第77話 侵攻前夜
微エロ表現あり
一番決めるのに時間が掛かると思われた総大将が直ぐに決まったので、後は侵攻ルートを決める事だけだ。それも直ぐに終わり、後の問題は武具、兵糧は全て人間族が責任を持つと言うと、会議に参加した人たちは諸手を上げて喜んだ。
戦をする時に一番厄介なのは、兵站などの後方支援だ。
兵站を疎かにすると戦をする際、大変な事になる。更に、兵站を守る為にそれなりの兵を守りに当てないといけない。
昔の中国で項籍という武将が居た。
一般的に言えば項羽の方で知られているけど、羽という名前は昔の中国の風習にあった字だ。
その将軍は戦に強かったが戦略に関してはてんで駄目だった。
兵站なんて考えずに戦うので、戦が終盤になってくると兵糧不足で撤退する事がたびたびあった。
最後には名将と名高い韓信将軍に負けて、自害した。
戦に勝つには兵站が重要だと良く分かる話だ。
まぁ、その兵站を預かる者としては大変の一言しか言えないけどね。
何でそんな事を言うのかと言うと簡単だ。
僕も後方支援部隊の仕事しているからだ。
バァボル陛下の命令で各種族の武具、兵糧を買い集めた。今度はそれをまずは何処に置いておくか、そしてその兵糧等をどのルートで輸送させるか、その輸送部隊にどれだけの護衛をつけるかとか色々と部隊の人達と話し合った。
人間族の領土を通る軍隊には、様々なルートに合わせた輸送手段が出来た。
だが、獣人族と鬼人族の領土には、侵攻ルートに合わせた輸送ルートを作りたくても、二つの種族の領土の地図が中々もらえなくて経路を作る事が出来なかった。
獣人族の方はライオル陛下が居るのでそれなりに直ぐに来たが、鬼人族の方は承諾の手紙を送ってから来るのが長かった。
お蔭でその地図が来るまでの間は、兵糧と武具の数の確認と点検を徹底的にやらされた。
何処かに傷かへこみがないか調べ、各種族の動員兵数に見合う武具は用意されているか、そうゆう事を延々とやらされた。
何でやらされたのかと言うと、後方支援部隊の中では僕しかその武具の使用方法や取り扱いしか知らないからだ。
そして地図がようやく届くと、その地図を見て経路を割り出して、侵攻ルートにあった経路をあてる。
不測の事態に備えて、別ルートを幾つか用意する。
ようやく、各方面から侵攻ルートにあった輸送ルートを導き出す事に成功した時には、各種族の軍が王都に到達して半月は経っていた。
その間、僕はロクに眠りがとれなかった。
今日ようやく明日の出陣に備えてという事で明日の出陣まで眠る事が出来た。
(や、やっと、ベッドで、ねむることが、できる)
かれこれ、最後にベッドで眠ったのはいつだったか思い出せない。
疲れる身体を引き摺るように歩きながら、ようやく自分の寝室に使っている部屋に着いた。
寝間着に着替えるの億劫になり、このまま眠ろうとベッドに倒れようとしたら、何故かベッドに山が二つ出来ていた。
恐らくだが、シーツの中に誰かが居るのだろうと思い、慎重にベッドに近付きシーツを剥いだ。
「わっ!」
「あら、ばれました?」
シーツの中には、エリザさんとセリーヌ王女が居た。
しかも、扇情的な下着の上にスケスケのネグリジェ着た状態で。
二人の体型に合わせた下着がとても刺激が強く。顔がにやけそうだった。
だが、直ぐに思い直して、二人に声を掛ける。
「あの、御二人はどうしてここにいるのでしょうか?」
「そ、それは、その、えっと、・・・・・・その」
エリザさんは顔を赤くしながら、自分の人差し指どおしをツンツン突いている。
「うふふ、エリちゃん可愛いわ」
セリーヌ王女はエリザさんの頬を面白そうに突っつく。
「あ、あうううう・・・・・・」
「すいません。話が進まなそうなので、セリーヌ王女様、話してくれませんか?」
「ふっふふ、そうですね。簡単に言えば、明日の出陣に際して、男が血が昂るでしょうから、それを鎮めようと来ましたの」
「はい⁉」
何を言っているんだ。この人?
「すいません。冗談はやめてください。明日に備えて早く寝たいので、出て行ってもらえますか?」
寝不足で気が立っている所為か、少し口調が荒めになったが、これでセリーヌ王女達も出て行くだろう。
しかし、そうならなかった。
「もう、こんな事を冗談でしませんわ。酷いお人。男爵様が、わたし達に手を付けないので、こうして恥を忍んで来たというのに」
セリーヌ王女はシーツで顔を隠しながら、泣いたフリをしている。
「・・・・・・・・・・・」
すっごい疑わしい目で見ていると、泣いたフリがしても効果がないのだと思い泣くフリを止めて、急に真面目な顔した。
「冗談ではなく、本当に夜伽に参りました」
はい? よとぎ。
よとぎって、どういう意味だっけ?
多分、よは夜だと思う。じゃあ、とぎはなんだ?
そう言えば、話し相手をするという意味で伽というのがあったな。伽は他にも女性が男性の意に従って共寝をする事とも書いてあったな。夜を付けると夜伽か。
セリーヌ王女が言っていたのは、こういう意味か。
・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
えっ? それって⁉
「え、ええええええ⁉」
思わず大声をあげてしまった。
驚く僕に、セリーヌ王女は腕を引っ張り自分達の方に倒れこませた。
「さぁ、今夜は良い夢を見れるように、たっぷりと奉仕してあげますわ」
「あ、あわわわ、わ、わたくしもが、がんばるわ、ノ、ノブヤスさま」
「ち、ちょっと、まって、こうゆうのはもっとお互いが分かりあってからでも」
「問答無用、ですわ♥」
「き、きゃあああああああっ⁉」
その夜、僕は大人の階段を昇った。
翌朝。
目を覚ますと、僕はエリザさんとセリーヌ王女に挟まれるように寝ていた。
僕が目覚めた事を察したのか、セリーヌ王女が顔を近づけて「昨日は楽しかったですね」と囁く。
何とも言えず、僕はシーツで顔を隠した。