼を言う」

 王様の声には本当に感謝の気持ちが込められてるのが分かる。

 そして、王様は僕達を一人一人見て、隣に居る王女様に顔を向けて頷く。

 王女様も頷いた意味が分かっているのか、無言で頷き返した。

「さて、そなた達の職業は大体は其処に居る大司教から聞いている。だが、そなた達がどれほどの実力を持っているか、儂達には分からない。なので、明日から暫くの間訓練をしてもらい。それで適性を見てから、各々に合った戦闘の仕方を教えよう」

「適性だったら、職業で分かるのでは?」

 西園寺君がそう言うと、王様は首を横に振る。

「職業がそうだからと言って、そなた達の性格にその適性に合っているかどうか分からない」

 成程、僕達は色々な職業を持っているけど、だからと言って僕達の性格がその職業にマッチングしているか分からないから、訓練してそこで適性を見るのだろう。

 現に、僕達の中には見た目はマッチョなのに、水晶に言われた職業は『魔法技巧士』と言う職業を授かった者もいる。本人もこんな手先が器用な奴がする職業よりも戦士が良かったと嘆いていた。

 そんな感じで、自分たちの性格にあった戦闘の仕方を学ぶために、しばらくは訓練するようだ。

 僕達の訓練を監督するのは、第一王女のアウラ様だ。

「明日から、一端の兵士の働きぐらいは出来るいうに扱くつもりだ。各人。そのつもりで」

 王女様がそう言って、王様が締めくくり会議は終わった。

 会議が終って、安堵の息を吐いた。

 会議に参加した人達は隣の席に座っていた人と話しながら、会議室から出て行った。

 王様もカイゼル髭の人を連れて、会議室から出て行く。

 とりあえず、会議がそれほど支障なく終わった事に喜びながら、僕も部屋に戻ろうと立ち上がる。

「イノータ殿、ちょっとよろしいか?」

 そう、僕に声を掛けるのは、昨日の宴の席でアスクレイ侯爵だ。

「侯爵様、何か御用でしょうか?」

「いえ、会議をが終わったことですし、昨日の話の続きでもしようかと思いまして、この後はお暇でしょうか?」

 この後は、何もする事がないので、どう時間を潰そうかと思っていた所だ。

「特にこれといった用事はありません」

「では、場所を変えて、そちらの世界の事でも話していただけますかな?」

「僕が話せることでよければ」

「そうですか。では、参りましょう」

「あの、どちらに行くのですか?」

「わたしの研究所です」

 僕はどんな事を研究するのか気になり、アスクレイ侯爵の後に付いて行く。




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