第4話 歩けるようになったらする事は、一つだ。
ハイハイから二足歩行できるくらいになり、それから三年が経った。
言葉はなんとなくだが話せるようにはなった。
多分、ここは僕が死んだ世界エルディアスだと思われる。
僕が今、何処に居るのか分からない。なので、情報収集兼出歩いて、この場所には何があるのか知る為に部屋を出る事にした。
お世話をするメイドに着せて貰った服を、姿見で見て変な所がないか確認してから部屋を出た。
そろそろミリアリア姉さんが部屋に来る頃だけど、気にしない事にした。
今はここはどんな所なのか知る方が大事だ。
部屋を出ると、僕は右か左かどっちに行こうか考えた。
「・・・・・・よし、こっちにしよう」
僕は利き腕が右腕なので、右に行く事にした。
そのまま道なりに進んで行った。
途中、メイドと使用人と思われる魔人族の人達に会った。
皆、僕の顔を見るなり、直ぐに正体が分かったのか、会釈して直ぐにそのまま歩いて行く。
僕も会釈を返して、そのまま歩いていた。
(う~ん、何処に図書室にあるんだろうな~)
キョロキョロしながら歩いていると、前から鎧を着た騎士の一団がこちらに向かって歩いてきた。
僕は道を譲る様に脇に逸れた。
先頭に居る人が後ろに居る人と話をしていたが、僕に気付いたのか目を僕に向けた。
「んんん?」
男性は僕を見るなり、首を傾げていた。
どうやら、僕を初めて見るので誰か分からないでいるようだ。
僕もその男性をジッと見た。
黒い髪に三白眼なのだが、黒目の部分が赤った。額には小さいが赤い角が二本生えていた。
精悍な顔立ちで筋骨隆々で野性味溢れた男であった。
良い生地を使った服がパツンパツンだ。
う~ん、あれだな。世紀末覇者伝説に出て来る主人公みたいに、少し力を入れると服がはじけ飛ぶのかな?
「え、えっと・・・・・・・」
「誰だ? お前」
男性は僕を見るなり、そう呟いた。
すいません。それは僕が訊きたいのですが。
「殿下。この方は」
先程、男性と話していた人が男性の耳元で囁いた。
というか、今「殿下」とか言ったよな。という事は
「あ、あ~、お前が新しく生まれた弟か」
男性は大きくてゴツイ手で、僕の頭を掴んだ。
そして、ワシャワシャと髪型が乱れるぐらいに頭を撫でた。
「がっはははは、そうか。お前がリウイか。初めて見るが、こんなにちっこいとはな~」
こうやって、男性に頭を撫でられるのは父さん以来だな。
まぁ、こんなに力強く撫でる事はしないけどね。
「俺はアードラメレク。お前のえ~と、・・・・・・・何番目だったかな」
「二番目です、殿下」
「おお、そうだ。上から二番目だから次兄だ。俺の事は好きに呼んでいいぞっ」
アードラメレクと名乗った僕の兄は、豪快に笑いだした。
う~ん。この人はアニキと呼ぶのが一番似合っている気がする。
「うん。兄貴」
そう言うと、アードラメレク長いのでアドラ兄貴でいいや。そのアドラ兄貴が目を丸くしていた。
「お前、もう話せるのか。こいつは驚いた‼ よし、決めたぞ」
アドラ兄貴はそう言って、僕をヒョイと掴むと自分の肩に僕を乗せた。
うん? 何をするつもりだろうか?
「今日はこれから魔物退治に行くつもりだったが、お前も付き合え」
「はい?」
「がっははは、お前も男なら戦う所を見るのも悪くないだろう」
いやいや、流石に早すぎでしょう。
連れて行くなとは言わないけど、せめてもう少し大きくなってから連れて行ってください。
「殿下‼ 弟君を魔物退治に連れて行くなど危険でございます。どうか、お止めください‼」
うん。そうだ。名も知らぬ側近の人。もっと言ってあげて。
「がっははは、心配いらん。こいつも親父の血を引いているんだ。魔物退治くらいで肝をつぶすように、柔なものは持っておらんよ」
「ですがっ」
「よし、お前等。行くぞ‼」
アドラ兄貴がそう叫ぶなりさっさと進んで行った。
その後を側近の人が「殿下、まだ、話は終わっていません。お待ちを~~~~」と言いながら追い駆ける。苦労しているね。
よく、分からないけど。何故か魔物退治の着いて行く事になった。
リウイが散策していた時。
ミリアリア「リウ~、遊びに来たよ~」
そう声を掛けるなり部屋に入ったが、誰も居なかった。
ミリアリア「あれ? おかしいな。隠れてるのかな~」
ミリアリアは部屋中を探してもリウイの姿はなかった。
仕方がなく、部屋を出てリウイを探す事にした。
その途中で豪快な笑い声が聞こえて来た。
ミリアリア「あの笑い声。アドラ兄の声だ。随分と機嫌が良さそうだけど、何かあったのかな?」
少し考えてたが、ミリアリアは直ぐに頭を振った。
ミリアリア「まぁ、いっか。今はリウを探そう~」
しかし、何処を探してもリウイは見つからなかった。