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師匠!何してんですか!?  作者: 宇井琉尊
これまで、そしてこれから(過去編)
67/86

リースの場合(3)

私は朝早くに起きて、身体を動かしていた。

武器や治療薬が入っているポーチもしっかりと持ち、ノゾムおじ様がくれた私の為だけの武具もちゃんとつけている。

自惚れるつもりはないけど、ここまで本気の装備であれば、竜の一匹ぐらいは倒せる程だ。


「凄い装備ですね」


身体を動かしていると、アルトがやって来た。


「アルトはその恰好で行くつもり?」

「はい、これしかないので」


アルトの姿は、普段と変わらない普段着のままで、流石に治療薬とかが入っているポーチは持っていたけど、防具や武器は持っていなかった。


「予想通り起きていたな。ならすぐに向かうぞ」


流石に、何か言ってやろうと思ったけど、すぐにお父様が転移魔法で現れてしまい、そのままどこかに飛ばされてしまった。


気が付くと目の前には気配を消す能力があると言われた剣が地面に刺さっていた。

そして、辺りをキョロキョロと見渡しているアルトの姿。

アルトは、満足な装備が一つもない状態であるにも関わらず落ち着いて、状況を理解しようとしていた。


「あ~あ、聞こえるか?ここはとある山なんだが、そこから俺の所まで戻ってくるのが今回の修行の内容だ。制限時間は日没まで、途中の食事も現地調達だ。いわゆるサバイバルって奴だ」


