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閑話 父親の心境。

 儂ことオルクス・ブラム・ヴァミリオンは玉座に座りながら、子供達が来るのを待っておった。

 今日は子供達に言っておいた領地運営の学ばせる為に呼び出した。

 最も、学ばせる領地については息子達に選ばせるので、儂も何処で学ぶかは知らん。

 じゃが、自分達で選んだのだから、文句は言わないじゃろう。被ったら、そこはクジ引きやらコイントスやらで決めれば良かろう。


 そして待つ事、数十分。

 ベリルの案内で子供達が全員やってきた。

 息子達は顔立ちが母親に似ていたり、その血を引いて母親の種族の一部を受け継いでいる。例外も居るが概ね、儂の息子と言えるじゃろう。

 娘の方も、儂に似たというよりも、母親にそっくりだったり儂の父つまりは祖父に似ていたりした。

 特にミリアリアなんぞ、儂の親父にそっくりだ。

 成長した姿を見て、言動も行動も親父に似て来たから吃驚だった。

 さて、全員入って来たので話しかけるか。

「良くぞ来た。お前達」

 儂がそう言うと、皆一礼してきた。

「さて、兼ねてより言っておいた。領地についてだ。お前達が何処にするか聞きたい」

 儂はベリルに合図を送り、地図を出させた。

 魔国の領土地図を見ながら、自分達が何処を選んだか教えた方が良いだろう。

 まず、訊くのは末の息子のリウイだ。

 この子は儂の息子達の中で例外である。何せ、母親にも父親の儂にも似ていない。

 リウイの母である儂の妻が言うには「わたしの子供の頃にそっくりだ」と言っていたが、嘘くさかった。一度、妻に「本当に儂の子か?」と聞いたら折檻された。

 ううっ、思い出すとあの時の恐怖が、ブルブル。

 落ち着け、落ち着くのじゃ。儂。別に深い意味があって言った訳ではないし、可愛い子である事は確かだし、それにもし本当に儂の血を引いていなくても、妻の腹から生まれたのじゃ、儂の息子の事は変わりない。

 それを妻に言うと「なら、そんな事を訊くな」と背中を思いっきり叩かれた。その後、背中にはしばらく紅葉が無くならなかった。

 さて、回想はこの程度にして、そろそろリウイに訊くとするか。

「リウイよ」

「はい。とうさじゃなかった、父上」

 ふむ、父さんか。公式の場では、父上と呼ぶように徹底させるように、乳母のソフィーディアに言っておくとしよう。

 正直、あんな超乳の乳母を持てるとは、リウイも果報者よ。

 儂の乳母なんて下半身は触手で上半身は老婆の魔人族じゃったぞ。

 それに比べたら、まさに天と地の差があるわ。

 しかも、儂が魔王になっても子供扱いしおって、今だに「坊ちゃん」言いおる。

 あんな老婆にそんな呼ばれ方されても嬉しくも何ともないわ。

「父上?」

 おっと、物思いふけすぎたな。

「コホン。リウイよ。お主はどこで領地運営を学びたい?」

 と言っても、事前にリウイでも問題なく領地運営を学べる所をピックアップして、あいつの乳兄弟のアルティナに紙に書いて渡しておる。

 その中から、あいつの乳母が推薦した所を選ぶじゃろう。詳しくは知らんが、あいつの乳母は元は内政官じゃったそうじゃから、内政に関しては相談も意見も言えるから安心だ。

 さて、何処を選んだのやら。

「僕は『オウエ』で学びたいです」

 ・・・・・・。

 ・・・・・・・・・・・・。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 はい? こやつ、今何と言った?

「・・・・・・済まぬが、もう一度言ってくれぬか?」

「僕は『オウエ』に行きたいですっ」

 は、はぁ⁉ 『オウエ』じゃと⁉

 あんな辺鄙で、物騒な所に行きたいというのか、こやつは⁉

 し、正気か? それとも、兄達にここにしろと脅されたか?

 だが、息子達を見ると、リウイの発言を聞いて、皆戸惑っていた。

 この反応を見るに、誰も脅した訳ではないようだ。

 儂が選んだ所でなく、よりにもよって『オウエ』選ぶとは、何を考えているんだ?

 はぁっ⁉ 何処からか、殺気を感じる⁉

 その殺気を辿って行くと、イザドラが今にも儂を殺さんとばかりに睨んでおる。

 うん? 何か口パクで言っておるな。

 何々、ど お い う こ と で す か? ち ち う えだと、そんなの儂が知りたいわ。

 そう思っていると、また何か伝えようと唇を動かす。

 今度は こ れ も ち ち う え の か ん が え で す か? だと。

 知らん知らん。儂はそんな事はしていないという意味を込めて、首を横に振る。

 子供たちの中でこいつが一番怖いし、質が悪い。

 頭も良いし、その上、本気を出せば儂すら簡単に倒せる実力者。更に魔国の政治を一手に動かしているので、何時でも儂を追い落とす事が簡単にできる。

 そうしないのは、王位に興味がないからだ。

 リウイが生まれてからは、可愛いからかそれとも何か才能を感じ取ったからなのか、弟達の面倒をあまりみなかったイザドラが目に入れても痛くない程に猫可愛がりしていた。

 ちょっと行き過ぎなくらいだが、リウイも嫌がっていないようなので好きにさせていた。

 そのイザドラが儂を今にも襲い掛かりそうな目で儂を見ていた。

 不味いのう。このままでは、儂は殺されるかもしれんっ。

 ここは、何としても、リウイの考えを反意させねば。

「リウイよ。ここは、お主には難しいと思う、もっと別な場所にせぬか?」

「ここがいいですっ」

「だが」

「ここがいいです!」

 うっ、そんな綺麗な目で言われると、何も言えなくなるではないか。

 どうしようかと、頭を悩ませていると。

 ダンッ‼

 静寂で支配された謁見の間に、いきなり大きな音が響いた。

 音がした先を見ると、イザドラが床を踏んで大きな音を立てていた。

 踏んだ床は、陥没して所々にひび割れがていたり隆起していた。

「・・・・・・父上」

「は、はいっ」

「少し休憩にしませんか?」

「え、えっ?」

「リウイと少しをしないといけないので、休憩にしましょう」

「いや、いきなり、休憩にしなくても」

「何か言いましたか?」

 ひいっ⁉ その今にも襲い掛かりそうな目で、父である儂を見るでないっ。

「わ、わかった。少し休憩としよう」

「ええ、そうですね」

 ニッコリ笑顔を浮かべおった。

「さぁ、リウイ。少し話したい事がありますので、あっちに行きましょうね」

 イザドラは笑顔でリウイの肩を掴み、謁見の間を出て行った。

 その後を、ロゼティータ、フェル、ヘルミーネ、ミリアリアが追い駆けた。

 謁見の間には、何とも言えない空気が漂った。

「え~、コホン。しばし、休憩とする。準備が出来たら、また呼ぶので、待合室で待つように。以上」

 儂はそう言って、玉座を立つ。

 はぁ、早くこの席を誰かに譲りたいのぅ。 






 







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