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Cyber's ーサイバーズー  作者: 和葉瑠奈
第1章
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《如月 晴》

第2話です。ストーリーの始まりです!楽しみにしてくださいね!

「君は、もしここから出られたなら、何をしたい?」


「何をしたいって、突然言われてもな・・・ここから出れる気がしないしなぁー。思いつかねぇわ。」


「またあんたはそんな覇気のないこと言って、そんなんじゃいいお嫁さんもらえんよ?」


「お前は俺の母親かよ・・・じゃあお前はしたいことでもあるのかよ?」


「私はね、ーーーーーー。」






「ーー兄。ーー兄。晴兄ってば!」


誰かが俺を呼んでいる。それもかなりの声量で呼んでいる。頭がガンガンする。やめてくれ、俺はまだ眠たいんだ。


「いい加減に・・・起きろっ!!」


次の瞬間、俺は猛烈な痛みを伴って目が覚めた。


「ーーっ!痛い痛い痛い痛い!」


腕挫十字固うでひしぎじゅうじがため格闘技で最も有名で頻度多く極る関節技。相手の肘関節を逆に伸ばして極める、いわゆるアームロックの一種であり・・・


「いや、痛いって!もう起きてるから、腕が使えなくなっちゃうからぁぁぁぁ!」


「本当に起きたの?あやしいなっ!」


「痛い痛い!今なんで強めたの?ねえ、なんで!」


あまりの痛さにイントネーションがおかしくなる。涙目になりかけながら必死に聞くが返答はなく、


「本当に起きたみたいね。おはよ!晴兄!」


代わりに完璧な笑顔と、快活な朝の挨拶だけが返ってきた。


人間の腕を極めながら、満面の笑みでこっちを向いている女の子。お察しの通り、妹である。《如月 陽奈》(きさらぎ ひな)という。


天真爛漫を全身で表したかのような女の子なのだが、少々思考回路が焼き焦げてショートしているのかとおもうような行動をまるで息をするかのようにする。


今回の腕ひしぎのような技達を今までに何回極められてきたかは分からない。


未だ続く痛みと、妹のある種の恐さを秘めた笑顔にやられて、俺はただ苦笑いする他ない。全くもっと兄貴に優しくしてくれよ。


「おはよう、陽奈。」


「うん!おはよ!」


「そろそろ腕極めるのやめてもらっていいすかね?」


「うーん。どうしようかな~。」


「ねえ!よく見てもらえます?もう起きてますよね?」


「よろしい。」


やっと妹に解放してもらい、腕を取り戻すことに成功する。未だ続く痛みに耐えかねため息をこぼす。


「はぁ、どうすんだよこれ。痛み引かないんですけど。ちゃんとついてるよね、腕あるよね?」


「どこか痛いの?病院いく?」


「いや腕だろ!お前が技を極めた部位なんですけど!先に病院に行くべきはお前だ。真っ先に頭を診てもらえ。」


そんな俺の心からの願いも、妹様には届かない。


「ほら!朝ごはん食べに行こ!」


 そう言って妹が俺の部屋のカーテンを開き、窓を開ける。もう春だというのに冷たい風が入り、煌々と輝く朝日が室内に差す。一般に朝日を浴びるというのは生活リズムを整える上で大切とされているが、毎日徹夜で夜通しゲームをしているせいで生活リズムなんてすでに崩壊してしまっている。よって俺にとって朝の日差しは敵でしかない。


「はぁ、眠たい。」


まだ目覚めて数分だというのにもうすでに今日1日に気だるさを覚えていた。


俺の家《如月家》は二階建てで地下もある。地下は父親が使っていて、俺と陽奈はその家の二階にそれぞれ自分の個室を持っている。


俺の部屋から出て、階段を下り一階のリビングに行くと、テーブルの上に朝食が並んでいた。


いつもは和風の朝食なのだが、今日はトーストとハムエッグ、そしてサラダというなんとも簡単な料理だった。


「ふぁぁあ、『システムコール テレビオープン』」


まだ目覚めきっていない体になんとか脳から命令を下しテーブルまで運び、テレビを呼び出して朝食を食べ始める。


『ー市の今日の天気は晴れのち曇り。所により雨が降るでしょうー』


年々上昇していく科学技術の進歩に伴い、音声認識ソフトの識別の精度、AIの自己思考の成長など、その他数々の科学技術の結晶とも呼ぶべきもののクオリティーは飛躍的に向上した。


よって一般家庭においてもその技術は活用され、『システムコール』のような生活のある程度のことをサポートしてくれる便利コマンドなどが普及した。


「面白いのしてねぇな。」


最近は高性能な多機能ロボットの開発されたことで、機械的な大量生産が基本となり、生産系の職業における人の仕事というものが激減している。


したがって就職率の低下や失業率の上昇といった、作業を機械依存したことによるデメリットが増えてしまい、それを取り上げる番組が多く、内容も似たようなものになってしまっている。まったくアニメを見るしかないじゃないか。まぁそれで俺個人としては十分だが・・・


適当にテレビのチャンネルを変えていると、いつもなら一緒に朝食を食べるのに、珍しく今日は居ない両親の存在に気づいた。


「あれ?そういえば親父と母さんは?」


「お母さんは仕事で、お父さんは何か用事だって〜。」


目の前でトーストを食べながら、妹が答えた。凄いな、朝から5枚も食べるのか、そんなに食べて太ったりしないのだろうか。ここで間違っても「そんなに食べたら太るぞ?」なんていってはいけない。どんな事態になるか分かったもんじゃないからな。


そんな事はさておき、母さんの仕事はいつものことなのでともかく、あの暇人な親父の用事とはなんだろう。


「あと、お父さんが学校終わったら迎えに行くって。今日は、部活も休めって言ってたよ。」


「なんで迎え?」


「なんか晴兄にも用事があるみたい。」


「そうか。」


話しているうちに朝食も食べ終わり、テレビを片付けた。


それから学校指定の制服に着替える。俺の通っている学校は最近の学校では珍しくブレザーでは無く学ランだ。なのでネクタイなどはしないので楽な代わりに、少々暑苦しい気もする。


「「いってきます。」」


準備も終わり俺たちは、それぞれの学校へ向かった。


朝の目覚めは妹に腕ひしぎを極められ目覚めるという、大変特殊なものではあったが、


このようにして俺《如月 晴》(きらさぎ はる)の1日は始まる。











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