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第76話 侵攻作戦会議

 僕はエリザさんが用意した服を着て部屋を出た。

 部屋を出ると、エリザさんに「付いてきなさい」と言われて付いて行ってみたら、何か王宮で暮らしていた時に使っていた食堂よりも広くて豪華な大部屋についた。

 ここは軍団長か貴族達が食事を取る部屋だそうだ。

 前に使っていた食堂は下士官か兵士達が使うそうだ。

「でも、ぼくがこの部屋を使っても良いのですか?」

「何を言っているの。貴方。仮にも男爵なのだから、これくらい部屋で食事するのは普通でしょうに」

「う~ん。そうですか」

 何度も王宮に来たのだが、ここの食堂でご飯を食べるのは初めてだ。

 なので、ちょっとドキドキしながら部屋に入った。

 その部屋は食堂と言うよりも、レストランみたいな造りだった。

 テーブルとの間に人が十分に歩く事が出来るくらいスペースを取ってある。

 そしてテーブルにはシミが一つもないクロスを掛けられている。

 僕達はその席の一つに座る。

 二人掛けの席のなので、僕達は対面に座る。

 出て来る料理が書いてあるメニューを王宮のメイドさんが持ってきた。

 何か、メイドさんがメニューを持ってくると秋葉原にあるメイドカフェみたいだなと思った。

 そう思いつつ、僕はメニューを見て今日のおすすめというのを頼んだ。

 エリザさんも同じ物を頼んだ。

 料理が来るまで、僕達は近況について話し合った。

「成程。魔法師団も複合魔法を使える者が増えたのですね」

「まぁね。でも、使える者は全体の一割ぐらいしかいないわ」

「時間を掛けて使えるようにした方が良いと思いますよ」

 というよりも、魔法師団全員が使えるようになるのは凄いを通り越して怖いな。

 そんな軍団がある国を攻める事なんて出来ないな。

「子豚、陛下に頼まれた事はどうなの?」

「そっちの方は、問題ありません」

 伝手を頼って商人達に話をして、武具兵糧を集める事は出来た。

 後は侵攻作戦に合わせてこの王都に着くようにすればいい。

 そうして話をしていると、料理がやってきた。

 食べていると、エリザさんが「ほ、ほら、美味しいわよ。あ~ん」とフォークに刺した物を僕の口に近付けて来た。

 同じ物を頼んだのに、何故そんな事をすると思いつつ僕は口を開いて食べた。

 そして食べているとメイドさんがやってきた。

「ターバクソン男爵様、エリゼヴィア様。お食事が済み次第、第一会議室に来るように言伝が来ました」

「そう、ありがとう」

 メイドさんは一礼して離れて行った。

 会議室に来いという事は、いよいよ会議が始まるのだろう。

(いよいよか、これで帰る手段が有るか無いか分かるな)

 三年経ったが、故郷に帰る事が出来る手段が分かるかもしれないと思うと少しだけワクワクした。


 僕はエリザさんとの食事を終えると、会議室に向かう。

 会議室に着くと、席は全て埋まっていないがそれなりの人で埋まっているという感じだった。

 何処に座ろうかなと思っていたら、エリザさんに腕を引っ張られて前の席に座った。

 勿論右隣にはエリザさんが座る。

 そのまま会議が始まるまで、雑談していると僕の左に誰かが座りだした。

 顔を向けると、そこにはエルカス将軍が居た。

「エルカス将軍、どうしてここに座るのですか?」

 亜人族が固まって座っている所があるのに、何で僕の隣に座るのだろうか?

「いえ、未来の娘と孫娘の婿を取られるのは、流石に問題だと思いまして」

 すいません。貴方の娘と孫娘の婿にはなれません。

 あんな小学生の見た目をした子達を嫁になんて、流石に無理だから。

「ふん。亜人族は遠慮と言う言葉を知らないようね。子豚は人間族の領主なのだから嫁を取るのは、人間族の者に決まっているでしょう(訳 わたくしの婚約者ですから、嫁を薦められるのは困ります)」

