第11話 体力づくり
午前の座学は終わり、昼休憩を挟み部屋を出て城の訓練場に向かう。
今迄行った事が無かったので、道が分からなかったがシャリュが案内してもらって来る事が出来た。
初めて、訓練場に来たので入ると周りを見た。
矢を当てる様の的。人を模した木人。刃が付いていない武器をしまった棚。
そして何百畳の広さを持った空間。模擬試合が出来る様に作られていた。
「ここがくんれんじょうか」
「城にはここ以外にも、屋内屋外を含めて六箇所ほどこれぐらいの訓練場があります」
「へぇ」
訓練場がそれだけあるという事は、この城は相当大きいという事か。
そして待つ事数分。
扉が開いた。入って来たのはヨアヒム先生だった。
「殿下、おはようございます」
「おはようございます」
先生が頭を下げたので、僕も頭を下げて挨拶した。
「では、早速ですが。殿下がどれくらいの力を持っているか確かめさせていただきます」
「はい」
「まずは、素振りをしてもらいます」
ヨアヒム先生はそう言って、棚から子供用の木刀を持ってきてくれた。
僕はそれを持って軽く振ってみた。
ブンッという風切り音と共に振り下ろされる木刀。
うん。重さも長さも、僕に丁度いい。
これなら素振りをするのも問題ないな。そして、素振りをする。
「ふむ」
ヨアヒム先生は僕の素振りを見て、目の色を変えた。
今迄は温厚そうな顔だったのが、今は目を細めて何かを見極めるような目をしている。
先生は何も言わないので、僕は素振りを続けた。
ある程度、素振りをしていると、ヨアヒム先生が近づいきて、剣の握りを指導した。
「左手に全体に力を入れるのではなく、小指と薬指に力をこめるよう意識すればもっと、早く振れます」
「わかりました」
僕は言われた通りに小指と薬指を意識しながら素振りをした。
「そこまで」
ヨアヒム先生が止めたので、僕は素振りを止めた。
「ご苦労様でした。これで、殿下の実力がだいたい分かりました」
素振りだけでよく分かるな。
「それでせんせい、ぼくは何をしたらいいのですか?」
「見た所、ある程度の基本は分かっているようですので、暫くは基礎体力をつける為に走り込みと素振りをするだけで良いでしょう」
「せんせいからみて、ぼくはどうですか?」
これでこの先生の本性が分かる。
お世辞を言うなら、普通の先生としてある程度の敬意を払おう。流石に何をするにしても、お世辞を言われたら上達するモノも上達しないからな。
だが、自分の目で見た限りの事を言うのであれば、信頼できる先生として最大限の敬意を払おう。
「そうですな。私が見た所、殿下の素振りには初めて剣を振るったとは思えない程に綺麗に振っていました。ですが、まだ幼いので体力がないので、後半になってくると少し振りが荒くなっていました。まぁ、これは体力をつけていけば、問題はありません」
ああ、後半になったら疲れて振りが荒くなったか、実は自覚していた。
これは幼いから仕方がないと思う事にしよう。
「さて、少し休憩しましょう。休憩が終りましたら、走り込みをして今日は終わりにしまようか」
「ずいぶんとはやくおわるんですね」
「今日は最初ですから、あまりキツクしますと明日からキツイでしょうから、これくらいでいいのです」
「わかりました」
休憩しながら先生と話をして、走り込みをして今日受ける授業は全て終わった。