そんな中、お父様の声だけが聞こえて来た。


「お父様、流石にアルトが可哀そうです。装備も満足にないのに・・」

「なら、お前が守ればいい。二人一緒に俺の所に来るのか、一人で向かうのかも全部自分達で決めろ」

「・・・分かりました」


そう言うと、お父様の声は聞こえなくなった。

多分、お父様は私にアルトを守らせて、アルトと接する時間を無理やり作ろうとしたのだ。

こういう状況なら、私は例え嫌っていた人でも守るという性格であるという事を利用されたのだ。


「ふぅ~」


取り敢えず、大きく深呼吸して頭の中を整理することにする。

周りは木々に囲まれていて、どこにいるのか分からない。

お父様の所まで辿りつかないといけないけど、まずはどこにお父様がいるのかを調べないといけない。

それと、アルトの事だ。

アルトを守りながら、知らない所を突破しないといけない状況に溜息をつきそうになる。


「リースさんどうしますか?取り敢えず、師匠が何処にいるのか調べないといけないと思うのですけど」

「そんなことは分かってます」


私は周りを見渡して、やっぱり木に登る事が一番だと思った。

ただ、問題が


「何だか、この剣の魔力が弱くなっているような」


人の気配を消す剣に流れている魔力が弱くなっていて、人の気配を消すという効力が落ちているようなのだ。

この状況で、私だけが木に登るとなるとアルトが危険になってしまう。


「仕方ないかな」


私は土や草の形を調べているアルトを抱きかかえて、そのまま上に跳ぶ


「うわぁぁ」


アルトが驚いて無我夢中という感じで抱き着いてくる。

まぁ、何も説明せずに抱きかかえたから仕方ないとはいえ、アルトの身体を意識してしまって少し顔が赤くなってしまう。

木の枝を利用して、上へ上へ登って行き辺りが見渡せるような大きな木を見つけたのでそっちの木の上まで登ることにした。

そして、そこで見た光景に私は驚いてしまった。


「ここはまさか・・・・魔大陸?」


今いる場所は山というか森みたいな感じであったが、その周りは赤い地面がずっと続いていた。

こんな場所は私達が住んでいる大陸にはなく、私もお父様から聞いた事しかなかった。

私達が住んでいる大陸よりも離れた小さな島で、魔族が住んでいるという事で魔大陸と呼ばれている所だ。

赤い地面という事でしか判断が出来ないけど、多分間違いじゃないと思う。


「間違いないのかもしれません。この木の葉っぱの形も見た事が無いものですし、何より魔力が強すぎます」


魔大陸のもう一つの特徴としては、自然に溢れている魔力の量が多いという事だ。

魔力を扱うことが出来る人にとっては問題はないけど、アルトみたいに普通の人だとその魔力が強すぎて体調を崩す人もいるのだ。

アルトは少しきつそうな表情をしているけど、動くことに関しては問題なさそうな感じだ。

私は、アルトの様子を気にしつつも周りを見渡して、お父様の居場所を探す。


「いた」

「あんな所に」


そして、なんとお父様の居場所を見つける事ができたのはアルトと同時であった。


「何で分かったの?」

「師匠の居場所ですか?そうですね・・・・何となく居そうな気がしたんですよ」


お父様がいた場所は、私達がいる所よりだいぶ離れた所で、何故か”頑張れよ”という旗を地面に突き刺しながらこちらに手を振っていた。


「師匠、何してんですかね?」

「・・・取り敢えず、このまま向かう・・・え」


知らない土地とはいえ、お父様の所までは木が生えているし、このまま木を伝っていけばすぐに辿り着くと思ったけど、私達が転移魔法で飛ばされた最初の場所から何か物音がしてそちらを向いてしまい、その光景に体が恐怖で動かなくなってしまった。


