第24話 兄さんに話しかけよう。抱き締められながら
とりあえず、誰かに話しかけようか。
誰に話しかけようかなと思い、僕は周りを見る。
そこで目に入ったのは、三つ目の人だった。
名前は確か、デモゴルゴンだったけ。
「こんにちは!」
僕がそう声を掛けると、デモゴルゴン兄さんは僕に目を向けた。
真ん中分けした黒い髪。額の三つ目。
よく見ると、どの目も色が違った。
右目は青だし、左目は赤だし、額の目は黄色色だった。
「何か用か? 末弟」
成程。この人は変わった言い方する人のようだ。
「初めまして。デモゴルゴン兄様。僕は末弟のリウイです。今後ともよろしくお願いします」
「うむ。よろしくしてやろう。末弟」
「よろしくお願いします。ところで、兄様。三つ目族ってそれぞれ目の色が違うのですか?」
「いや、わたしが特異なだけだ。他の三つ目族は皆同じ目の色をしている」
「三つ目族って目が三つあること以外、何か有るのですか?」
「そうだな。色々とある。『直死』『遠隔視』『透視』『金縛りの魔眼』等がある」
「兄様には、何があるのですか?」
「わたしは『金縛りの魔眼』だ」
ふむ。その言い方から察するに、どうやら三つとも『金縛りの魔眼』のようだな。
「ところで、末弟。お主は歳は幾つだ?」
「今年で十歳になります」
「・・・・・・歳のわりに、随分と魔力を持っているな。お主」
「そうなんですか?」
どれくらい魔力があるか計ってないので、今の僕がどれくらいあるか知らない。
でも、兄様がそう言うのなら、歳のわりには有る方なのだろう。
「・・・・・・・ふむ、末弟をあまりお主を束縛したら、姉君が五月蠅そうだな」
うん? どういう意味?
そう思っていたら、僕を抱き締められた。
誰だと思っていたら、フェル姉さんが僕を抱き締めていた。
「ウ~ちゃん。ゴルちゃんと話すのもいいけど、わたしとも話しましょうね~」
フェル姉さんか。というか、ゴルちゃんって、もしかして、弟達皆ちゃんづけしているのかな?
僕は頭の中で、アリオク兄様とシャイタン兄様がフェル姉さんにちゃんづけされるのを想像してみた。
何の羞恥プレイだろうと思った。
本人達はどう思っているのだろうか。気になるけど、訊いても教えてくれないだろうな。
「さぁ、ウ~ちゃん。次の人に話し掛けに行きましょうね~」
僕はフェル姉さんに抱き締められたまま、次の兄さんの所に向かう。
向かう際。僕が手を振ると、デモゴルゴン兄様も手を振ってくれた。独特な言い方をしていたが、話したらちゃんと答えてくれたから、良い人だったな。
抱き締められたまま、次の人に話しかける。
あの人は確かペイモンだったかな。
「やっほ~、ペイちゃん。久しぶり~」
フェル姉さんがそう声を掛けるとペイモン兄さんは僕達を見た。
「ええ、本当にそうね~、フェル姉さん」
ふむ。ペイモン兄さんの声は中性的な声だな。
それに喋り方が、オネエっぽい。
「わたくしも久しぶりに会えて嬉しいわ」
「そうね。ねぇ、今日は話が終わったら何処かに行かない?」
「良いわね。わたくし、お気に入りの化粧品が切れてそろそろ買おうと思っていたから、魔都に来た事だし、一緒に買い物に行きましょう」
「ええ、いいわね。そうしましょう」
「他の姉さん達も呼ぶ?」
「そうね~、一応声だけ掛けておきましょう」
「分かったわ。ところで、その腕の中に居る子は?」
「ああ、話していて忘れていたわ」
姉さんは、僕を見せつける様に突き出す。
「可愛いでしょう。わたし達の弟のウ~ちゃんよ」
ペイモン兄さんは僕を見る。
「・・・・・・あら、可愛いじゃない。いやだ。こんなに可愛い子だって知っていたら、もっと早く会いに行ったのに」
「仕方がないわね。ペイちゃん貴方、普段は副都に常駐しているし、大陸にも行く事があるのだから、わたし達がいる城まで来るのは難しいでしょう」
「そうね。でも」
ペイモン兄さんは両手で僕の頬に触れる。
フニフニと頬の弾力を楽しんでいる。
「う~ん。この感触。楽しいわ~」
「スベスベしていてハリがある肌でしょう。この子の頬に触れていると、いつまでも触れていたくなるのよね~」
「分かるわ~、この感触、何か楽しいし」
ペイモン兄さんは僕の頬の感触を楽しむ。
「はい。楽しむのはいいけど、その辺で」
フェル姉さんは突き出すのを止めて、自分の方に引き寄せた。
「次の人に紹介するから、後でね~」
「ええ、後でね~」
ペイモン兄さんは手を振りながら、僕達を見送った。
ソア兄上が言っていたアクが強いと言う意味がよく分かった。
なかなかに強力なキャラだったな~。
さて、次は誰に挨拶するのかな?
そう思い見ると、次の人が見えた。
あれはガープ兄さんだったかな。
「はぁい、ガーちゃん。元気~」
フェル姉さんが挨拶すると、ガープ兄さんが僕達を見る。
「久しぶりだな、姉上」
「うん。それにしても、相変わらず、肉が無い身体ね~」
「ほっといて貰おう」
「ガーちゃんは、少食だからね~、もっと肉を食べたら」
「食べてはいるのだがな。ところで、その腕に抱えている者は?」
「わたし達の末弟のウ~ちゃんよ。可愛いでしょう?」
フェル姉さんは僕を持ち上げて、ガープ兄さんに見せるようにした。
「ウ~ちゃん? ・・・・・・・ああ、リウイだからか」
「初めまして。ガープ兄さん」
僕はペコリと頭を下げた。
兄さんは僕を見る。
「ふむ。なかなか、利発そうな子ではないか。今後ともよろしく頼むぞ」
「はい。よろしくお願いします」
僕は頭を下げる。
ガープ兄さんが僕をジッと見る。
「・・・・・・・ふ~む。これはまた」
何か、ガープ兄さんは僕を見て首を傾げている。
「どうかしたの?」
「いや、何と言えば良いのか、ふむ」
ガープ兄さんはしきりに首を傾げている。
「? まぁいいわ。じゃあ、次の人に紹介するから」
「ああ、ではな」
僕はフェル姉さんに抱きかかえられて、その場を後にした。
その際、ガープ兄さんはポツリとこぼした。
「妙な魂を持っているな。あの者は」
そう言ったのを、僕に耳にはハッキリと聞こえた。
妙な魂? どういう意味だろう。