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第92話 魔王が言うと、テンプレに聞こえない。

「はぁっ‼」

 天城君が魔法で生み出された敵兵を斬る。

 斬られた兵士は、床に倒れて黒い瘴気となって消えた。

 だが、どれだけ倒しても、魔王の下には届かない。

「くそっ、キリがないな」

「そうだね」

 僕も魔法で倒してはいるのだけど、一向に減らない。

 どうしたものだろうか。

「どうした? 足が止まっているぞ!」

 魔王の手から光弾が放たれた。僕達は横に飛んで、その攻撃を躱す。

 敵の兵士だけではなく、魔王の攻撃にも注意しないといけないから、余計に神経を使う。

「むっ⁉」

 光弾を放っていた魔王が、いきなり攻撃を止めだした。

 どうしたのかな?

「ふむ。オサーブマがやられたか」

 オサーブマ? その人って確か四魔将最後の一人だよね。

 やられたという事は、誰か倒したのだろう。

「どうやら、お前達はおれ達を侮った様だな」

 天城君は剣を構えながら挑発しだした。

 魔王はその挑発を鼻で笑う。

「ふっ、良い気になるなよ。オサーブマは我が四魔将の中で一番最弱よ。他の四魔将を含め、貴様ら如きが我らに敵う筈がなかろう」

 何故だろう。

 魔王がそのそのテンプレな台詞を言うと、強がりがただの虚勢に聞こえてくる。

 そのオサーブマという人が本当に弱いのか分からないけど、でも本当の弱いなら何故四魔将に入れたのだろう?

 そこの所を是非聞きたいけど、教えてくれないだろうな。

「猪田、このままじゃあジリ貧だ。何か策はないか?」

 敵の攻撃を華麗に躱しながら、天城君はやって来た。

 この状況で出来る作戦か。う~ん、何か良い考えが浮かばないなぁ。

「部下の仇の前に貴様らを倒して、奴の供養にしてやろう。『ダークバースト』」

 魔法で生み出した兵士達は黒い霧となって、魔王の手の中に集まる

 その魔法を打ち出す構えはまるでカメ〇メ破のようだ。

 魔王の魔法が放たれた。

「くっ、魔王がカメ〇メ破を放つなんてっ」

「いや〇メハメ破じゃないと思うよ、あれは⁉ ってそんな事よりも守らないと『守』」

 魔王の魔法を、僕の魔法で防ぐ。

「く、くうううううっ⁉」

 凄い衝撃で吹き飛ばされそうだが、僕は何とか耐える。

 魔王の魔法攻撃が終った時には、周囲の壁やら床などが凄くえぐれていた。

「・・・・・・凄まじい、威力だな。カメハ〇破」

「威力は確かにすさまじいね。でも、これで攻略手段が思いついた」

「何? 本当か?」

「うん。作戦はこうしよう」

 僕は天城君の耳元に作戦の概要を話す。

「よし、それで行くぞ。援護は任せたぞ」

「OK。任せて」

「行くぞ、魔王‼」

 天城君が『魔王の軍勢』で生み出された兵士達に向かって行く。

 そして兵士達を倒していく。

「やぶれかぶれの突撃か? ふっ、無駄な事を」

 魔王はそう言って手を翳すと、至る所から黒い瘴気が生まれた。

 そしてその瘴気が兵士のの形になった。

「わたしの魔力が続く限り、この兵士達は幾らでも生み出せるぞ」

「そうだ。だから、倒しているんだ!」

「何だと?」

 天城君の言っている意味が分からず、魔王は不審そうな顔をする。

「要はこの兵士達もお前の魔法で生み出しているんだろう? だったら、こいつらを倒し続ければ、いずれは魔力が尽きて出せなくなるのだろう。そうと分かれば、倒し続けるだけだっ」