「魔竜・・・それも群れで」


隣にいたアルトも驚いた声を出していた。

魔竜

魔大陸にか生息していない竜の一種。

その特徴は二つあり、一つは魔力を吸収してしまう鱗を持っている事、そして、群れで生活することだ。

魔竜の鱗は魔力を吸収するため、武具の材料にはかなり人気があるが、その魔竜を討伐することは極めて困難なのだ。

魔法使いの魔法も、剣士であろうと魔力を使う。その魔力を吸収してしまう為、手も足も出ないのだ。

魔法使いの私としたら天敵以外何物でもなかった。


その時、魔竜の一匹がこちらを見たような気がした。

気配を消す剣の魔力よりも、私の魔力を感じたのだろう

魔竜は魔力を好む体質で、魔力が高い獲物を狙う習性がある。それも群れで


「GYAAAAA」


魔竜達が一斉にこちらの木に向かって走り出して来た。

魔竜は翼がないから飛んでは来れないが、邪魔な木々をなぎ倒しながら一直線に向かってきていた。


「リースさん、逃げますよ!」


恐怖で動けなかった私の手を握り、アルトはなんとそのまま木から飛び降りたのだ

私は、魔竜よりも身近に迫った死に慌てて魔力を練り、地面に衝突する前に空気の層をつくる事ができて、怪我なく地面に降りる事が出来た

けど


「いきなり危ないじゃない!」


流石に私はアルトに向かって怒鳴ってしまう。


「今はそれどころじゃありません。すぐに追ってきますよ」


それでもアルトは私の手を握って走り出す。

後ろからは、木が倒れる音が続いていて、その音を聞いて私は肩を竦めてしまう。

そして、その時私はアルトに手を引かれて走っているという事がどういう事なのか理解してしまった。


守られている


そう、私は魔竜の存在にパニックになり恐怖を抱いてしまい、私より弱いアルトに守って貰っていたのだ。

その事に私は愕然とした。

私の方がアルトより強いのに、何で私の前をアルトが走っているのか

本当なら逆な筈なのに


「ッ!私が走った方が速い」


悔しさもあり、慌ててアルトを抱きかかえて、そのままスピードを上げる。

だけど


「くっ、木が邪魔過ぎる」


アルトに手を引かれて走っている時よりも、早く走れているけど、木が邪魔で中々前に進むことが出来ないでいた。

しかも、子供と言っても人一人抱きかかえているのだ。体力もどんどん削られていく。


「リースさん。このままだと動けなくなります。一度休憩を!」

「そんな暇があるものですか!」


魔竜の群れがすぐ近くまで来て


「来ていない?」


後ろを確認すると、木が倒れる音がしていない事に気付いた。


「流石に、無理やり木を倒しながら移動することに疲れたのかもしれません」


立ち止まった私の腕から、少し恥ずかしそうにアルトが降りて私と同じように後ろを見た。

アルトの言うとおりに、まだ魔竜の気配はあるけど、木を無理やり倒してまで襲ってくると言う事はしなくなっていた。

私は逃げる事に精一杯になってしまい、その変化を感じる事が出来なかったのだ。


「今の内に少し休憩をしましょう」


アルトは地面に座り、持っていたポーチから水を取り出し飲み始めた。

その姿をみて、私も急激に喉が渇いた状態になってしまい、慌ててポーチから水を取り出し飲み始めた。

水を飲んで一息つくことが出来たら、身体がかなり疲れていることに気付いた。

私も、アルトと同じように地面に座り身体を休める事にした。


「どうして気付けたの」

「魔竜の事ですか?それともリースさんの体調のことですか?」


本当であれば静かにして、敵の襲撃に備えないといけないのに、アルトに尋ねていた

アルトはさっきからその辺に生えている草を気にしていた様子であったけど、私の方を向いてくれた


「どっちも」

「っと言われても、僕はリースさんに抱えられていたので、周りを気にする余裕があったんですよ。それだけです」


私が恐怖でパニックになり慌ててたのに比べて、アルトは周りを気にする余裕があったと言うのだ。

でも、それはおかしいと思う。

だって、私でも手足が出ない相手なのに、私よりも劣っているアルトが魔竜相手にそんな余裕がある筈がないのだ


「怖くなかったの?」

「怖かったですよ。リースさんがいなければ死んでいたと思います」

「なら、何で私より・・・」


落ち着いているのか

そう言おうとして、アルトの手が震えている事に気付いた。


「怖いですよ。魔竜なんて初めて見ました。死ぬかと思いました。でも死にたくなかった」

「じゃぁ何で」


私が震えている手を見ていた事に気付いたのか、アルトはその手を目の前に上げて自嘲気味に答えた


「・・・僕みたいな弱い人だとですね。魔竜であろうとゴブリンであろうとそう差はないのですよ。魔竜であってもゴブリンであっても僕は一人では倒せませんからね。だから、逃げる事に必死になるんですよ」


