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閑話 フェルの本音

 フェル視点です。

フェル・イアールヴィズ・ヴァナルガンドことわたしは末の弟のリウイことウ~ちゃんのお供で『オウエ』に来た。

 わたしが言うのも何だが、わたしには内政の才はないので今回の領地運営を学ぶのはどうしたら良いかなと思っていたところに、ウ~ちゃんが『オウエ』に行くと言うのでわたしも麾下の部隊を率いて付いて行く事にした。

 ウ~ちゃんは領地に着くなり、まさか塩を作るとは思わなかった。

 まさかこの『清海』が塩湖だったとは思わなかったわ。

 更に翌日にはあの白い塊トウーフとか言う物を作るなんて。

 殆ど味がしないのだけど、塩を掛けて食べたりすると意外美味しかったし、結構満腹感もあった。

 ウ~ちゃんは「そう言えば、豆の成分にはお肌に良い物があったけ」とか言っていたわね。

 成分というのは分からないけど、これを食べたらお肌に良いのと聞いた所、ウ~ちゃんは頷いたので嘘ではないだろう。

 この子は小さい頃から確証がない事は言わない子だった。やんちゃはしないし大人しい子であった。

 悪い事をしたら素直に謝るから、可愛いと思えた。

 何より凄いのはイザドラ姉さんが猫かわいがりしている事だ。

 冷静沈着、大胆不敵、剛毅果断、目的の為なら手段を選ばないという人だった。

 正直、魔王候補の中で、誰がなるという話になったら必ず名前があがる実力者だ。

 その姉がウ~ちゃんにはダダ甘だ。

 赤ん坊の頃は遊ぶ程度だったが、今ではウ~ちゃんに会うたびに抱きあげて、飽きる事無く頬ずりするという具合になっている。

 あの姉に何をそこまでさせてたか、わたしも知らないが、とにかくウ~ちゃんは凄い。

 そして、ウ~ちゃんが領主になって数日も経たない内に、十二氏族のイシメオン族という部族が村に襲撃してきた。

 わたしはその報告を聞いて、ウ~ちゃんが居る部屋に行く前に部下に中庭で出撃準備をして待機しているように指示した。

 そして、ウ~ちゃんが居る執務室に行くとレイモンドとやらが、アイアンゴーレムについて要領を得ない説明をしだした。

 系統って、何よ。ゴーレムはゴーレムでしょうに。

 そして、見れば分かると言うので付いて来てみたら、何か全身メタリックな鎧を着た巨人が居た。

 ウ~ちゃんはこの巨人を見て「ロボット? いや、あれか金属生命体か」と小声で言っていたわね。

 ろぼっと? 何それ? 

