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28.幕間:みゃじとちーと銃撃戦

年末年始臨時更新小話。

「22.宮地と酒場と銃撃戦(前編)」~「25.宮地と酒場と銃撃戦(後編―2)」で、だらだら長くなったのでボツにしたシーン。

オチなし。戦闘の合間にくっちゃべってるだけです。


ふー、と長く息を吐いて、宮地が頬の汗を拭う。

「一掃指示が出てるみてーだな。しっかし……なんか多くねぇ?」

「おおい!」

千風が飛び跳ねながら賛同。

先ほどからひっきりなしに鳴り続ける端末を服の下に押し込みつつ、宮地は割れた窓の外をにらみつける。

「夜が明けちまうぞ」

漂ってくる火薬の臭いに、くんくんと鼻を鳴らす千風。

「うーん」

「なにか分かった?」と宮地。

「わっかんなーい」

「あらそ」

宮地の前を通り抜け、くふふ、と嬉しそうに頬を染めて千風が笑う。

「いいにおーい」

「……あー、そうだったっけか、お前好きだったっけか」

宮地が適当に言いながら部屋の奥に進んでいく。

「……吸いすぎるな、身体壊すぞ」

渋面の義維の忠告に、残念そうな顔をしながら布の中にもそもそと口元を埋める千風。


***


「――っが!!」

「みゃじ!」

爆風をまともに食らった宮地の身体が後方に吹っ飛ぶ。

「っ痛ぇなぁ!」

宮地は青筋を浮かべて飛び起きると、叫ぶ。

「んでドバトが山岳半分離戦術(ティレエクロペディカ)やらかすんだよ!?」

「んんー?」

そこへとことこと千風がよってきて、首をかしげる。

「みゃじー、さっきのひと、ちがうよ!」

「ああ?」

「はとさんじゃなくってー、んとねー、西のちっちゃいあるてぃーのひと!」

「はあ?」

と宮地が顔をしかめ、

「間違いないのか」

義維が千風に歩み寄る。

「ん。うーと、イセキ?」

「いや、そう簡単に移籍なんてしねぇ……はーん。たぶんハヤブサの仕掛けだな。ならこっちは外れだな。戻るぞ」

「う? どーして?」

「お前がここのテッペンだったとしたら、ヨソモノ、そんな奥の守りに使うか?」

「つかわない!」

「だろ? そーいうことだよ」

さっさと先に歩いていく宮地にほっぽらかされて、

「んん?」首をかしげる千風。

「帰ったら説明してやる」と義維。

「ん!」

「しっかし埃まみれだな。早いとこ外の空気が吸いてぇわ」

柱だけになった黒こげの建材に寄りかかり、まぎらわすようにジャケットの下から安煙草を取り出す宮地。カチカチとライターを鳴らす宮地に、

「宮地さん、それ止血し」

義維が言いかけ、

「んなもんいーからアイツら蹴散らして来いや」

「あーい!」

元気に答えて駆け出していく千風。

「……んなもん……」

千風を追いつつ、小さくつぶやく義維。


***


「ああ? ……それっぽいの見つけたあ?」

二人が宮地のところに戻ると、端末を取り出した宮地が、部下からの着信に怒鳴っていた。

「お前ら今どこよ? ……あんだよそっちかよ!」

通話を切った宮地が、ぱきぱきと足元の瓦礫を踏み鳴らしつつ二人のそばまで寄ってくる。

「ちっと戻るぞ、あっちの棟だそうだ」

「あい!」

「の前に、ちょっとションベン」

そう言って宮地が消えた入口の左右に、返事をした義維と千風が張り付く。

「おっと、ぎぃちゃんコレ持ってて」

宮地の手が突き出てきて、ぽいと放り投げられた小さな金属瓶を義維が受けとる。

「なんですか、これ」

「ちーの報酬、追加。整備用オイルとポリッシュだよ。そこそこ高ぇやつ。先に渡しとくわ」

刻印された軍需メーカーのラベルにうなずいて服の下に仕舞う義維に、付け足すように宮地が言う。

「あ、純度高ぇ分、引火しやすいから、やべぇときは放り出せよー」

「……はい」

宮地の鼻歌と足音が、タイル張りの部屋の奥に遠ざかる。

義維はそっと首を動かし、千風の横顔を見て問う。

「ちー、宮地さんって、こんなに強いのか」

「ん? みゃじ強いよ?」

「これでエンライのレベルなのか?」

「んん、んーとねぇ」

きょろりと千風の視線が左右に動き。

「みゃじ強いけど、おじちゃんたちとすぐケンカしちゃうからねぇ」

「あっこら、チクんなちー」

ズボンのジッパーを中途半端に上げた宮地が部屋から飛び出してくる。

「ふふ、この前、どかーんって! ……むぐ」

千風の口を片腕でわっしと押さえる宮地。

「…………どかーん?」と義維。

「なんでもねぇーよ」

宮地はしれっと流しながら、千風をつかんでいる手とは逆の手で垂れ下がっているベルトを締める。

おじちゃんとは星の重鎮たちのことだろうか、と義維が黙したまま考えていると。

「いーのよ、俺ぁ姐さんだけの味方だからよ。姐さん以外に引き立てられたって動くつもりもねぇし」

「えっとねぇ、みゃじねー、こじらせてる(・・・・・・)!」

ようやく宮地から開放された千風が飛び跳ねながら言う。

「は?」と義維。

「ってゆうんだってー、おじちゃんたちが!」

「はー? 俺のいねぇとこで何ちーに吹き込んでやがんだあいつら」

まぁ間違ってねぇけど! と宮地は機嫌よさそうにゲラゲラと笑った。


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