閑話 ヘルミーネの心境
ヘルミーネ視点です。
可愛い。
最初、リウイを見た時そうとしか思えなかった。
白哲の肌。蒼銀色の髪。額から見える赤い角。
魔人族の王の末の息子として生まれた。わたしの弟。
正直、父上とリウイの母親から生まれたとは思えないくらいに、顔が似ていない。
母親は「あたしの小さい頃にそっくりだ」とか言っていた。
髪の色ぐらいしか似ていなと、わたしは思った。
せめて、性格は二人に似ないでくれと祈る。
生まれたばかりの頃、顔を出したのだがリウイはわたしの顔を見るなり泣き出した。
あの時は、泣き止ませようと色々したが結局わたしには出来なかった。
ミリアとフェルがあやしてようやく泣き止んでくれた。
なので、どうしたら良いかと長女のロゼッティータ姉さんに相談した。
『泣かれるのであれば、泣かれなくなるまで顔を突き合せたらどうじゃ?』
と言われたので、わたしはそのアドバイスに従い毎日顔を出すようにした。
最初は泣かれて困ったが、段々と顔を会わせていくと慣れて来たのか泣かなくなった。
しまいにはわたしの顔を見て笑うようになった。
その笑顔を見るのが大好きで、訓練や仕事の合間を縫って顔を出すようにしていた。
今日も、訓練の合間を縫ってリウイの顔を見に来た。
部屋に入ると、揺り籠の中にいるリウイの顔を覗き込んだ。
リウイはわたしの顔を見ると笑顔を浮かべてくれた。
これも、ロゼ姉さんのアドバイスのおかげだと思うと嬉しかった。
一頻りリウイの顔を見て、わたしは指を伸ばしリウイの身体に突っついた。
本当はその身体を触りたいのだが、不用意に触れてリウイを傷付けるのは嫌なので、身体を突っつく事で我慢していた。
指の先がリウイの身体に当たると、その柔らかい感触に驚き思わず指を引っ込めた。
だが、その感触をもう一度味わいたくて、また突っつく。
部屋に来る度、それを毎日していた。
リウイは嫌がる素振りを見せず、不思議そうに見ていた。
わたしはリウイの身体を突っついていると、リウイが指を伸ばしだした。
何かするつもりなのか? と思いながら指を伸ばしたら、互いの指の先が当たった。
「キャハッ」
リウイは自分でした事が面白かったのか笑い出した。
その笑顔が可愛くて、わたしも笑みを浮かべた。
「将軍、そろそろ訓練のお時間です」
副官がドアをノックしてドア越しに声を掛けて来た。
もう、そんな時間か。
名残惜しいが、そろそろ行かないといけないな。
わたしはチラリとリウイを見た。
リウイは笑っていた。それと気のせいかも知れないが、手を振っているようにも見えた。
まだ、生まれてそれほど時間が経っていないのに、手を振る事が出来るとは思えないので、多分見間違いだろう。
わたしは部屋を出た。
さて、今日も訓練を頑張るとしよう。