 金属生命体は、まぁそのままの意味でしょう。身体が金属で出来ている種族と言う事でしょう。

 で、この巨人が自分の事をけんぷふぁぜりえのあーぬるとか言っていたわ。

 まったく意味が分からないけど、ウ~ちゃんは何か分かったようなの。

 むぅ、今度わたしにも教えてもらうとしましょう。

 で、そのあーぬるに指示するウ~ちゃん。

 指示を終えると、わたし達は領主の館に戻った。

 わたし達ガ領主の館に着くと、中庭にこの都市の兵士とわたしの麾下の『魔導弓騎兵団』が準備を整えていた。

 わたしの部隊は魔獣に騎乗した騎兵によって出来た部隊だ。

 機動攻撃、攪乱、一点突破に優れた部隊だ。

 その分、色々と弱点もあるが、少なくともそこいらの兵隊よりかは出来る部隊だ。

 都市の兵士達を見るが、十二氏族の襲撃を受けていた所為か、それなりに訓練されており練度もかなりあるように見えた。

 これなら都市の防衛は問題ないなと思った。

 そう思っているとソフィーがわたし達の下に来た。

「お帰りなさいませ。フェル様、リウイ様」

「ああ」

 ウ~ちゃんがなるべく偉そうに偉そうに返事しているのが分かった。

 まだ、小さいのに背伸びした感じがして可愛いと思った。

「それで、兵の準備は?」

「既に完了しております。出撃は何時でも」

「よし、じゃあ」

 あっ。これは自分が兵を率いて出撃するとか言うつもりね。

 流石に兵を率いた経験もないのに、いきなり兵を率いらせるのは酷だろう。

 代わりにわたしが出る様に言うと、ウ~ちゃんは最初渋っていたが、ソフィーが耳元で囁くと承諾した。流石は乳母なだけあるわね。

 そして、わたしは麾下の部隊を率いて『カオンジ』を出て、襲撃を受けている村に急行した。


 『カオンジ』から少し離れた所にある村に今、イシメオン族が襲撃を仕掛けている。村付近に着いたわたし達は、機動力を活かして村を包囲する事にした。

 一応、村はどうなっているか確認するため。わたしと部下を何十名か連れて行く。

 姿が見られないように『姿隠し』と音を消す『静寂』の魔法を掛けて、村に近付く。

 襲撃を受けた村にしては、死人が居ない事に驚くわたし。

 普通、襲撃をするなら、放火や殺人を行うものだがそれがされた様子はない。

 とはいえ、血がまったく流れていないという訳ではない。多少だが血は流れているが、どれも致死量ではない。この量なら軽く身体に傷をつけたぐらいだ。

 しかし、その血の跡を追っていくと、村にの広場に村人達が集められていた。

 何人かは怪我しているが、それほど重傷といえるものではなかった。

 わたしは物陰に隠れながら、部下に広場を包囲する様に手で合図した。

 そして、広場にいる村人たちを囲むように居る者達を見た。

 猪の顔をして、額の所に角が生えている所から魔人族の血が流れているのだろう。

 その中で一番、偉そうな男が村人の一人に話しかける。

「村長、この村の住民はこれで全てか?」

「は、はい。そうです」

「では、これより取引といこう。月に一度、村にある食料の四割を我々に渡せば、今後一年間はこの村は襲撃をしない事を約束しよう」

 あら、襲撃と言うから略奪をするのかと思ったけど、定期的に搾取する方法のようね。

 そして従わない場合は村人を皆殺しにして、村を焼き払うと言うのね。

 ふむ。意外と見た目に反して利口な部族なのかしら?

 それとも、襲撃して奪うよりもこうして搾取した方が良いと学習したのかしら。

『フェル様。村の包囲完了しました』

 部隊の指揮を任せた部下から念話で報告が来た。

 連れて来た部下達も広場を包囲する様に配置についた。

 じゃあ、一気にチェックメイトといこうかしら。

「さて、返答は?」

「返答しなくてもいいわ」

 わたしは魔法で解除して姿を見せた。

「なにやつ⁉」

「何処から声がした⁉」

「あ、あそこだ⁉」

 イシメオン族の一人が屋根の上にいるわたしを見つけて指差した。

「恐れ多くも魔王の領地で略奪を働くとは、言語道断。今この場で捕縛してあげるわっ」

「何者だ。名を名乗れ‼」

「あんた達に名乗る名前などないわ!」

 わたしは手を挙げた。

 すると、隠れていた兵士達が姿を見せて何時でも弓矢を放たれる様に矢を番えていた。

「なっ、何時の間に⁉」

「駄目だ。完全に包囲されている!」

 イシメオン族の者達は心が折れたのを見て、わたしは叫ぶ。

「降伏するなら命だけ取らないであげる。大人しく降伏しなさい!」

 包囲されているとはいえ、まさか全員降伏するとは思えない。

 何人か跳ね返りは居る筈だから、その者達を殺せば、敵も抵抗を止めるだろう。

 ウ~ちゃんも出来る限りと言っていたから、全員連れていかなくてもいいでしょう。

 そう思っていると、イシメオン族の者達は武器を捨てて膝を地面につけた。

「降伏する。命だけは助けてくれ」

 イシメオン族の者達を代表してか、一番偉そうな男がそう言った。

 う~ん。ちょっと予想外だったけど、良しとしましょうか。

 尋問を兼ねて『カオンジ』に連れて行くとしましょう。



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