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第3話 少し成長して

 やがて、ハイハイ出来る位にまで成長した僕は、直ぐに立ち上がり歩けるように頑張った。

 これが意外と難しかった。

 前世の感覚で立ち上がろうとしても、足に力が入らず直ぐにこけてしまう。

 壁や物を掴んで立ち上がっても進む事が出来なかった。

 んん~、意外と歩くのって難しいなぁ。

 そう思っていたら、ドアが開いた。

「おおっ、もう立ち上がれるほど成長したのじゃな。リインはホンに早いのじゃ」

 そう言って入って来たのは、幼女であった。

 足まで届きそうな位に伸ばした金髪。アメジストのような瞳。

 凛々しい端正な顔立ちで、腰に手を当てて僕を見て喜ばしそうに顔を緩ませている。

 見た目に似合わず古風な喋り方をするこの女性は、僕の姉だ。

 長女のロゼティータ姉さんだ。

「リイン。遊びにきたのじゃ」

「あ~(わ~い)」

 歩けないので、ハイハイでロゼティータ姉さんの所に行く。

 ちなみに、姉さん達は僕を色々な呼び方をする。

 ロゼティータ姉さんは「リイン」でイザドラ姉さんとヘルミーネ姉さんは「リウイ」でフェル姉さんは「ウーちゃん」でミリアリア姉さんは「リウ」と呼んでいる。

 ロゼティータ姉さんは姉達の中では良く来る方だ。

 一番来るのはミリアリア姉さん、次にヘルミーネ姉さん、その次がロゼティータ姉さんだ。

 その次あたりにフェル姉さんで、最後にイザドラ姉さんになる。

 皆、それぞれの仕事をしているそうだが、話を聞いた限りではイザドラ姉さんが特に忙しいようだ。

 次期宰相と呼び声が高く、それに見合った力量を持っているので皆から頼りにされいるそうだ。

 その分かなりの激務のようで、時たま僕の所に来て抱き締めて頬ずりしながら「はぁ~、癒される」と言っている。

 まだ言葉を発する事が出来ないので、イザドラ姉さんは好きにさせていた。

 例え、髪を弄られて三つ編みにされようがその三つ編みをカチューシャみたいにされても、更には何処からか出した女の子用のフリルが沢山ついた服を着せられて「はぁ~、可愛いわ~」とキラキラした笑顔で言われても。

 前世で姉がいなかった所為か、どうも姉の接し方が分からない。

 なので、イザドラ姉さんの好きにさせていた。

 ロゼティータ姉さんは僕を抱き締めながら、頬ずりしてきた。

「う~ん、リインの肌はプニプニしていて気持ち良いのじゃ」

 何か、犬が自分の縄張りを主張する為にするマーキングをされている気分だ。

 そう思っていると、ドアがノックもなしに開いた。

「やっほー、リウ。遊びにきたよ~」

「何じゃ、ミリアか」

「ロゼ姉、今日は暇なんだ」

「うむ。今日は何もなくてな、それでリインの所に来たのじゃ」

「へぇ、そうなんだ」

 ミリアリア姉さんはそう言って、僕達の所まで来て僕の頬を突っつく。

「うわぁ、プニプニしていて気持ち良いな~、うりうり」

 ミリアリア姉さんは頬の感触が気持ち良いのか、楽しそうに突っつく。

「うむ。ミリアの気持ちもよく分かるぞ」

 ロゼティータ姉さんも突っつかれていない方の頬に触る。

「この感触、まるで雲のようじゃのう」

「だねえ~」

 二人は顔を緩ませながら、僕の頬を好き勝手に弄る。

 そのまま好きにさせていたら、今度はドアがノックされた。

 返事を待たずにドアが開いた。入って来たのはイザドラ姉さんだった。

「リウイ、元気ですか。って、姉さんとミリアも居るのですね」

「おお、イザドラか」

「おひさ~、イザ姉」

「ふぅ、ミリアそのイザ姉というのは止めなさいと何時も言っているでしょう。貴方も魔王の娘として、日頃から言動を」

「ええ~、いいじゃん。パパは何も言わないし」

「はぁ、お父様」

「父上は特にミリアには甘いからの、仕方かないのじゃ」

「・・・・・・そうですね」

 溜め息を吐いたイザドラ姉さんは、直ぐに気を取り直した。

「さて、リウイ。今日はこの服を着ましょうね~」

 そう言って、イザドラ姉さんの両手には女の子が着るような服を幾つも持っていた。

「服に合わせて、髪型も変えましょうか。この服なら、これでしょうか」

 そう言って、イザドラ姉さんは僕の髪を弄りだす。

「いやいや、その服ならこの髪型はどうじゃ?」

 ロゼティータ姉さんも面白そうと思ったのか加わり。

「ええ~、こっちの方がいいと思うな~」

 更にはミリアリア姉さんも加わった。

(カオスだ・・・・・・・・)

 女三人居ると姦しいというのを、今世で初めて味わった。


















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