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第30話 久しぶりに母さんに会う

 僕達は楽しく? 茶会をしているとベリルが呼びに来たので、改めて僕達は謁見の間に向かった。

 謁見の間に着くと、既に兄さん達はおり、父さんも玉座に座っていた。

「陛下。殿下達をお連れいたしました」

「うむ」

 父さんは手を振ってベリルに下がる様に指示した。ベリルも一礼して、謁見の間から出て行った。

「では、改めて。リウイよ。決心は変わらんか?」

「はい。父上」

 僕がそう言うと、父さんはちらりと姉さん達を見る。

 姉さん達は首を横に振ったのを見て、父さんは息を吐いた。

「そうか。では、リウイ。お主を『オウエ』の領主に任命」

「異議あり!」

 うわぁ、いきなり大きな声がするからびっくりした。

 誰だろう? そう思い僕は後ろに見る。

 すると、そこに居たのは女性としてはかなり長身で、額には赤い角を生やし僕と同じ青銀色の髪をセミショートにしていた。

 そして鷹のように鋭い目付き。黒い瞳をしていた。

 ヘルミーネ姉さんよりも凶悪な顔をしていた。でも、から見慣れているので、僕は何とも思わない。

 だが、周りの人達はその女性がいきなり現れたので驚いていた。特に父が。

「な、何で、お前がここに居る⁉」

 父さんはそう尋ねた。その言い方から察するに、この場に居る筈がないと思っているのが不思議でならないようだ。

「ふっ、愚問だな。自分の腹を痛めてまで生んだ息子が何処の領地になるか心配にならない母親が居ると思うのか?」

 その女性は鼻で笑いながら、僕の所まで来る。

 姉さん達は、その女性が通るのを邪魔しないように道を開ける。

 女性は僕の所まで来ると、頭を撫でる。

「元気そうだな。リウイ」

「うん。元気だよ。母さんも、元気そうでなによりっ」

 そうこの女性は僕の現世の母で名前をハバキという女性だ。

 ファミリーネームがないのは、こっちの大陸に来るときに捨てたと言っていた。

 詳しくは教えてくれないので分からないが、元は鬼人族の中でも名家の出だったそうだが、しきたりにうんざりして、家を飛び出し、大陸中を歩き回り行く所なくなったのと家の追手がうるさくなってきたので、魔国があるこの大陸に来たそうだ。

 それでどこで父さんと知り合ったのだろうと思い、訊いてみたら、もう少し大きくなったら教えてくれると言われたので、それ以来聞いていない。

「バキよ。それで、何が異論があるのだ?」

 僕と母さんが挨拶をしていると、父さんが訊ねてきた。

「ふっ、そんな事も分からないのか? ふぅ、お前はそれでも父親か?」

 いつも思うけど、母さんの話し方って父さんの事を敬うというか対等みたいな話し方をするよな。

 魔王に対してその口の聞き方はどうなのだろう。

「リウイはまだ幼いのに、何故『オウエ』に行かせるのだ? お前は我が子を苦しめる趣味でもあるのか? あぁん」

「い、いや、リウイがそこが良いというから」

「本人が望んでも無理そうだったら、諦めさせる事も父親として必要な事であろうがっ⁉」

 獅子吼とは正にこの事だ。

 熱が籠った弁で、父さんはタジタジであった。

 兄さんも姉さん達も、母さんの迫力に押されて誰も口を挟もうとしない。

 ふむ。このままだとまずいな。

 この流れだと僕の『オウエ』行きが無くなりそうだ。

 仕方がない。ここは母さんを説得するしかない。

 僕は熱弁を振るう、母さんの袖を引っ張る。

「うん? 何だ。リウイ」

「母さん。僕は『オウエ』に行きたいんだけど」

「駄目だ。あそこはお前には早い。後三年経ったら、行ってもいいが。今は駄目だ」

「でも」

「聞き分けろ。リウイ」

「そこを何とかっ」

「駄目だ」

「母さん」

「何度、言っても駄目なものは駄目だ」

 むぅ、ここまで言っても駄目か。ならば、最後の手段だ。

 僕は母さんに屈んでと手で指示した。

 すると、母さんは何か話したい事があると直ぐに分かり、耳を近づけた。

 僕は顔を母さんの耳に近付ける。

「もし、このまま認めないなら、母さんが秘密で集めている服について姉さん達に話すよ」

「⁉!!」

 母さんは凄い驚いた顔をしていた。

 僕達が暮らしている城にある母さんの部屋の服をしまっている棚には、フリルが沢山ついた服が沢山入っていた。

 身長も様々だ。だが、全部可愛い部類に入る服だ。

 実は、母さんは可愛い服を集める趣味がある。

 本人も恥ずかしいのか、その事は誰にも言っていない。

 でも、その服の存在を知った時は、ああ、母さんも女だと何故か安心した。

 なので、僕も今まで誰にも言っていない。

「お、お前、何処でそれをっ」

「秘密。で、どうするの?」

「・・・・・・・・・・・」

 母さんは顔を歪ませていた。

「・・・・・・ふぅ、仕方がない。ここは譲ってやろう」

「やったっ」

「ただし、わたしも着いて行くからな」

 ええ~、フェル姉さんだけでも手に余るのに、母さんも着いて来るのか。

「これが最大限の譲歩だ。これ以上は無理だ」

「じゃあ、仕方が無いか。いいよ」

「よし」

 母さんは顔をあげた。

「とは言え、リウイも成長するには絶好の場所と言えるだろう。だが、危ないので、わたしも着いて行く事で『オウエ』に行く事を許可しよう」

 何か、強引にねじ負けてないかと思うが、ここは何も言わない方がいいな。

「お、おお、そうか。では」

「うむ。わたしもついて行く事にしよう」

「そうか。よし、では、リウイよ。お主に『オウエ』の領主を任命する。期限については無期限とする。見事、儂の期待に応えるが良い」

 僕は跪いて頭を垂れた。

「仰せのままに、魔王陛下」

 これでやっと行ける。今から楽しみだ。



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