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ル〇ラはやっぱり偉大

×××



 王国北部のどこでモンスターが活性化してるんだと聞いたら、恐ろしいことにこの国でもっとも有名な山の名前をリッカが出しやがった。



 ラドルク山脈――俺たちが暮らすファランドル王国の中でも屈指の魔法資源埋蔵エリアだ。



「山の方に何かあったのか、モンスターが森まで下りて来てるらしいのよ」



「森ねえ……」



 俺の記憶だと、ラドルク山脈のふもとには魔法植物の宝庫であるラドルク樹林が広がっていたはずだ。ったく、よりによってあそこかよ。あの森にどんだけ貴重な植物が自生していると思ってんだ。



「モンスターの数は?」



「そこまで多くないわ。けど、領兵だと手が回らなくなっているのは確かね。まあ大丈夫よ、あんたなら何とかなるわ。今でこそニート予備軍だけど仮にも魔王討伐パーティーの一人だし」



「それが人にものを頼む態度か……」



 俺はジト目でリッカを見据えた。



 ここは俺の住処の外だ。久しぶりの太陽が目に優しくない。



 そんなふうにリッカと話していると、隣に突っ立っているミアが話しかけてくる。



「お師様、それでどうやって行くんですか?」



「動くのが面倒臭いから転移魔法陣使うぞ。ほら、もうちょいこっち来い」



 俺たちのそのやり取りを見て、リッカが物申してくる。



「ちょっと待ちなさいシグレ。まさかミアちゃんを連れていくつもり?」



「まあな。こいつは何だかんだ言って役に立つ」



「えへへ」



「弾除け――俺の助手としてな」



「あれ? お師様、今何か変なこと言いませんでした!?」



 ミアが驚いたような顔をしている。どうかしたのだろうか。



「……ま、あんたがいるなら大丈夫か。でもミアちゃんにケガさせたらぶっ殺すわよ」



 こいつミアのことを気に入りすぎたろう。



「わかったわかった。ほら、お前もさっさと行け」



 俺がおざなりに手を振ると、リッカは小さくため息を吐いた。



「はいはい。あ、私は王女様捜索のために王国の東の方に行ってるから、何かあったら連絡よろしく」



 どうやら捜索隊のスケジュールは東行きらしい。例の家出王女の目撃情報でもあったのだろうか。



「あいよ」



「っていうわけだから。またね、ミアちゃん」



「はい。さよならです」



 そう言って、あっさりとリッカは去っていった。帰りにさりげなく頭を撫でられて嬉しそうにしているミアが印象的だ。



「そんじゃ俺らも行くぞ。まったく気乗りしねーが」



 そう言いつつ、俺は足元に魔法陣の描かれた感応紙を置いた。



 この魔法陣には、行ったことのある場所にテレポートできる機能がある。ドラ〇エのル〇ラみたいなもんだ。まあ室内でも使えるけど。



 ちなみに貴重品。これの分の代金だけは手間賃として絶対にリッカからせしめてみせる。



 さて、この魔法陣を使うには移動先を思い浮かべる必要がある。



 俺が魔法陣に魔力を流しつつ記憶を漁っていると、ミアがこんなことを言ってきた。



「そういえばお師様、転移魔法陣を使うってことは行ったことあるんですよね? どんなところでしたか?」



「ただの森だ。危険なモンスターはほとんどいなくて、平和の象徴みたいな場所だったな」



 転移の準備を続けつつ、俺はそう答えた。



 ま、あの平和な森にそうそう大したことなんか起こるはずもない。せいぜい山の方からデカい芋虫みたいなモンスター、『グリーンワーム』あたりがやってきたくらいだろ。今の俺なら秒殺できる。