「ですが、ターバクソン男爵の才能を一種族だけ独占するのはまずいと思いますよ。なので、各種族ごとに嫁を取らせれば、不満もなくなるでしょう」

「そんな不満なんて、無視しても構わないでしょうに(訳 側室を取るのは良いのですが、それで不満が完全に無くなるとは思えないのですが?)」

「ふむ。そうかも知れませんが、しないよりも良いと思いますよ」

「むぅ・・・・・・・」

 エリザさんがむくれだした。これ以上話しを続けると、面倒な事になると思うので、ここは話題を転換しよう。

「ところで、亜人族軍はどれくらい率いてきたのですか?」

 ちょっと無理があるけど、ここは話題を転換させる。

「・・・・・・そうですね。エルフ軍三千、ダークエルフ軍二千五百、ドワーフ軍三千、ホビット軍千五百、デザートエルフ軍三千、スプリガン軍二千 フェアリー軍千の合計1万四千です」

 ホビットは成人でも子供位の大きさしかならない種族で、スプリガンは亜人族の中では珍しい巨人の種族で、フェアリーは手の平大の大きさしかなくて羽が生えた小人の種族だ。

 本国の防衛を考えてつつ、遠征の編成としてだったら十分な編成だ。

 他の種族も、大体一万から二万の援軍を率いていると聞いている。

 そう言えば、人間族の軍はどれくらいの兵を出すのだろう。

(各軍団の精鋭を選抜して、二万にまとめるつもりなのかな?)

 そこの所は今日の会議で分かるだろう。

 

 エルカス将軍とエリザさんと話していたら、まだ会議室に来ていなかった種族の将と王国の各軍団長が席に座る。

 そして、宰相が自分の定位置の場所に座るのを見て、始まるのが分かった。

 僕は襟を正し、王様を来るのを待った。

 やがて、バァボル陛下が現れて自分の席に座る。

 少し遅れて、アウラ王女も席に座った。

「まずは、儂の呼びかけでこの場に他種族の者達が集まった事に感謝しよう。一度は分裂した連合軍を再び作る事が出来るのも、ひとえにそなた達が仕える王の英断故だ。そちたちの口から、儂が感謝していたという事を伝えてもらいたい」

 そう言うと、少しざわつくが直ぐに収まった。

「さて、こうして集まったのだ。魔人族領の侵攻について話し合おうではないか」

「陛下、それを話す前に一つお伺いしたき事があります」

 会議室に参加している将の一人、あれはバハクート将軍だ。

 何を話すつもりだろうか?

「何か、バハクート将軍」

「此度の侵攻で魔人領に侵攻するは、我らとしても文句はない。だが、その前に聞いておきたい事がある。魔人族領に接していない我らについてはいかなる褒美を持って、此度の侵攻に報いるかそれを聞かせていただきたい」

 今の言葉を聞いて、魔人族領に領土を接していない天人族の人達と亜人族の人達が頷いた。

 勿論、エルカス将軍もだ。

 確かに、竜人族と天人族と亜人族の三つの種族の領土は、魔人族領に接していない。

 今言った三つの種族の王達は飛び地で支配などはしたくないようだ。

 そのつもりだったら、バハクート将軍はそんな事を言わないし、今の言葉で残りの二種族の人達は頷かない筈だ。

 バハクート将軍は、現竜人族の王『竜王』の従兄の子だと聞いている。所謂公子という奴だ。

 だから、竜王の考えを知っているのだろう。

(流石は竜王。飛び地の領地運営が大変なことが分かっているようだ)

 そう言う事は決めていないけど、どう返答するのかな?

「それについては、後で話そうと思ったが今この場で言うとしよう。魔人族領に接していない竜人族、天人族、亜人族については魔人族領に侵攻し、魔人族領の首都を陥落した暁には、王宮の宝物庫に所蔵されている財宝を二割づつ渡す事を約束しよう」

 王様、それはちょっと多くないですか? せめて少し多めに渡すと言いましょうよ。

 鬼人族と獣人族はどう思うだろうと見ると、レツゴウ将軍もライオル陛下は別に何とも思っていない顔をしている。

(ふむ。財宝よりも長期的に利益を得れる領土の方が旨味が多いと思っているのかな?)

