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第10話 ようやく、今がどんな時代なのか知った。

 翌日。

 僕は朝目覚めるなり、寝間着から服に着替えて朝食を手早く食べた。

 そして、食べ終わると僕は昨日きた先生が来るのを待った。

 今日の授業は午前はメルビ―ナ、午後はヨアヒムという内容になっている。

 先生が来るまで、暇なので世話役のメイドに話しかける。

「シャリュ、メルビ―ナ先生はどんな人かしっている?」

 僕のお世話をする三人のメイドの一人で、名前をシャリュという。

 純粋な魔人族ではないのか、頭頂部には猫耳があった。

 更に尻尾も生えていた。

「そうですね。わたしが聞いた話では、魔法を使えばイザドラ様の配下の中でも一~二を争う実力者だと聞いています」

「ふ~ん、ほかには?」

「他ですと、人当たりの良い方と聞いています」

「そうなんだ」

 姉さんも随分と人選を頑張った様だ。

 椅子に座りながら、シャリュと他愛のない話に花を咲かせていた。

 コンコン。

 すると、扉がノックされた。

 来たと思うと同時に、部屋に居るがドア越しに声を掛ける。

「どなたですか?」

『メルビ―ナです。リウイ王子に授業を教えに来ました』

 シャリュがドアを開けて、先生を部屋の中に入れてくれた。

 僕は椅子を立ち、先生を出迎えた。

「ほんじつは、よろしくおねがいします」

 僕は頭を下げて、挨拶をした。

「っ⁉ コホン。はい、こちらこそよろしくおねがいします」

 メルビ―ナ先生は、僕が挨拶した事に一瞬驚いたようだ。

 ああ、そっか。一応、僕は王子だから軽々しく挨拶しないと思われていたようだ。

「じゃあ、せんせい。きょうはなにをおしえてくれるんですか?」

「そうですね。普通なら、数字とか文字を教えるのですが、殿下の場合は少し進んだ授業を行おうと思います」

「あれ? ふつう、ここは何かテストをするなり何かして、がくりょくをしらべるのがふつうでは?」

「・・・・・・イザドラ様から、貴方の優秀さを耳がタコが出来るくらいに聞きましたので」

 メルビ―ナ先生は疲れたような顔をして、必要ない事を教えてくれた。

 ああ、その顔を見ただけで、イザドラ姉さんが普段から周囲に僕の事をどんな風に言っているのか分かった。

 さぞかし、盛って色々な人に話しているのだろう~。

「さて、では、授業を開始します。今日は歴史の授業をします」

 歴史と聞いて、僕は目を輝かせた。

 この国の歴史を知れば、僕が死んでからどれくらい経ったのか分かる。

 椅子に座り、メルビ―ナ先生の言葉を聞き漏らさないように集中した。

「では、まずは、この国の成り立ちについて話しましょう」

 先生はそう言いながら、指をパチンと鳴らした。

 すると、ボンっと煙が上がったたと思ったら、本が宙に浮かんでいた。

 そして風もなく触れても居ないのに、本が開きページが勝手に捲られていく。

「今日はここら辺をしましょうか」

 先生が開いた所には、この国の建国初期の事が書かれていた。

「現在、ギンヌンガ魔国の王、すなわち王子殿下の父君であられるヴァミリオン様は十七代目魔王陛下であらせられます。そこまでに行くのはまた別の話として、今日は建国に至った経緯を簡単に説明しますね」

「はい」

「良い返事です。では、まずは、我が国には魔人族以外の種族がそれほど多くないの理由は分かりますか?」

「・・・・・・・わかりません」

「そうですね。では、そこから説明しますね。元々我が国はここから西にある大陸に広大な領土を持っていました。ですが、とある戦争に負けて領土を全て失う事になりました」

「へえ、じゃあ。そのときのうまれたるろうのたみがこの国をつくったの?」

「少し違いますね。この国を作ったのは確かに国を失った同胞ですが、とある王子の下で団結して、我が国の前身にあたる国をお作りになったのです」

「ねぇ、どうしてせんそうにまけたの?」

「簡単に言いますと、この世界には七つの種族がおりまして、人間族、獣人族、亜人族、竜人族、鬼人族、天人族、最後に我ら魔人族。これらの種族で領土を定め平和に暮らしていたのですが、殿下の先祖にあたる方で『暴君』ツシカーヨロウリ様が、この世界を魔人族の物にしようと征服戦争を始めたのです」

「そうなんだ」

 そう言えば、前世で召喚された時、王様だったか誰かがそんな事を言っていたな。

「最初は上手くいっていたようでしたが、全ての種族を敵に回した所為か、各種族が同盟を組んで魔人族領に攻め込んできました」

「まぁ、そうなるよね」

 どう考えても、何処かの種族と同盟を組むだろうに、そんな事も考えないで攻め込んだのろうか?

