表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
108/756

第82話 タカトーラル城 落城

 僕は立てた作戦が上手くいき、内心で安堵した。

 五日前の会議で話した事を思い出す。

『このタカトーラル城は二方面を包囲攻撃して、落城させましょう』

 僕の言葉を聞いて、将軍達は驚いた。

 それは当然だ。何せ城を完全に包囲するなんて、余程勝ちが決まった攻城戦じゃないとしない。

 なのにするのには理由があった。

『男爵、城を完全に包囲すれば退路が無くなり、敵の士気が上がり無用な被害が出ます』

 アルベルト将軍がそう言うと、その場に居る将軍達は皆同じ事を思っている顔をしている。

『そうですね。戦術で言えばしてはいけない事です』

『で、あれば』

『でも、敵の戦略が分かれば話は別です』

『何と‼ では、男爵は敵の意図が分かると仰せで?』

『その通りです。敵は言わば時間稼ぎをしているのです』

『時間稼ぎ?』

『敵が籠城しているのは、ここら辺の土地に住んでいた民を敵の首都に逃がすのが目的なのです』

『何故、そんな事が分かるのですか?』

『第一に落とした城の近くの村には民が居ない事です』

『戦の巻き添えを嫌がり、山か何処かに隠れたのではないのですか?』

『その可能性も考慮してエリザ軍団長に頼んで山とか人が隠れそうな所を探索して貰ったのですが、そこでも人が一人も居なかったそうです』

『ふむ、隠れる所に居ない以上、何処かに逃げたと考えるのは正しいですな』

『第二に、敵が籠城した事です』

『? 城に籠るのが何がいけないのですか?』

『ここは魔人族領です。なら、ここらの地理は敵の方が詳しい筈です』

『そうですな』

『焦土作戦をするなら、籠城して自分達が居る場所を教えるよりも、土地勘を活かして局地戦をした方がかなり効率的なのにしない』

『むっ⁉ 言われてみれば確かに』

『この二つ事のから、敵は民を首都に逃がす為の時間稼ぎをする為に籠城したと推測した次第です』

 僕の推測を聞いて、唸りながらも納得する将軍達。

『・・・・・・・敵の意図は分かったが、それで包囲攻撃をするのだ?』

『はい。総大将閣下、敵は最初から時間を稼ぐために籠城しているのです。ならば、こちらは速攻で城を落城させるのが良いと思ったからです』

『しかし、二方面から攻撃すればこちらの被害も増すであろう』

『単に、二方面から攻めるのではなく、時間差で攻撃するのです』

『時間差で攻撃だと?』

『はい。まずは東方面から攻城兵器で攻撃を仕掛けます。ですが、兵士達には城壁に取りつかせません。敵の床子弩などを破壊させて、敵の注意を東側に集中させます』

『・・・・・・成程。敵の目が東側に集中させている内に、北側から攻めるという事か』

『その通りです。付け加えるなら、北側を攻める軍には「姿隠し」の魔法を使い見つからないようにします。こうすれば、攻撃する時に突然、現れて敵は驚き隙が出来る筈です』

『ふむ。エルカス将軍、約二個軍団を『姿隠し」の魔法で隠せるか?』

『無論、可能です。我ら全エルフ族を動員すれば、それぐらい造作もありません』

『そうか。ふむ、見事な計略だ。ちなみに聞くが、この計略はそちの世界では何と言うのだ?』

『声東撃西の計と言います』

『東に声をあげて西から撃つか、面白い計略だ』

 だが、誰も何も言わなかった。

 そして、今作戦は成功して、北側の城壁には味方の兵士達が乗り込んで白兵戦をしている。

 籠城戦をしているので、兵士の数はそれ程多くないと思っていたが予想通りだ。

 フェアリーが僕達の所まで来た。北側の状況を知らせる伝令のようだ。

「北側の軍は城壁を乗り越え、城門を開き城内にへと侵入が成功。直ぐに東門の攻略に掛かるそうです」

「ご苦労様。こちらも攻城兵器で城門を攻撃すると伝えてくれるかな」

「かしこまりました」

 そう言って、フェアリーは飛び立って行った。

「アルベルト将軍、そろそろ攻城塔を進ませて下さい」

「はっ。では、ただちに」

 アルベルト将軍は剣を翳した。

「進軍せよ!」

 その号令で今度は太鼓が叩かれた。その音で東側に展開されていた軍が整然と並びだし、城門にへと進軍しだした。

 僕達はその進軍の様を見ながら、後方で待機していた。

 やがて、城壁に取りついた兵達が上へ上へと登り、城壁にたどり着き城壁を守ってる兵達と斬り合いを展開した。

 中には登り着いた途端、待ち構えていた兵達の攻撃にその身を貫かれ落下する兵も居るが、概ね順調に城壁を登っている。

 やがて、城壁の戦闘が止む。そこで歓声が上がる。

 そして城内へと侵入して行った。

「敵将は最後には降伏するかな?」

「無理でしょう。降伏するくらいなら、使者を魔法で追い返したりしません」

「そうですか」

 僕はミルチャさんと話していた。

 その後も、僕は待機していたら、場内から大きな歓声が上がった。

「この歓声、敵将を討ち取ったと思われます」

「でしょうね」

 僕達はそのまま報告を待った。

 そして伝令からの報告を聞くと、何と敵将は天城君が討ち取ったそうだ。

 場内の敵兵は一人も降伏せず皆討ち死にしたそうだ。

「この城は如何するのですか?」

「取りあえず、城内を綺麗にして首都への前線拠点になるでしょうね」

「そうですか」

 それを聞いて、まずは激しく攻撃した所為で損壊した城壁の損傷を調べる為、城壁へと向かった。



次話は別人視点です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