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第89話 魔王宮に侵入

「そこの角を右に曲がってから少し進んだ所にある十字路を真っ直ぐ進んで」

「分かった」

 先頭を天城君、西園寺君で真ん中に僕と斉藤君 最後尾に遠山君という順で僕が地図で指示をしながら、首都内を駆けている。

 今の所は敵兵には見つかっていないが、王宮に近付けば見つかるリスクは高くなる。

 なので、慎重に駆けていく僕達。

 何故、王宮まで道のりが分かるのかと言うと、事前に調べていたからだ。

 攻略戦が始まってから数日後の事だ。

 西園寺君が「霧が晴れたのだから、敵の首都の内部がどうなっているか分かる筈だ。そこでお前の肩に止まっている烏を使って、内部を探らせろ」と言われて、僕はモリガンに頼み込んだ。

 最初は嫌々だったモリガンだったが、僕がプリン十個作ると言うと了承してくれた。

 そして、モリガンが首都の上空を飛んでその様子をつぶさに見てくれた。

 首都から帰るなり、モリガンが紙に首都の見取り図を描いてくれた。

 嘴でペンを咥えながら書いた割りには、精巧に出来ていた。

 書き終わった後、プリンを作ったのだが、匂いを嗅ぎ分けたのかそれとも甘い物を欲する女子の本能なのか作っている最中に、マイちゃん達が現れて、マイちゃん達の分も作るのは想定外だった。

 しかも、マイちゃんとセナさんはわんこそばを食べるみたいに次から次へと食べていくので、二人の食べるペース合わせて作らないといけなくて大変だった。

 更に誤算だったのは、マイちゃん達が食べるのを見て、女性士官達も物欲しそうな目で見てくるので作る事になった。

 流石に本陣詰めの士官五百人分作るのは大変だった。

 とまぁ、そんな苦労のお蔭で王宮までの道のりはすんなりと進めている。

「すげえな、お前の肩に止まっている烏」

 斉藤君は驚いている。

『我は烏ではないわ。たわけ』

(まあまあ、落ち着いて)

