第22話 魔都に行こう。
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これからも拙作をどうかよろしく愛読して頂ける事を、切にお願いいたします。
出立の準備を終えた僕達は、中庭に着くと既に皆待っていた。どうやら、僕が一番最後のようだ。
「遅れてごめんなさい!」
これでも急いだのだが、皆早いな~。
僕は謝まると、ヘルミーネ姉さんとフェル姉さんとアードラ兄貴は何でもないかのように、手を横に振ってくれた。
だが、イザドラ姉さんだけは、何故か無表情であった。
「イザドラ姉さん?」
僕がそう尋ねると、イザドラ姉さんは僕の所まで来た。
「リウイ。先程、フェルが言った事を覚えていますか?」
「うん」
何で、そんな事を訊くのだろうか?
「フェルは直ちに魔都に来いと言いました。それはどういう意味か分かりますか?」
「えっ、ええっと・・・・・・・」
ちょっと分からないな。
「分かりませんか? では、教えてあげましょう。父上が呼び出すという事は、重要な事をわたし達に告げる為に呼んだのです」
まぁ、そうじゃなかったら呼ばないよな。
「すなわち、それはわたし達の将来に関係ある事なのです。貴方も一番下の王子とは言え、王族で王位継承権を持っています。つまりは、王位を継ぐ資格を持っているという事です」
確かに、そうだ。
「ならば、人の上に立つ自覚を持つべきです。それなのに、何ですか。一番年下の貴方がこうして最後に来るとは、王族の自覚も、王子としての自覚もない証拠です」
ちょっとこじつけ感が否めないけど、まぁ正論と言えば正論かな。
「ご、ごめんなさい」
ここは素直に謝ろう。
何、相手はイザドラ姉さんだ。
謝れば許して貰えるだろう。
そう思っていたが、そうはいかなかった。
「駄目ですね。謝れば許してくれるのが、態度でまる分かりです」
うっ、鋭い。
「これは魔都に着くまで、少し勉強した方が良いようですね」
「べんきょう?」
馬車の中で誰が教えるのだろうか?
出来れば眠気覚ましになる勉強をして欲しいな。
「では、僭越ながら、わたしが魔都に着くまでリウイの勉強を教えてあげましょう」
うん? 何だろう。 何か引っかかる。
「じゃあ、リウイ。わたしの魔都に着くまでは、馬車の中で色々と教えてあげますからね。わたしの膝の上で♥」
あっ⁉ これは嵌められた!
僕が別の馬車に乗るのを防ぐために一芝居売ったようだ。
「姉さんだけじゃあ、分からない事もあるだろうし、わたしも一緒の馬車に乗るわね」
「わたしも」
しかも、フェル姉さんとヘルミーネ姉さんを味方につけていた。
三人と一緒の馬車に乗ったら、魔都に着くまで抱き枕状態だ。
そんなの流石に嫌だ。
ここは兄貴に助け船を出してもらおう。
僕は兄貴に目で訴える、助けてと。
しかし、兄貴は無情にも首を横に振る。
更には口パクで何か言っている。
何々、あ・き・ら・め・ろだって、そんなぁ⁉
「さぁ、リウイ。お姉ちゃんが色々と教えてあげますね」
そう言って、イザドラ姉さんは僕を抱き締めながら持ち上げた。
くそっ、早く大きくなりたいっ。
そうしたら、こんな風に持ち上げられる事はないのにっ。
ティナ達は流石に僕達の事が分かっているのか、何も言わず僕が居る筈だった馬車に乗り込んだ。
せめて、アリアンぐらいは何か言うだろうと期待していたが、アリアンは連れて行かれる僕を笑顔で見送った。
薄情物⁉
心の中で叫んだ。
そして、姉さん達と一緒に馬車に入った僕は、勉強という名の甘やかし攻撃を受けた。
具体的に言えば、抱き枕にされたり着替え人形になりました。
姉さん達曰く、父さん達に見せる為の正装を選ぶ為にしているそうだ。