やっぱりアルトも怖いのだ。だけど、それでも必死になっている。ただそれだけだったのだ

私はゴブリンであったら、恐怖はしないだろう。何ともないように殲滅することだってするかもしれない。

だけど、私は自分の力が通らないかも知れない魔竜の存在に怯えてしまった。

私からみたらゴブリンは何てこともない存在だけど、アルトにとっては私が魔竜に感じている恐怖と一緒なのだと言う。

その話を聞いてやっとお父様が「あいつは弱いけど強い。ある事に関していえばもしかするとお前達や俺よりも強いかもしれないぞ」と言っていた意味を理解できた。

アルトは弱い。だけど、弱いからこそ、恐怖を乗り越えて必死になって動こうとしていた。

それは、魔法や剣術、体術などとは違う強さ。

心の強さ。

それがお父様が認めたことなのかも知れない。

少なくとも、私はその強さを認めてしまったのだ。

だから私は覚悟を決めた


「アルトはこのまま真っ直ぐお父様の所まで走って行って、私は魔竜をここで食い止めるから」

「でも、それだとリースさんが」

「正直に言えば、アルトは邪魔にしかならないのよ。私も魔竜と戦うのは初めてだからアルトを気にしながら戦うことなんて無理。だから」

「・・・分かりました」


少しきつく言い過ぎたかも知れないけど、事実だ。

アルトを庇いながら魔竜と戦う事なんて無理なのだ。

自分の実力が足りない事を自覚しているアルトには、こういえばいう通りにするしかない。

案の定、悔しそうに両手を握り締めながらアルトが離れて行った。


「グルグルルルル」


それから数分後、アルトの方に魔竜が行かないように、魔力を高めた状態でいると魔竜がゆっくりと現れた。


「今度は逃がさないつもり?」


しかも魔竜が現れたのは5匹で、私を囲むように現れたのだ。

身体が震えて、座り込みそうになるのを耐える。

アルトはゴブリンに囲まれても、自分から座り込むようなことはしなかった。

だから、私も耐える必要があるのだ


「魔竜と実際に戦った事は一度もない。それなのに、何もしていないのにただ怯えていたなんて、私の方こそお父様の娘として継承者として相応しくなかった。」


私がお父様に憧れていたのは、強いからだけじゃない。

何事にも挑んでいくその姿勢に憧れたのだ。

アルトはそんなお父様の姿に少しだけ似ていた。

弱くても、がむしゃらに、必死になって、周りから良くない視線を浴びながらも、それでも腐らずに、前に向かって進んでいる。

そのスピードは速くないけど、それでも少しずつ進んでいるのだ。

私は馬鹿だった。

アルトの事を何も知らないのに、知ろうとしなかったのに、私の中の基準だけで考えていた。

この魔竜のことだってそうだ。

魔法使いの天敵、勝てないかも知れない相手、その事だけで何も試さず諦めていた。

だから


「英雄が一人、井上誠の娘、リース・イノウエ。英雄の娘がどれ程のものか身体に刻み込んであげる!」

「GAAAAAA」


溜めていた魔力を一斉に開放してその膨大の魔力を一つの大きな剣の形に整える。

そして


「・・・まずは一匹」


そのまま、目の前の魔竜に飛ばし、その剣がそのまま魔竜に突き刺さる。

魔竜が魔力を吸収するなら、吸収できない程の魔力を使って攻撃するしかない。

倒れる魔竜を見ながら、果たして自分の魔力が保つのが先か、魔竜を倒すのが先か心配になりながらも私は逃げないで立ち向かう事にしたのだ。


「はぁはぁはぁはぁ」


もう少しも体を動かすことが出来なかった。

私の周りには、死体となった魔竜が5匹横たわっていた。

魔竜を五匹。それだけを倒すために、私の魔力はほぼ空の状態になっていた。

それでも


「勝った・・・勝てた」


何度も無理だと思った。諦めようとした。だけど、その度に、アルトの姿がちらつき、負ける訳にはいかないと思い頑張った。

やり遂げた気持ちがあり、嬉しい気持ちもあるが


「ぐすっ・・・・う・・・うあわぁぁん!」


怖かった。物凄く怖かったのだ。

私は、後から後から出てくる涙を抑える事が出来ずに、声を上げて泣いてしまう。


「生きてる!・・・私生き残れた・・・」


生きているという事が、これ程素晴らしいものだと初めて思った。


「まさか、その歳で魔竜を倒すとはな。お前達二人には今日は驚かされてばかりだ」

「お父様!」


慌てて起き上がろうとするけど、身体が言う事を聞かない。


「いい、今日の修行は終わりだ。今はゆっくり休め」

「はい。そう言えばアルトは無事に辿り着きましたか?」


私の質問にお父様は複雑そうな顔をしながら、背負っていた人を私の横に寝かせた


「アルト!どうして、こんなにボロボロに」


お父様はボロボロな姿の私とアルトに向かって治癒魔法を掛けてくれた。


「魔竜の群れは15匹だった。リースの所に5匹向かい。残りはどこに行ったと思う?」

「まさか!」


いや、ボロボロの姿のアルトの姿を見ると残りの魔竜は全てアルトの方に向かったのだろう。

だけど、どうして

魔竜は魔力が高い獲物を狙う習性がある。

アルトより私の方が魔力が高い筈だし、アルトが逃げやすいように敢えて魔力を高めてもいた。

なのに


「今日の修行の模範的回答をアルトは見つけたんだよ。流石の俺も娘に魔竜退治をさせようなんて思っていないさ」

「模範解答ですか?」

「そうだ。答えはこれだ」


お父様はそう言いながら、近くにあった草を手に取った。

その草は、アルトが何度も気にしていた草だった。


「その草が?」

「これはな、本来ならこの大陸にない植物なんだよ。俺が昨日一日かけて植えたんだ。そしてこいつには、俺の魔力を流し込んでいたんだ。一つ一つの草を取っても変化はないが、それを束ねて合わせると」