 モリガンが念話で話し掛けるので、僕も念話で宥める。

 そうこうしていると、僕達は王宮の前まで来た。

「すんなりと着いたが、妙だな」

「何が妙なんだ? 西園寺」

「ここに来るまで、兵士に会っていない」

「? それがどうした? 兵士は城壁に居るのだろう」

「籠城戦とはいえ治安維持をする警備兵は居る筈だ。その警備兵に会わないなんて、有り得ないぞ」

「確かにな。城壁に警備兵を回すとは思えん」

「だとしたら、何で居ないんだ?」

 僕達は王宮を前にして疑問を感じた。

「・・・・・・ここで話しても仕方がない。ここの王宮に居る魔王に理由を聞けば分かる筈だ」

「そうだな」

 天城君がそう言うので、西園寺君も考えるのを止めて腰に差した剣を抜いた。

 西園寺君が武器を抜いたのを見て、僕達も武器を構えた。

「行くぞ‼」

 西園寺君の号令で僕達は王宮に駆ける。


王宮に入るとまず出迎えたのは、大きなエントランスホールだった。

 広い上に目が奪われる装飾がいくつもあった。

「凄いな。流石は魔王が住まう宮殿か」

「俺さゲームみたいに、何かおどろおどろしくて寒気がしそうな内装だと思っていたぜ」

 西園寺君が感嘆して、斉藤君は想像と違って驚いていた。

「魔王って言うくらいだから、そう思うよな」

 天城君も斉藤君と同じ思いのようだ。

「話はそこまでだ。敵が来たぞ」

 遠山君がそう言うので、注意を向けると何処からともなく黒い霧が出てきて、その霧が人の形を取り出した。これは魔王が使った魔法じゃないか。

「ここで『魔王の軍勢』が現れるという事は、ここに魔王が居ると思った方がいいな」

「そうだな。早く魔王が居る場所に向かおう」

 天城君と西園寺君が剣を構えた。

 二人の動き合わせて、遠山君も盾と斧を、斉藤君は弓を、僕は槍を構える。

 武器を構えたので、魔法で生み出された兵士達が襲い掛かってきた。

「こいつらを蹴散らして、魔王が居る場所を探すぞ‼」

「「「おうっ」」」

 僕達は戦闘を開始した。


「ふんっ」

 遠山君の一撃を喰らい『魔王の軍勢』は紫色の血を流しながら倒れ、直ぐに何も残さず黒い塵となって消えた。

 他にも、西園寺君や天城君の攻撃とか、僕が放つ魔法とか、斉藤君の矢が当たり敵は倒れては消えていく。僕達は今敵の魔法を倒しながら、魔王を探している。

 しかし、どれだけ進んでも敵は減りはせず、うじゃうじゃと出て来る。

 もう一階の殆どを回ったが、何処にも魔王の姿はなかった。

 最後の部屋の前に着く。僕達は互いの顔を見て頷く。そして、遠山君が扉を蹴破ッた。

 ドガンッという音と共に扉が飛んで行く。それと同時に僕達は部屋に入る。

「ほう、ここまで来たか。思っていたよりも早かったな」

 そう言ったのは、額に角がある優男風の魔人族のイケメンが居た。

 手にはチャクラムと言われる武器が幾つもあった。

「何者だ⁉」

 天城君が誰何すると、そのイケメンは優雅にお辞儀をした。

「わたしか? わたしは四魔将の一人」

 イケメンはそう言って持っていたチャクラムを空に投げる。

 すると、チャクラムは空中で回転しながら浮かんでいる。

「『輪撃』のコゲンツナ」

「四魔将⁉」

「魔王が言っていた四天王みたいな奴か」

 西園寺君と天城君が柄に力を込めた。

 そのコゲンツナという人の後ろには、上にあがる階段が有る所を見ると、これはあれかな。

「魔王はこの上の階にいるのかな?」

「正確に言えば、四階に陛下はおられる」

「えっ? それって言って良いの?」

「・・・・・・ふっ、別に構わないだろう。何せお前達を殺せば何も問題ない」

 今少し間があったな。多分、やべ言ったらまずい事を言ったけど誤魔化したな。

 あまり時間を掛けると、首都防衛の兵士達がここまで来るかもしれない。

 早めに倒さないとなと思っていると、斉藤君が前に出た。

「ここは俺に任せな」

「斉藤君?」

「相手は飛び道具だからな、俺も弓だから、相手に文句無しだ」

「でも」

 全員で攻めれば、簡単とは言わないけど倒せる筈だ。

 僕はそう思っても、西園寺君は違うようだ。

「ここは任せてもいいか? 斉藤」

「西園寺⁉ 何を言っている?」

 天城君は驚くが、斉藤君はサムズアップをした。

「任せろ」

「よし、俺達は先に行くぞ」

 西園寺君が駆けだすので、僕達も慌てて後を追う。

「行かせるか‼」

 コゲンツナが操るチャクラムは、僕達へと飛んで行く。

「させるか!」

 斉藤君は矢をつがえて放ち、チャクラムを砕いた。

 そうしている間に、西園寺君がコゲンツナに近付き剣を振るう。

「はぁっ⁉」

「なんの!」

 コゲンツナは飛んで、斬撃を躱した。その間に、僕達は階段を上がって行った。

 階段を上がって行き、少し進んだら僕達は足を止めた。

「・・・・・・ここまできたら大丈夫か」

「西園寺、どうして斉藤を残して先に行ったんだ⁉」

 天城君が西園寺君の襟首を掴み詰め寄る。

「そんなの簡単だ。ここで戦えば俺達は消耗する。だから、少しでも力を温存する為に先に進んだ」

「もし、それで斉藤が死んだらお前はどう責任を取るんだ⁉」

「その時は、生きて帰ったらあいつの両親に誠心誠意込めて謝罪するだけだ」

「お前っ」

「そこまでだ」

 遠山君が天城君を止めた。

「天城も抑えろ。西園寺も別にしたくてした訳では無い」

「・・・・・・・くっ」

 襟から手を放す天城君。

「西園寺、確認するが、これから先はあの四魔将というのが後三人居ると思われる。順番を決めないか?」

「遠山、お前・・・・・・」

「次は俺が行こう。次は猪田か、西園寺か、天城かは三人で決めてくれ」

「分かった」

「では、行くぞ」

 僕達は先に進みだした。

















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