 まぁ、そこはどう考えているか分からないので、何とも言えないな。

「分かりました。我らとしても褒美が決まっているのならもう何も申しません」

 そう言ってバハクート将軍は席に座る。

「話の腰が折れたが、最初に戻そう。我らは連合して魔人族領に侵攻する。それにあたって、諸々の侵攻ルート等を決める事とする」

 バァボル陛下がそう言うと、ライオル陛下が立ちあがった。

「侵攻ルート決めるよりも、まずはこの連合軍の総大将を決める事が先決だと思う。故に、まずは総大将を決めようではないか」

 ライオル陛下がそう言うと、エルカス将軍と亜人族の将軍達とレツゴウ将軍が「異議なし」と頷いた。

 これは何かあるなと思う。

(もしや、自分が総大将になろうと、前もって取り決めでもしたのかな?)

 そうなったらどうなるか想像できないな。

 ライオル陛下は戦には強いと聞いているけど、戦う所を見た事がないので分からない。

 出来れば指揮が上手い事を祈ろう。

「我は総大将は人間族の大将であるアウラ王女が適任だと思うので、総大将に推薦する」

「「異議なし」」

 ライオル陛下の言った後に、すかさず賛同の声をあげるエルカス将軍とレツゴウ将軍。

 まさか、アウラ王女を総大将に推薦するとは思わなくて驚いた。

 バァボル陛下もまさか自分の娘が推薦されるとは思わなくて、目を見開いて驚いている。

「天人族と竜人族の将達はどうだ?」

 そう声を掛けられた二人は、互いの顔を見て目で話している。

 話し終ったのか、お互い頷いた。

「我らの方も問題はありません」

「では、総大将はアウラ王女で決定だな」

 ライオル陛下が拍手したので、周りも拍手しだした。

 えっ⁉ こんなに簡単に総大将が決まって良いの?

 う~ん。何かもっと揉めると思ったのだけどな。

 総大将が決まった後も話し合いが続き、侵攻ルートとその進行上で落とすべき拠点を決めて会議は終わった。

 侵攻ルートについては、鬼人族の領土を通って攻めるのは鬼人族軍と竜人族軍。

 獣人族の領土を通り攻めるのは獣人族軍と天人族軍。

 人間族の領土を通って攻めるのは人間族軍と亜人族軍。

 という具合で分かれた。


 


 

















 

前日の宴の席にて、ライオルとエルカスとレツゴウは密かに密談していた。

ライオル「此度の侵攻で魔人族領に攻める際、侵攻ルートは大まかに決まっているだろう(モグモグ)

エルカス「ええ、そうですね。前回と同じく人間族領土を通るか、魔人族領に接している鬼人族の領土か獣人族の領土を通るか又はその三つの領土を通って侵攻するかですね。ング」

レツゴウ「だろうな。であれば、後は総大将は誰になるかだな。パク」

ライオル「我はやりたくないぞ。面倒だ|(モグモグ、ング)」

エルカス「わたしもです。前回の連合軍の総大将も有能とは言えませんでしたが、大軍の指揮能力に関しては、悪くない手腕を持っていました。そんな彼でも、指揮系統の伝達などに大変そうでしたからね」

