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第20話 用事は終わったので帰還します

 光が止むと、先程まで居た沢山の木々があった空間ではなく、姉さん達がいる陣地であった。

「おお、帰って来たか。どうだった? 魔獣との契約は、上手くいったか?」

 兄貴がそう訊ねて来た。

 そんな兄貴を押しのけて、イザドラ姉さんが僕を身体を触る。

「リウイ、怪我はありませんか? 気持ち悪くはないですか?」

 何処か怪我がないか触診するイザドラ姉さん。

 ヘルミーネ姉さんも何処か怪我がないか、頭の先から足先までジロジロと見る。

「だ、大丈夫だよ。何処も怪我はないから」

「そうですか。良かった」

 イザドラ姉さんは僕が何ともないと分かると、ホッとしていた。

「それで、リウイ。貴方はどんな魔法を使えるようになったのですか?」

「風と光魔法だよ」

「成程。そうですか」

 魔人族が光魔法を使えると言っても、イザドラ姉さんは変な顔しなかったので、別に変ではないのか。

「リウイが魔獣と契約したか、流石だ」

 ヘルミーネ姉さんはニヤリと笑った。

 本人は嬉しいのだろうけど、その笑顔を見ている人は皆怖がっている。

 だって、その顔。笑っているのだけど、まるで肉食獣が笑みをうかべているかのような顔だ。

「ところで、リウイ。この魔獣どうするの?」

 ティナが指でアリアンを指した。

「勿論、一緒に城に帰るけど」

「この見た目だったら、間違いなく目立つわよ」

「・・・・・・確かに」

 龍のような顔をして鹿の胴体をしているのだ。

 更に全身を黄色の鱗で覆われて、黄色い毛を生やしている。

 どう考えても、目立つな。

「確かに目立つな。どうしたものか」

「空を駆けても目立つでしょうね。檻の中に入れますか?」

「それでも目立つと思う。どうしよう」

 僕達はは頭を悩ませていた。

『でしたら、人化しましょうか?』

 頭を悩ませていた僕達に、アリアンは声を掛けた。

「人化って、人に化けれるの?」

『ええ、出来ます。わたしぐらいの魔獣でしたら、それぐらい造作もありません』

「じゃあ、僕と同じ魔人族に化けてくれるかな」

『いいでしょう。そんな事容易い事です』

 アリアンはそう言って、輝きだした。

 そして、輝きが止むとその場に居るを見て、言葉を失った。

「ふぅ、これで良いと思うのですが。如何でしょうか? マスター」

 僕はアリアンの姿を見る。

 金髪碧眼で額に角を一本生やしていた。

 整った顔立ちで、綺麗を通り越して神々しい雰囲気を出していた。

 切れ長の目元。すっと通った鼻梁。限りなく小さな小鼻。

 更に、女性の象徴といえる物が、とてつもなく大きかった。

 それでいて、くびれた腰。更に桃のような尻。

 正に理想な女性のプロポーションと言えるだろう。

 だが、一つだけ問題があった。それは。

「ふ、ふくをきてないっ⁉」

 全裸であった。

「うん、何か問題でもありましたか?」

 アリアンは、僕の目を合わせようと屈みだした。

 そうした事で、胸が僕の前にぶら下がった。

 目の前にある物を見て、僕は頭に血が上った。そして。

「ぶっ⁉」

 何処かの漫画にあるような、鼻血を噴射した。

 そして、倒れる僕。

「り、リウイイイイイイイイイイッ⁉」

「おお~、人が鼻血を噴射する所など、初めて見たな」

「に、兄さん、そんな、呑気な事を言ってないで、あ、あわわわ、ど、どど、どうしようっ⁉」

 薄れゆく意識の中で、イザドラ姉さん達の言葉を聞きながら意識を失う。


 パカパカっという蹄の音。

 その音を聞いて、僕は意識を覚醒させた。

 頭に何か柔らかい感触を感じる。よく分からないけど、何か柔らかい物を枕にしているようだ。

「ん、ん~」

 僕は目を開けると、目の前には大きな白い物体があった。

 何だろうと思い見ていると、その物体が動き、アリアンが顔を見せた。

「ああ、起きたようですね」

「こ、ここは?」

「マスターのお姉さまが用意した馬車の中です」

 僕は今、馬車に乗っているのか。

 って、じゃあ、この視界に入っているこの物体は、アリアンの胸か。

 先程は裸であったが、今はちゃんと服を着ていた。

 僕は顔をあげると、額に乗せていたのか布が置かれていた。

 触れると、もう乾燥しているようで濡れてなく冷たくもなかった。

「ええっと、確か・・・・・・・契約して、アリアンをどうしようかと話していたら、アリアンが変化して、そこで・・・・・・・・」

 僕は何故、この状況になっているのか思い出す。

 そこまで思い出して、アリアンの胸を思い出してしまった。

 思わず、顔を赤くする。

「先程は失礼いたしました。魔獣は服を着る習慣がなかったので、全然気づきませんでした」

「まぁ、次からは気をつけてくれれば、問題ないよ。それにしても」

 僕は改めて、アリアンを見る。

 こうして見ると、とても綺麗な魔人族の女性にしか見えない。

「アリアンって、女性だったんだ」

「ええ、わたしの真名を教えましたが、麒麟は~リンは雌で~キは雄なんです」

「そうなんだ。ところで、今着ている服は?」

 アリアンが着ている服は、姉さん達の軍服ではないし、兄貴の軍服でもない。

 何処かの貴族の淑女が着るような服を着ていた。

「この服は、昔、見た人間の貴族が着ていた服を鱗を変成して、作った物です」

「へぇ、鱗をで服を作れるんだ」

「これくらい、わたしには簡単です」

 アリアンは出来て当然という顔をしていた。

 そう話していると、御者席の方から誰かが入って来た。

「ああ、起きたんだ。リウイ」

「ティナ、ごめん。心配かけた」

「もう、かなり大変だったよ。イザドラ王女様なんて、リウイが鼻血を出して倒れたから、そこの麒麟と戦おうとしていたのを、アドラ殿下とヘルミーネ殿下と一緒に抑えるのなんて、大変だったわよ」

 姉さん。確かに、アリアンは一因かもしれないけど、流石に戦うのは止めようよ。

「まぁ、そこのアリアンが『それよりも、早くマスターを治療しませんと』と言ったので、イザドラ王女様が慌てて、リウイを治療したのよ。それが終ったから、後遺症がないか調べる為に、今は城への帰り道の途中よ」

 ふぅ、とりあえず危機は去ったか。

 今は城へ帰る途中なんだ。じゃあ、このまま城に着くまで馬車の中にいるんだ。

「ティナ。あと、どれくらいで城に着くの?」

「う~ん、多分だけど、後二~三時間だと思うよ」

「そっか」

 このまま、着くまで暇だな。

 どうしようかと考えていたら、アリアンが僕を寝かしつけた。

「あれだけ血を出したのですから、まだ本調子ではないでしょう。もう少し横になっていて下さい」

 そう言って、また膝枕された。

 柔らかくて気持ちいい。

 何だろう。こうして横になっていると、また眠りたくなる。

「着いたら起こしますから、どうぞ、おやすみください」

 アリアンは僕の頭を撫でる。

 その感触がくすぐったいと思いながら、僕は眠気に負けて目をつぶった。






 



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