「む、無駄な事を、わたしが出せなくなる前に、お前の体力が尽きるのが先であろうっ」

「それはどうかな」

 僕が話に割り込む。

「ここだけだったらそうかもしれないけど、ここの首都全域にその『魔王の軍勢』の兵士達がいたる所にいる。だったら、かなりの魔力を使っている筈」

「・・・・・・・・・」

 魔王が何も言わない所を見ると、どうやら正解のようだ。

 時に沈黙は言葉よりも雄弁に語るって、本当なんだ。

「だからっ」

 天城君は兵士を倒して、剣の切っ先を魔王に向ける。

「こうして倒していけば、お前の魔力は減っていく。外にいる連合軍の人達もこうしている間も、お前が生み出した兵士達を倒している筈だ。倒される度に、お前は魔力を使って兵士達を補充する。補充する先から倒していけば、いずれはお前の魔力が尽きる!」

「ぬうっ、おのれっ」

「覚悟しろ。魔王!」

 天城君は張り切って兵士達を倒していく。

 もし、魔法の発動を止めたら、連合軍の兵士達はここの王宮になだれ込む。

 だから、魔法を解除する事も出来ない。だが、このまま魔法を使えば、いずれは底をつく。

 まさに悪循環だ。

「ならば、さっさと片付けてくれるわっ!」

 魔王の手の中にまた魔力が集まりだした。これは先程放った『闇の波動』のようだ。

 現に、そこらに居た兵士達が瘴気になって、魔王の手の中に集まっていく。

「これで、終わりにしてくれるっ‼」

 魔王がまたあの構えをしだした。なので、僕も魔法を準備する。

「ふっふふふ、この日の為に開発した。魔法をとくと御覧じろうっ」

 すると、僕の身体が光り輝きだす。

「『天と地よ、火と水よ。今こそ、顕現せよ』」

 そう唱えると、僕の周囲に、赤い玉、青い玉、白い玉、黒い色の玉が浮かんだ。

 四方にその四つの玉が浮かぶ。

「『四方より、交われ』」

 四つの玉は近づいて行き、やがて交わって一つの玉になった。

「ふん、どんな魔法科知らんが、遅いわ。受けよ『闇の波動』」

 魔王の手から『闇の波動』が放たれた。

 その魔法を見てから、僕も魔法を放つ。

「こっちもいくぞ『恒コズ星ミック破バス壊ター』」

 僕は金色の魔法を放ち、魔王が放った闇の魔法がぶつかる。

 ぶつかった衝撃波が、至る所を破壊する。

「ん、ぬぐうううっ」

「くううううううう」

 互いの魔法がぶつかりその余波で今にも吹き飛ばされそうだ。

 だが、僕は耐えて魔法を放つ。

(まずい、このままだと、押し負けるっ!)

 魔王と言うだけはあって、魔法の扱いは得意のようだ。僕の魔法が負けている。

 徐々に押されて行く。このままだと、やられると思われた瞬間。

「もらったああああああっ」

 天城君が魔王の横から飛び掛かり、腕を斬り落とした。

「な、なにいいいいいっ⁉」

 腕を失い魔法を放つ事が出来なくなった魔王。

 斬られた傷口を手で押さえられ、放っていた魔法が掻き消えた。

「今だ!」

 その瞬間を狙ったかのように、僕の魔法が魔王を襲う。

 天城君は魔王の腕を斬り落としたら、直ぐにその場を離れたので大丈夫だ。

「ぐ、ぐうおおおおおおおおおおっ⁉」

 魔王は金色の魔法に包まれた。


 「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・・」

 魔力を使い切り、荒く息を吐く僕。

 その隣では、天城君が剣を構えながらも、魔王が居る場所に見続ける。

 だが、いつまで経っても魔王が姿を煙の中から出てこない。

「・・・・・・・やったか?」

 あっ、それこの場面で言いますか?