レツゴウ「だよな。じゃあ、誰かに押し付けるしかないな誰に押し付けるべきか」

エルカス「前回の侵攻戦に参加した者達はしたくないと思うぜ。だから、ここは人間族に押し付けませんか?」

ライオルとレツゴウ「「ぬう?」」

エルカス「今回の侵攻戦で一番美味い所を得るのは、人間族ですから少しくらい押し付けても文句はないでしょう」

ライオル「ふむ。いいな」

レツゴウ「そうだな。それはいい案だ。もし、この侵攻戦が失敗したら、責任は総大将をした人間族にとらせればいい訳だしな」

エルカス「そうですね。良い案です。失敗したら、男爵を我が一族に迎える事で手を打てば、良いですしね。ング」

ライオル「おお、それは良い案だ。是非、我の娘の嫁にやりたいから、この侵攻戦は失敗して欲しいものだな。モグモグ」

レツゴウ「それは良い。女房の妹があいつを一目見て気に入ったそうだから、是非とも侵攻戦が失敗してほしいものだ。パク」

エルカス・レツゴウ・ライオル「「「・・・・・・・さっきから口にしているのは、何だ?」」」

三人は互いが口にしている物を指差して訊いてきた。

まず、答えたのはレツゴウだった。

レツゴウ「こてか? これは男爵の故郷で食べられた〝スシ〟という食べ物だ。まさか、ここでも食べられるとは思わなかった」

エルカス「スシ? 見た所、小さく握ったライスの上に魚の切り身が乗っているようにしか見えないのですが?」

ライオル「その魚は火が通ってるのか?」

レツゴウ「いや、生だ」

エルカス「生⁉ 魚を生で食べて腹を壊さないのですか⁉」

ライオル「生か? どれ一つ寄越せ」

レツゴウ「どうぞ。ああ、この黒いソースをつけて食べてくれ」

ライオルは言われた通りにスシを黒いソースにつけてから、口に入れた。

ライオル「パク・・・・・・・ンゴオオォオッ‼」

エルカス「陛下? 何か問題が?」

ライオル「こ、これは、う~~~ま~~~い~~~ぞ~~~~~‼‼」

余程美味しかったのか叫んだ。その声の大きさに周りに居る人達が驚いている。

そう叫んだライオル陛下の口からは何かの光線が出そうだった。

ライオル「生の魚なんぞ。初めて食べたが、こんなに甘くて美味い物とは知らなかったぞ‼ もう一つくれ‼」

レツゴウ「どうぞ。足りなかったら、誰かに取って来てもらうから好きなだけ取ってくれ」

ライオル「うむ。済まんなっ」

スシをバクバクと食べるライオル。

その姿を見ながら、レツゴウはエルカスが飲んでいる物を見る。

エルカス「これですか? これは男爵が開発してくれた酒です。ブランデーというものだそうです」

レツゴウ「ブランデー? 酒なんだよな?」

エルカス「ええ、何でも果実酒を蒸留したものだそうです」

レツゴウ「じょうりょう? 何だ。それ?」

エルカス「何でも、液体を蒸発をさせるとそれが空気になって、その空気を冷やすと液体になるそうです。その液体を酒にすると、蒸留酒となるそうです」

レツゴウ「? よく分らんが、酒のなんだよな?」

エルカス「ええ、そうです。これはドワーフ達が男爵から自分達が良く飲む火酒を蒸留してみたらどうだと言われて、ドワーフ達はその蒸留の方法を聞いて実際にしてみたら、ウイスキーという物が出来たそうです。ドワーフ達はその酒を「大賢者が我らにもたらした神の飲み物」と言って狂喜していたそうです。で、その蒸留の技術をワインにも出来ると言うのでしてみたら、ブランデーというのが出来たのです。わたし達エルフはこの酒を「神アム酒リタ」と呼んでいます」

レツゴウ「ふぅん、じゃあちょっと飲んでもいいか?」

エルカス「ええ、どうぞ」

ブランデーが入ったグラスを渡した。レツゴウはエルカスが口をつけていない部分を口つけて、グラスを傾ける。

レツゴウ「ング、・・・・・・こりゃ、甘いが結構酒精が強いな!」

エルカス「でしょう。これが美味しいのですよ。と言っても、貴方にはウイスキーの方が向いていると思いますよ」

レツゴウ「そうだな。じゃあ、そっちを貰ってくるか」

レツゴウは席を立ち、ウイスキーを貰いに行った。

エルカス「ライオル陛下、その骨付き肉は何ですか?」

ライオル「これはマンガス牛の肉だ。我はテリヤキソースが一番好みだ」

エルカス「テリヤキソース? 初めて聞くソースですね」

ライオル「男爵が開発したソースじゃ。食べてみるか?」

エルカス「ええ、では一つ」

エルカスはライオルからマンガス牛を貰い、骨の部分を持って食べる。

エルカス「アグ、・・・・・・これは、初めて食べますが美味しいですね」

そう言って、瞬く間に肉を食べだした。

エルカス「もう一つ頂いてもよろしいですか?」

ライオル「うむ。好きなだけ食べてもよいぞ」

ライオルからこれでもかとマンガス牛の肉を貰い、食べだすエルカス。

三人は腹が裂けそうなくらいに、飲食を楽しんだ。

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