 少し記憶は薄れているが、あの時あったツシカーヨロウリはそんなに馬鹿な人とは思わなかったけどな。ああ、でも脳筋っぽい人だったから、そこまで考えが及ばなかったのだろうか?

「連合軍に攻め込まれ、当時の王都を陥落寸前だったそうです」

「それでそれで?」

「ですが、そこで連合軍の足並みが乱れたそうです。詳しくは知りませんが、征服した後の領地分配で揉めて、内紛が起こったそうです」

「そうなんだ・・・・・・・・・」

「それを見たツシカーヨロウリ様は好機と見て、王都で籠城していた全戦力を結集して、連合軍を攻撃したのです。その攻撃により、連合軍は敗走。辛くも国の命運は保たれたです。とはいえ、領土は荒らされ、魔人族の将軍達の多くは戦死を遂げていました。これを見たツシカーヨロウリ様は『これでは、戦も出来んし、もう一度攻め込まれたら我が国はあっけなく滅びるであろう』と申したそうです」

「それで、ツシカーヨロウリさまはどうしたの?」

「復興をする事は出来る財はありましたが、今回の戦で各種族がまた連合して攻め込んでくると予想したツシカーヨロウリ様はある決断しました。それは何か分かりますか。殿下?」

「・・・・・・・・わかんない」

 本当は分かるのだけど、ここは分からないフリをしよう。

 今日は授業の最初だ。何でもかんでも答えてしまったら、教える事がなくなりそうだ。

「それは、領土を新たな新天地に行く事を決定したのです」

「ふ~ん、そうなんだ」

 ここまでは、概ね前世の記憶通りだな。

「ツシカーヨロウリ様はまずは全ての魔人族の財を食料と交換して、残った財は王都の蔵に仕舞い込み、食料は船に積み込みんで渡航の準備を始めました。同時に王都の守備を固めました」

「どうして、しんてんちにいくのに、おうとのまもりをかためたの?」

 そこが少しわからなかった。そのまま自分も逃げればいいのに。

「ツシカーヨロウリ様はこんな事態になったのは、全て自分の責任だと言い、自分は新天地の王になるのはふさわしくないと言ったそうです。なので、ツシカーヨロウリ様は直参の親衛隊と共に防備をかためたそうです」

「へえ、そうなんだ」

 成程。それで最期はあんなに晴れやかな顔をしていたんだ。

「そして、長い時間を掛けて渡航準備に完了して出航されたのです。一部の魔人族の将と兵士達を残して」

 最初、領地に攻め込んだ時は、あまりに抵抗なく進めたから、焦土作戦でも仕掛けたのかと思ったけど違ったのか。

「その出航された船の中には、王子様の先祖でツシカーヨロウリ様の嫡子ツーノカブ様も乗っていたそうです」

 成程。それが魔王の血筋か。

「そして、海に出た一団は長い航海に果てに、ようやく陸地を見つけました。そこに新たな王国をたてたたのです。後に『開拓王』とも言われるツーノカブ様が建国した国名は『ノートゥーン』です」

「へぇ、それが僕の御先祖さまなんだ」

「そうです。それから千年ほど月日が流れて、今の国我が国になりました」

「へえ~、・・・・・・・・・って、せんねん⁉」

「何か、変な事でもありましたか?」

 メルビ―ナ先生は、驚いた僕の声を聞いて不思議な顔をする。

 そうだよな。いきなり、大きな声をあげれば驚くよな。

「い、いえ、何でもありません」

「そうですか。まぁ、この『開拓王』から今の陛下の時代までについては、おいおい勉強しましょうね」

「はい、・・・・・・わかりました」

「今日は色々と知って疲れたでしょう。少し小休止しましょう」

「は、はい。わかりました」

 メルビ―ナ先生は本を閉じた。

 色々知って疲れたので、茶を飲んで気分を落ち着かせようと思った。

 シャリュに声を掛けようとしたら、居なかった。

 どうやら、気を利かせて、お茶を淹れに行ったのだろう。

 それにしても千年か。

 どうやら、僕の知り合いは皆死んでいると思った方が良さそうだな。

 ふぅ、転生した時点で何となく予想はしていたけど、こうして改めて分かると、何か胸にぽっかり穴が開いた気分だ。

 そう思っていると、シャリュがお茶を運んできてくれた。

 僕はシャリュにお礼を言うと、茶を飲んだ。

 適温でするすると飲めた。

 いつもと同じ茶なのに、なぜか今日はしょっぱい気がする。







 

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