 言っちゃあ駄目でしょう。その台詞は。

「なめるでないわ~~~~‼」

 その怒号と剣を振るう。すると、風圧で煙が晴れていく。

 晴れた先には、片手を失いながらも毅然と立つ魔王が居た。

 失った片手の傷口からは赤い血が流れだすが、魔王は一顧にもしていない。

 正直、凄いと思えた。

「わたしは魔王ツシカーヨロウリだ! そう簡単に倒せるとは思わぬ事だ!」

「流石は魔王。だが」

 天城君は握った柄に力を込める。

「オレ達も負けるつもりはない。この世界の人達の為にも、そして故郷でオレ達の帰りを待っている人達の為にも、魔王、お前を倒す‼」

「吼える事ならば、犬でも出来るわ‼ その世界を救う気持ちが本物ならば、わたしを倒して証明するが良い⁉」

「いくぞおおおおおおっ⁉」

「こいっ‼」

 天城君と魔王の剣が激突した。

 激突した事で、生まれた余波は部屋を駆ける。

 僕の身体にも襲いかかり、吹き飛ばされそうになるのを何とか耐えた。

 吹き飛ばされるのを耐えると、魔王と天城君は互いの刃を重ね合わせていた。

 互いの刃が交わる事で生まれる甲高い音と火花。

 一合、二合、三合と互いの刃をぶつけ合う。

 僕はその永遠と思える斬り合いをただ見ている事しか出来なかった。

 魔力が尽きた僕には、既に援護も出来ない。

 そんな僕が二人の間に割り込めば、たちまち切り殺されるか天城君の邪魔になるだろう。

 なので、僕はこのまま二人の戦いを見続ける。

 見ていると、剣技では天城君が勝っているようだが、パワーでは魔王の方が上のようだ。

 天城君は切り返しやフェイントを組み合わせて技で攻めているのだが、魔王は純粋に力技でそれらの技を正面から防いでいる。

(片手で剣を振るっているのに、パワーで押すなんて、何て膂力だっ)

 このままでは、天城君が押し負けると思い何か手はないかと思っていると、羽音が聞こえて来た。

 何処からだと思い周囲を見ていると、僕の肩にモリガンだ止まった。

「今度は何処に行っていたんだ?」

『ふむ、ちょっとな』

 こんな最終局面で何処かに行けるとは、普通に凄いな。

 って、今はそんな事を思っている場合じゃない。

「モリガン、少しなら魔力を僕に回してくれるかい?」

『何かに使うのか?』

「今、戦闘中のクラスメートを援護したいんだっ」

『あい、分かった』

 モリガンが魔力を僕に渡しだした。

『これくらいで良いか?』

「ありがとうって、随分くれたな⁉」

 かなりの魔力を渡してくれたぞ。

 これだけあれば、十分に援護できる。

「まずは『筋パ力ワー増ブー強スト』次に『速クイ度ック増ブー強スト』更に『自オー動ト回リジェ復ネ』

 僕は『筋力増強』と『速度増強』と『自然回復』の魔法を天城君に掛けた。

 魔法の効果は呼んで字の如くだ。

 ちなみに、これらの魔法はこの世界に元々あり、上級魔法の部類に入る。

「続いて『魔マジ法ックの矢アロー』『雷サンダー弾ブリット』」

 敵を追尾『魔法の矢』と『雷弾』の魔法を放つ。

 魔法は魔王に向かっていく。

「ちょこざいなっ」

 魔王は剣で魔法を打ち消す。

 よし、魔王は魔法に注意が向いた。今だよ。天城君。

「くらえええっ」

「しまっ」

 天城君の袈裟懸けの一撃は、魔王の体を切り裂く。

「ぐうっ、おのれ」

 左肩から右の脇腹を斬られた魔王だが、まだ倒れる様子はない。

 斬られる瞬間、後ろに飛んだ事で最低限のダメージまで抑えたようだ。

「ふぅ、ふぅ、ふぅ、・・・・・・・・よしっ」

 魔王の身体に一撃入れる事が出来て喜ぶ天城君。

 その喜ぶ姿を見て、魔王はいきりたつ。

「ず、図に乗る出ないわっ、貴様らっ」

「猪田、援護は任せるぞっ」

「分かった」

 天城君は攻撃に専念したので、僕はその援護に全神経を注いだ。

 二対一だと、卑怯だと思われるかもしれないけど、戦場だから卑怯も何もないという事で。


 




















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