第43話 話を聞いて、十二氏族の事がより分かった。
カリュドーンの話を聞いて、部下が部屋の準備が出来たと言うので部下に案内してもらう。
もし、カリュドーン又は部下の人が逃げても構わない。
逃げた所で、こちらの意思は伝えたのだから、大丈夫だろう。
問題は十二氏族の族長達が、僕達と交渉してくれるかだ。
向こうにその意思がなければ、絵に描いた餅だ。
捕まえた時は、それなりに高位の者が居ると思っていたけど、まさか族長の息子が居るとは思わなかった。
ついでに、十二氏族の族長達と話が出来るか聞いたけど、話はつけてくれると言ったので大丈夫だと思う。駄目だったら駄目で他の手段を取れば良いだけだ。
話を聞き終えた僕は執務室に向かう。
聞いた話を纏める為だ。
執務室にある僕の椅子に座ると、一緒に付いてきレイモンドさんが訊ねてきた。
「領主様。本当に十二氏族の者達と交渉するのですか?」
「まぁ、いきなり族滅はしたくないからね」
「向こうは話に乗って来るでしょうか?」
「今、十二氏族全体が食料が不足している状態だから、大丈夫だと思うよ」
「そう上手くいくでしょうか?」
「向こうの態度と、こっちの食料状況次第かな。そう言えば、この都市の食料状態はどうなっている?」
「はぁ、去年は領地全体では不作でしたが、アーヌル達が頑張りまして」
「どんな事をしたんだい?」
「それがよく分からないもですが、畑仕事をしたかと思えば、突然空を見て「雨ガ降ラナ過ギル。更ニ例年ニ比ベテ気温ガ高イ。日照リナル」と言って、穴を掘りだして水脈を見つけて、それを都市全体に行き渡る様に水道橋と言うのを作りました。お蔭で去年は都市は水も食料も不足はしませんでした。その代わり村の殆どが不作でした。
なので、都市で出来た食料を村々に回す事で人口の減少は避ける事は出来ました」
アーヌル達って、凄い高性能だな‼
空を見ただけで、今年は凶作か豊作か分かるのか。
更に水道橋を造る技術と知識もあるとは、これは思っていたよりも有能だ。
工兵としても使えるという事か。便利だな。
ロボットみたいな物だから、体力いやエネルギーか。そのエネルギーが切れるまで動き続けれるのだから、人の倍以上働けるという事だ。
だとしたら、色々と使えるな。
「まぁ、今は残りの十二氏族について話を纏めようか」
「はっ。分かりました」
「カリュドーンの話を聞いた所、残りの『バダン』『ネフタリ』『モンガド』『カッサカル』『タシエル』『タゼブル』『ジャミニン』『ゴーゼフ』はどんな種族か分かった」
「ええ、長年分からなかったので、ようやく分かり嬉しく思います」
「今まで一度も捕まえる事が出来なかったのか?」
「はい。『シルベン』と『イシメオン』は鼻が利きますので、捕まえようとすると逃げられてしまい『レバニー』ですと聴覚が優れているので音で逃げられ『ホーユス』ですとその足が速いので後姿を見るのやっとです」
レイモンドさんがすっごい疲れた顔でいうので、これは相当苦労したんだな。
「ご苦労。それで話を聞いた所だと『バダン』は鳥の獣人。『ネフタリ』は牛の獣人。『モンガド』は猿の獣人。『ゴーゼフ』は羊の獣人。『カッサカル』は鼠の獣人。『タシエル』は虎の獣人。『タゼブル』は竜人族。『ジャミニン』は蛇の獣人族か、殆ど獣人なんだな」
「そうですな。生存競争でたまたま獣人が残ったのか、あるいは他の混血達は早々に魔国に臣従したのかもしれませんな」
「ふぅむ。それも考えられるか」
そこまで考えて、名前を挙げた部族の特徴を考える。
まずは『バダン』族。
これは鳥の顔をした獣人か、鳥の羽を生やした魔人族、鳥の手や足を持った天人族などで構成された部族だ。斥候、空中戦などが得意な種族だそうだ。
次に『モンガド』族。
猿系の獣人族でコング系、オラウータン系 チンパンジー系の三つの系統で構成れた種族だそうだ。それぞれの系統に特徴ががあるそうだ。ゴリラ系は戦士多くで、チンパンジー系は農民が多い、オラウータン系は商人又は学者といった職業が多いそうだ。
多いだけであって、別にオラウータン系の者が戦士になっている事もあれば、ゴリラ系の者が農民になっている事もあるそうだ。
次は『ゴーゼフ』族。
これは羊の獣人で、羊の顔をした者や身体の何処かに羊の特徴を持った者で構成された部族。
特徴と言えば、部族の者殆どの者が精霊と契約して魔法を使える事だ。
稀に精霊と契約できない者も居るそうだが、そういった者達は戦闘面で鍛えられるそうだ。
魔法を使える者が多い部族と覚えれば良いな。
次は『カッサカル』族。
幾つかの鼠系の獣人で構成された部族で、カリュドーンもどれだけの系統が居るか知らないそうだ。
特徴としては、身長がそれほど高くなくすばしっこい上に耳と鼻が良いので情報を得るのが特異な種族だそうだ。
次は『タシエル』族。
虎の獣人で構成された部族で、色々な毛の色をしているそうだ。
中にはライオンのような鬣を持ち縞模様をしたライガーのような者もいるそうだ。
次は『タゼブル』族。
これは竜人族だそうだ。
竜人族だと、ドラゴニュート、リザードマン、ドラゴンメイドそれとメリュジーヌという種に分かれている。
偶に下半身が蛇のような尻尾なので、メリュジーヌを蛇の獣人に間違える人も居るがそれは違うそうだ。
ラミアと言われる種族も上半身は人間で下半身は蛇という種族だが、こちらは蛇の獣人族に属する。
それに対して、メリュジーヌは角が生えており更には翼を持っているので竜人族に分類される。
次に『ジャミニン』族。
先に紹介されたラミアという種族と蛇の頭を持ち身体が人間というサーペントという種と身体の一部を蛇の特徴を持ったラフムという種族も居る。
特徴と言えるのは毒の扱いと見た目に反した身体能力が特徴だ。
どの種も身体は大きい方なのに、俊敏な動きが出来る。
最後に『ネフタリ』族。
牛の獣人で二種しかいないそうだ。
ホルスタイン種とミノタウロス種しかいない。
特徴と言えば、身体の何処かが牛の特徴を持っていて、凄い腕力があることだけだ。
「ふぅ、話を聞いて分かっているのはこれくらいか」
僕は紙にカリュドーンから聞いた特徴を書き記した。
「お疲れ様です。領主様」
「ああ、今日はもう良いから、休んでいいぞ」
「承知しました」
レイモンドさんは一礼して部屋から出て行った。
誰も居なくなった部屋を見て、僕は一息ついた。
さてと、明日に備えて早く休むか。