城を出て数日後。
僕達は魔都に着いた。
町並み見ると、前世で見た魔人族の都に似ていた。
やはり、どれだけ年月が経っても民族独自の文化は変わらないものなんだな。
道なりに進むと、宮殿が見えた。
「あれがギャラブル魔宮殿ですよ。リウイ」
イザドラ姉さんは僕のもみあげの所を三つ編みにしながら教えてくれた。
「もう、ロゼティータ姉さん達も着いているだろうか?」
「多分、もう着いていると思うわ」
ヘルミーネ姉さんは僕の髪を整えながら、フェル姉さんは僕を化粧しながら話している。
三人共、揺れている馬車の中でよく出来るな。
感心していると、馬車が停まった。
「どうやら、着いたようですね」
「そのようね。ウ~ちゃん、お顔を見せて」
僕は言われた通りに顔をあげた。
三人は僕を見るなり、全身をプルプルと震えだした。
「え、えっと・・・・・・・どうかした?」
何も言わないので。僕は首を傾げた。
「「「か、かわいいいいいいいいいいいっ‼」」」
姉さん達はそう言って抱き締めてきた。
はぁ、何かいつも通りだな~。
一頻り抱き締められた僕は、馬車を降りた。
降りると、兄貴は僕の肩に手を置いた。
それはまるで、よく耐えたなと言っているようだ。
兄貴。今頃労わるなら最初から助けてよ。
馬車を降りると、直ぐに案内が来て僕達は控えの間に通された。
そこには、ロゼティータ姉さんとミリアリア姉さんが居た。
それと見た事がない人達が居た。
ひぃ、ふぅ、みぃと全員で十四人くらい居る。
勿論、全員男性だ。
勘だけど、全員が僕の兄さんなんだなと思った。
自己紹介した方がいいかなと思っていると、三人程僕の所まで来た。
「君がリウイかな?」
そう問いかけるのは、柔和な顔立ちで温厚そうな印象を抱かせた。
良い生地を使った赤い服。
龍を象った肩当。
側頭部から伸びる白い角。
茶色の瞳。
見た感じ、人が良さそうな顔をしているお兄さんと思えた。
「はい。そうです」
「そうか。初めまして僕は君のお兄さんだよ。序列で行くと三番目だ。名前はユミルだよ」
「初めまして」
兄貴以外で、初めて見る兄さんだ。
兄さんと呼ぶのが、ピッタリだと思うので、今度からユミル兄さんと呼ぼう。
「そうか。お前がか」
もう一人の人は氷のような冷たい目で僕を見た。
ユミル兄さんと同じ良い生地を使っているが、こちらは青い服だ。
三白眼の青い瞳。
黒い髪一つに結んでいる。
額から青い角を生やしていた。
背中に白いマントを羽織っていた。
「ふん。父上の血を引いている割には随分と可愛らしい顔の者が生まれたものだ」
「はっはは、確かにそうだね。でも、ソアヴィゴ兄さん。ちゃんと名前は名乗ろうよ」
「そうだな」
ソアヴィゴと呼ばれた人は、僕を見る。
「皇太子のソアヴィゴだ。よく覚えておけ」
皇太子と言う事は、長男か。
この人の事はソア兄上と呼ぼう。
「じゃあ、次は俺か」
そう三人目の人が前に出た。
緑色の髪を肩口で切り揃えていた。
額に赤い角を生やしていた。
髪の色と同じ大きな緑色の瞳。
この人が着ている服は、今までの二人と違い、着崩している上に、金糸で何かの動物を象られていた。
パッと見では分からないが、取りあえず何かの動物を模している事だけは分かった。
腰には黄色と黒の縞模様の毛皮を巻いてた。
「俺はオルヴェンドだ。序列で言えば十五番目だから、お前の一つ上の兄貴だよ。よろしくな」
オルヴェンドは僕の頭を撫でながら、自己紹介してくれた。
ふむ。この人は気安い感じがするのでオル兄ちゃんと呼ぼう。
話して分かったが、ここに居る男性はどうやら僕の兄のようだ。
顔を名前を覚える為に、気安そうなオル兄ちゃんに訊ねながら覚えよう。




