13.幕間:重量系ぎぃちゃん
1万PV&ブクマ50件御礼小話。
■連絡事項(2016/9/25)
以下の過去2話を少し修正しました。本編を読む際に大きな支障はありませんが、一応ご報告。
・「3.厨房制圧作戦」(突入時の銃の描写を変更)
・「7.車椅子の情報屋」(鳥巣を有名な情報屋に。ロイの記述を追加。)
ある日の昼下がり。
「どんどん重量系になってきますねぇ」
そう陣区が呟いて、義維の、筋肉に包まれた太い腕をぺしぺしと叩く。その腕にさっきからずっと抱かれたままの小さな少女が、鼻歌交じりに振り向いて、陣区を見上げてこてんと首を傾げた。
「じゅーりょーけー?」
「しょっちゅうお前んことだっこしてっから、ギイさん力持ちになったよなー、って話。明らかに体重増えてますよね?」
暇ならと厨房から頼まれた莢豌豆のスジ取りをこなしながら、義維がうなずく。
「無意味に出歩くことも、ケンカ買うこともなくなったしな」
「そうっすねー。いやー貫禄増すなぁ、かっくいーなぁ」
だらだとした雑談の合間にちゃっちゃと可食部とスジとを分けていく二人の、手元と顔を交互に眺めていた千風が突然はっとなって。
「ぎ、ぎぃちゃん、重い?」
義維はその不安そうな顔をじっと見返すと。
「いや?」
剥きかけの一個をボウルに戻すなり、ひょいと片腕で千風を軽々、頭の高さまで持ち上げてみせる。
「わう」
「ちょ、どんだけですか!」
三個同時に剥いていた豆をバキっとまとめて握り締めて、陣区が千風を指をさしてげらげら笑う。
「――おい、水届いたぞー! 暇なやつ運べー」
玄関から聞こえてきた声に、千風は身をよじって義維の手から抜け出すと、ぴょんと義維の膝から床に飛び降りて。
「ちーがお水運ぶ!」
「重いぞ」と義維。
「ちーが持つの!」
「はいはい、気ぃつけてな」
陣区から了承をもらって、両手を天に掲げた千風が意気揚々と玄関に向かう。
***
「ぎぃちゃん、おーもーいー」
2立ペットボトル一本を両腕に抱えた千風が顔を真っ赤にして、うんうんうめきながら廊下をよろよろと蛇行して進んでくる。待ち構えていた義維が、膝をついて丸ごとひょいと抱き上げた。宙に両足を揺らしながら運ばれていく千風が、自分の状況を理解するまで、まばたきを三回。
廊下の角から現れた人物に、ぱあっと表情を変える。
「あっりーだー、みてみて、おてつだい!」
「……ああ、うん?」
妙に誇らしげな千風に、首を傾げる鉾良。
「あのね、ぎぃちゃん重いからね、ちーが持ってるの!」
あぁと状況を理解した鉾良が、
「偉いな、ちー」
わずかに苦笑を浮かべながら、そわそわしている千風の頭を撫でてやる。
「んんん」
「ちーが率先してお手伝いするようになって、ギイさんは更に重量系への道を突き進みましたとさ、めでたしめでたし」
陣区が早口で言って、きょとんとする千風の死角から手を差し入れてペットボトルを支えている義維にニヤリと笑う。そしてその横を通り過ぎると、6本入りの一箱を「よっと」と抱えあげて廊下の先に向かう。
「物理の問題だね、ちーには数年早いなぁ」
その後ろで、ブーツを磨いていた宇村が小さくぼやいていた。