「そんじゃ行くぞ、【テレポート】」



 俺は気だるさを隠しもせずに魔法陣を起動させ――



×××



 ぱちぱちぱち、と薪が爆ぜるような音。



 どことなく焦げ臭いにおい。



 肌に届いてくる熱波。



「……」



「お、お、お師様! これまずいですよね? 山火事じゃないですか!」



「落ち着けバカ弟子。これは焼き畑農業だ。森を焼くことで効率よく農業をしているんだ」



「火が強すぎませんか!? 畑どころか焼野原しか残りませんよ!」



 森の入り口にやってきた俺たちを出迎えたのは、これでもかというほど景気よく燃え盛る木々だった。



 これがもうびっくりするような大火で、視界内にある森は松明のように燃えている。



 何だこの状況は。モンスターがどうとかそんな次元の話じゃないだろう。



 俺はとりあえず事情を知っていそうなやつに連絡してみた。



 遠距離連絡用の魔法陣を起動する。



『何よ』



「森がキャンプファイヤーみたいになってんだけど、何か心当たりとかあるか?」



『世の中には白昼夢という言葉があるわ。昨日はちゃんと寝たの?』



「寝たし、思っくそ現実の出来事だよ。ミアも同じもん見てるからな。何か心当たりはないのか?」



『んー、私にはよくわからないわね。悪いけど、近くの住民にでも聞いてもらえる?』



「ったく面倒くせーな……情報収集くらいちゃんとしとけっつーの。そんなんだからお前はいつまでたっても『脳筋』呼ばわりされるんだ」



『あら。あんたの魔法陣の研究のために、わざわざ国王のコネまで使って魔法素材の融通をしてあげているリッカさんに向かってなんてことを言うのかしら。残念だけど、魔法素材の援助は今日で打ち切りに――』



「すまん。すいません。わかったよ畜生。報酬は弾んでくれよ?」



『はいはい。国王に掛け合ってあげるわよ。それじゃ、忙しいから切るわね』



 プツッ。



「んじゃ、聞き込みでもしてみるか」



「なんでお二人はそんなに落ち着いてるんですか!? この状況を見て平然としていられるお二人の感性がわかりません!」



 ミアが愕然としたように言ってくる。



「いや、これくらいで動じてたら魔王討伐とかできないからな。森が燃えるとか海が割れるとか日常茶飯事だから」



「さ、さすが伝説のパーティー……」



 戦々恐々としている銀髪ロリはさておき、俺は周囲を見渡してみた。



 視界に見える範囲には人は――いた。



 木にもたれるようにして、ガタイのいいおっさんが気絶している。



 近づいてみると死んでこそいないがかなりダメージを負っているようだ。こいつに聞いてみるか。



「おい、起きろおっさん」



「う……」



「いいから起きろ」



「……あんたら、誰だ?」



 俺は目を覚ましたおっさんの前に魔法陣の刻まれた感応紙を突き付けた。



「ヒッ!?」



「俺たちのことはいいんだよ。いいから知ってることを全部話せ」



 怯えるおっさんに、俺は殺気を全開にして問いただす。



「お、お師様?」



 あたふたしているミアはとりあえず放置だ。



「し、知ってること……?」



「とぼけても無駄だ。どうせてめーらアレだろ? 山の奥の祠か何かをぶっ壊したりとかしたんだろ? そんで封印されてた凶暴なドラゴンを呼び覚ましたりしたんだろ? 旅してたとき、何回そんなんに巻き込まれたと思ってんだ。もうだいたいわかってんだよ。いいからさっさと白状しろ」



「は……はあっ!? 何の話だよ、まったく心当たりがねえぞ!」



 信用できんな。この世界の人間はテンプレが好きすぎる。旅をしていたときとか、俺たちが立ち寄った街や村では必ずといっていいほど事件が起きていたくらいだ。



 やれ遊んでいた最中に悪霊を封じていた要石を蹴飛ばしたとか、度胸試しで竜の住む洞窟に入っただとか。



 封印ってのは解いてイベントを起こすためじゃなく、危ないもんが出てこないようにしてあるということをいい加減知ってほしい。



「で、この火事の原因は何だ? 封印されてたドラゴンか? リッチーか? それとも誤作動した古代兵器か? 早いとこ吐いちまえよ」



「待て待て待て兄ちゃん! 誤解だ!」



「みんな最初はそう言うんだよな。そんで事態が手に負えなくなったあたりでようやく白状するんだ。あんたの尻ぬぐいをするこっちの身にもになれってんだ、なあ?」



「ちょ、落ち着け! 話を聞いてくれ!」



「お師様……お願いですから普通に話を聞いてください……」



 ミアが疲れたように言っていた。

やっぱり文字数制限を気にしなくていいのはやりやすいですね。


それはともかく、すでにエブリスタさんの方に追いつき始めているのはどうしたものか……

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