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第17話 連れて来たけど

 僕達は麒麟を連れて、陣へと戻った。

 陣に戻ると、兵士達の視線が僕達に突き刺さる。

 昨日、兄貴達が捕まえるのを失敗した奴を、連れていればそうなるだろう。

 そんな好奇の目にさらされていると、兄貴がやってきた。

「おい、リウイ。そいつ、どうした?」

 兄貴は連れて来た魔獣を指差しながら、僕に訊ねてきた。

「湖で顔を洗っていたら、現れて兄貴に話があるそうで、連れて来たよ」

「俺に、話? 魔獣が?」

 流石の兄貴も困惑していた。

 僕達が話していると、麒麟が前に出てきた。

『貴方ですね。昨日、わたしを捕まえようとしたのは』

「そ、そうだが、何か問題でもあるのか?」

『あるから、こうした参りました』

「はぁ、ようはあれか、お前は捕まえようとした俺に抗議に来たという事か?」

『その通りです』

「おもしれえ、魔獣の分際で俺にそんな口を叩くとはいい度胸だ」

 兄貴は拳をならしながら、戦闘態勢を取った。

 しかし、麒麟は何もしない。

『愚かな。素直に謝れば、許してあげようと思いましたのに』

「魔獣の分際で大口叩くとは、とっ捕まえて、二度とそんな口を叩けない様にしてやるよっ」

 兄貴は麒麟に飛び掛かった。

『是非もなし』

 麒麟がそう言うと、額の白い角を震えだして、音を発した。。

 その音は、鈴のような綺麗な音色だった。

「綺麗な音」

 ティナもその音に聞きほれていたが、兄貴は違った。

「ぐああああっ、な、なんだ、この音はっ、あ、あ、あたまがいてえええええ⁉」

 兄貴が頭を抑えながら苦しんでいた。

 周りを見ると、音色を聞いて平然としている者と倒れて苦しんでいる者の二通りに分けられた。

 更によく見ると、苦しんでいるのは兄貴が連れて来た部下達で、苦しんでいないのは姉さん達が連れて来た部下達であった。

「これは、いったい・・・・・・」

『この角から発する音波は、わたしが敵と認めた者達だけを苦しめる特殊な音波です。わたしを捕まえようとした罰です。暫く、こうして苦しみなさい』

 麒麟が発する音波に苦しむ兄貴達。

 あまり苦しそうなので、ちょっと可哀そうだ。

「麒麟様、兄貴も興味本位で捕まえようしたのは悪いのですが、こうして苦しんでいるので、どうか許して頂けないでしょうか?」

 僕は麒麟に懇願してみた。

 麒麟は僕をジッと見る。

『ふむ。貴方はこの者の弟でしたね。兄が苦しんでいるの見て、心が痛みましたか?』

「そうです。兄貴もこれだけ苦しんでいるので、どうか許して頂けないでしょうか? 代わりに何かして欲しい事があれば、出来る限り応えようと思います」

『・・・・・・・・分かりました。いいでしょう』

 僕の懇願が効いたのか、麒麟は角を震えさせるのを止めた。

 音が止んだので、兄貴は顔を顰めながら立ちあがる。

「いって~、まだ、頭がいたいぜっ」

『貴方の弟に感謝するのですね。本来なら、後三十分はこうするつもりでしたから』

「うげっ、それは勘弁だ。これなら、イザドラ姉貴の説教の方がまだましだ」

 兄貴はもう喰らいたくないという顔をしていた。

「誰の説教の方が、ましですって?」

 兄貴はイザドラ姉さんの声を聞いて、ビクッと背筋を震わせた。

 顔を引きつらせながら、振り向く。

「お、おお、姉貴、おはよう。今日もいい天気だな~、あっははは」

「そうですね。ところで、誰の説教がましですって?」

 兄貴は誤魔化そうとしたが、イザドラ姉さんは誤魔化せる事は無理だった。

「まぁ、それについては後に置いておくとして」

 イザドラ姉さんは、麒麟に目を向ける。

「見た事がない魔獣ですね。これが昨日、アドラが捕まえようとした魔獣ですか?」

「ああ、そうだよ」

 イザドラ姉さんは麒麟をジロジロと見る。

 まるで、値踏みをするかのような目で見ているのに、麒麟は平然としていた。

「ふむ。これはかなり強力な魔獣ですね。下手をしたら、国一つ滅ぼせるかもしれません」

 イザドラ姉さんがそう言うと、皆唖然とした。

『成程、貴方は良い目をしていますね。国を滅ぼすとは些か過激ですが、出来なくはないですね』

 それはつまり、やろうと思えば出来るという事では?

 流石は神獣。怖~。

「ところで、貴方の用事は終わったのですか?」

『いえ、まだ一つあります』

 まだ、あるの?

 これ以上、被害を出さないでほしいのだけど。

 そう思っていると、麒麟が僕を見る。

『貴方、名前は?』

「リウイです」

 何で、僕の名前を聞くのだろうか?

『リウイですか。貴方を一目見た時から気に入りました。わたしは貴方と契約したいのですが』

 はい?

 





 





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