お父様が草をどんどんと集め始め、草がある一定の量を超えた瞬間に莫大な魔力が発生した。


「これは・・・」

「見たまんまだな。魔力を溜めて放出する性質がある草を利用した、一種のトラップを作ったんだ。本来なら、こいつを使い魔竜達を誘き寄せて、その間に俺の所にお前達が向かうというシナリオだったんだよ。なのにリースは力技で魔竜を倒すし、アルトはこのトラップだけではリースの魔力に対抗出来ないと判断して、一人で森の中を駆け回るしで俺も大変だったんだぞ」

「アルトは逃げなかったのですか」

「今のお前なら分かるだろ?こいつが素直に逃げると思うか?」

「思いません」

「だろ」


お父様は、自分が褒められたように笑顔になった。

私は寝ているアルトの方に手を伸ばして、アルトが生きている事にホッとしてそのまま意識が遠くなっていくのを感じた。


「今は休め」


お父様のその言葉を聞いて、私は安心して意識を手放した。


それから数日

お父様は私達を危険に合わせたと言って、お母様から怒られた。

お母様だけじゃなく、サヤ達も加わってお父様もタジタジな様子だった。

私とアルトもお母様から怒られてしまい、今も絶対安静だと言ってベッドに横になっている。


「お母様、もう大丈夫だから」

「今日一日までよ。しっかりと休みなさい」


お母様はそう言って、私の近くまで来る。

お母様の手がおでこに触れて、少し冷たい手が気持ち良かった


「・・・お母様もアルトの強さに気付けたのですか?」


大丈夫そうねとお母様は、私の部屋から出て行こうとしていたけど、気が付けば私はお母様にそう尋ねていた。


「強さ?あぁ、あの人が言っている事ね。私は逆よ」

「逆?」

「アルト君が頑張っている事は気付いていたわよ?だけど、男の子だしそんなものかなと思っていたけど・・・・」


お母様はそのまま少し黙ってしまい


「それも、貴女が気付いてあげなさい」


そう言って、部屋から出て行ってしまった。


「逆?」


アルトの強さのことを聞いて答えが逆。

という事は、強いの反対のことだから


「弱さ?」


一体どういうことなのだろう。

やっとお父様がいうアルトの強さに気付けたのに、今度はお母様がアルトの弱さを気付いてあげてと言う。

やっとすっきりした頭の中がまた混乱してしまう。


”ちょっと、何でここにいるんですか!”

”・・・・お見舞い”

”サヤ、お見舞いにきてアル君のベッドに潜り込もうとしてはダメよ。ミヤもアヤもね”

”・・・・そう言いつつ、アルトに一番近いのはマリル”

”そ、そうです!私も兄さんの近くに”

”アヤはダメ!その胸でアルお兄様を誘惑するつもりでしょ!”

”ミヤ何てことを言うのよ!それに私はそんなつもりは”

”そんな格好して何を言っているのかしら”

”もう、マリルさんまで!”


っていうのに、隣の部屋から聞こえてくるこんな声に段々と苛ついてくる


「・・・文句を言いに行くだけだから」


決して、寂しいとかそういう理由じゃない・・・筈

アルトが鼻の下を伸ばしながら、皆と楽しそうにしている姿を想像した訳でもない・・・筈

そう、ただ煩いから文句を言いに行くだけなのだ

私は、お母様から言われたアルトの弱さの事を知る為という言い訳を胸に隣の部屋に突入していくのだ。


「貴女達、少し煩いわよ!」


私が現れた事で、またしてもギャーギャー騒がしくなってしまうが、それが今は心地よかった。

サヤ、ミヤ、アヤ、マリルとは最近はこんなに騒がしくすることはなかった。

でも、そこにアルトが加わり、昔みたい騒ぐことが出来る。

だから、まぁ


「少しは、認めてあげる」


そう小さく呟いて、煩いとお母様が怒鳴り込んでくるまで皆と騒いだのであった。

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