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第9話 家庭教師がやってきた。

 そうして瞬く間に月日が経ち、僕はとうとう五歳になった。

 リウイもそろそろ専属の家庭教師を付ける歳になったなと、この前久しぶりに顔を見せた父が僕に告げた。で、その先生達が今日来るそうだ。

 達なのは、武術と学問と二人先生が居るからだ。

「どんな先生が来るんだろう。楽しみだな~」

 出来れば男性の先生が良いな。どうも、女性の先生だと打ち解けるのに時間が掛かりそうだ。

 まぁ、姉さん達が僕の専属家庭教師について、かなり口を出しているそうだ。

 ミリアリア姉さん曰く、あれは嫁選びをしている小姑だそうだ。

 う~ん。ありがたいと言うべきか、それとも過保護だなと言った方がいいのか分からなかった。

 僕はソワソワしながら、先生が来るのを待っていた。

「リウイ、少しは落ち着きなよ」

 そう声を掛けるのは、最近、僕のお世話をするようになった茶髪をツインテールにしたメイドだ。

 背は低く、肌は健康的に日に焼けている美少女であった。

 名前をアルティナと言う。長いので、普段はティナと呼んでいる。

 僕の乳母の娘なので、俗にいう乳兄弟だ。いや、ティナは女なので乳姉弟か。

 僕よりも一月早く生まれたとかで、事あるごとにお姉ちゃんぶる。

 精神年齢で言えば、僕の方が上なのだが、ティナの好きにさせていた。

 性格は勝気で負けず嫌いであった。

 両親はそろそろ情操教育もしようと考えたのか、今年からティナを僕のメイドにしてくれた。

 年齢が年齢なので、メイドらしい仕事は他にいるメイドさんがしてくれる。

 ティナの仕事は僕の遊び相手だ。

 ゆくゆくは、僕の側近になるように教育を受けられるのだろう。

 本人はそんな勉強よりも、身体を動かす方が好きなようで、よく勉強をサボって遊んでいた。

「まったく、罠に掛かった子狸みたいにウロウロしてみっともないわよ」

 ティナは僕の様子を見て呆れていた。

 仕える時に、二人きりの時は敬語を使わなくていいと言っていたお蔭か、何かこうして敬語を使わない会話はホッとする。

「そうだね。でも、どんな人がくるか気にならない?」

「全然」

 ティナは手を横に振って即答した。

「あんたのせんせいだもん。興味あるわけなじゃない」

「う~ん、言われてみたら確かに」

 でも、今の言い方だったら、ティナの先生でも同じことを言ったんだろうな。

 内心苦笑した。

 コンコン。

 ドアがノックされた。

「どなたですか?」

 ティナがドア越しに訊ねた。

『本日、リウイ様の家庭教師として参りました者です。中に入っても宜しいですか?」

 ああ、ようやく来たんだ。でも、何か聞いた事がある声だな。

 ティナはどうすると言いたげに、僕の顔を見る。

「どうぞ」

 僕がそう言うと、ドアが開いた。

 中に入って来たのは、イザドラ姉さんだった。

「いざどら姉さん?」

「はい、お姉さんですよ。おはよう、リウイ」

 イザドラ姉さんは、僕を抱き締めた。

 おはようと返事をする前に抱きしめられ、胸に顔が埋められた。

「わぷっ」

「ん~、相変わらず良い手触りですね~」

 イザドラ姉さんは、僕の頭を撫でて微笑む。

 このまま柔らかい胸の埋められたままでは、窒息死してしまうので僕は顔をあげて姉さんに訊ねた。

「どうして、ねえさんがぼくのかていきょうしの人としてきたの?」

「ああ、それはですね」

 イザドラ姉さんは僕の頭から手を放して、僕の顔を見た。

「それはですね。リウイの家庭教師はわたしがする事になったので、こうして顔を出しにきました」

 イザドラ姉さんは自慢げに胸を張る。

 それを聞いて、僕は内心、残念であった。

 どんな人が来るか楽しみにしていたのでガッカリであった。

「あら、反応が薄いような。・・・・・・・もしかして、リウイはお姉ちゃんが教師は嫌ですか?」

 嬉しそうな顔を一転させてこの世の終わりのような顔をしだした。

「ぜ、ぜんぜん、う、うれしいな~、イザドラねえさんがきょうしでうれしいな~」

 僕は慌てて、首を横に振って喜ぶ。

 少しわざとらしいかも知れないが、イザドラ姉さんは花のような笑顔を浮かべた。

「そうですか。リウイは嬉しいですか。良かった~」

 ほっとした顔で息を吐くイザドラ姉さん。

「と言うのは、冗談です。ちゃんと家庭教師を連れて来ましたよ」

 えっ⁉ 何だそうなんだ。

 正直、冗談だと思わなかった。

「まぁ、そうしようとしたら姉さんと父上が止めたので泣く泣く止めたのですけどね(ボソッ)」

 グッジョブ、父さん、それにロゼティータ姉さん。

「さて、そろそろ入ってきなさい」

 イザドラ姉さんが今だに開きぱなっしドアに向かって声を掛けた。

 すると、外で待っていたのか男女二人組が入って来た。

「「お初にお目に掛かります。リウイ王子」」

 二人は、僕に敬礼してくれた。

 僕も軽く会釈した。

「では、紹介しますね。こちらの男性はリウイの武術担当の先生で名前をヨアヒム・シュナイダーと言います」

 姉さんがそう紹介すると、ロマンスグレーの魔人族の人が顔をあげた。

 顔を上げてくれたので、その顔をよく見た。

 彫りが深い目鼻立ちした顔で、耳の上に黒い小さい角が生えて、口髭にもチラホラと白髪が混じっていた。

「王子殿下に護身術、騎乗術、弓矢などを教えますので、何卒よろしくお願いいたします」

「この者は我が国を代表する歴戦の宿将です。貴方も学べる所は多くあるでしょう」

「宿将とは大げさな、ただ戦場に出て運よく生き残っている年寄りですよ」

 自分の事を謙遜して言うとは、実直な人のようだ。

 これは好感が持てる。

「せんせい、よろしくおねがいします」

 僕は頭を下げて、礼節を示した。

「はっ、こちらこそよろしくおねがいいたします」

「次に学問を担当する先生で名前をメルビーナです」

 紹介されて、顔をあげた女性には角がなかった。

 その代わりに、目の白い部分が黒く青い瞳を持っている。こちらの女性は角がない種族のようだ。

 薄緑色の髪は腰まで届く長さで、妖艶な大人の色気をたたえた美貌。

 左目にモノクルを付けていた。

「王子様の学問、教養、魔法などを担当いたします。これからもよろしくお願いします」

「メルビ―ナは元はわたしの部下です。知識が豊富で、教養も豊かなのでぜひ色々と教えて貰いなさい」

「はい、わかりました」

 僕はメルビ―ナ先生に顔を向けた。

「よろしく、おねがいします」

「はい。こちらこそ」

 今日は顔見せだけなので、挨拶が終ると直ぐに部屋を出て行った。

 明日から勉強開始だそうだ。

「よ~し、がんばるぞっ」

 明日が楽しみだ。

 

 

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