秘密の女子会の始まり
学園対抗戦から数日が経った。
未だに僕に対する視線は厳しい物があるけど、かなり少なくなった。
納得したというよりも、師匠や学園長の言葉から自分の実力を高める為にそれどころじゃなくなったみたいだ。
今、学園は対抗戦前よりも皆意欲的に授業に臨んでいる姿が多くみられるようになっていた。
「ミリア、俺の所に来いよ」
「お断りしますわ」
・・・ある一部を除いてだけど
一番僕の事を目の敵にしていた神崎武雄が、学園対抗戦が終わった直後からミリアにご執心で僕に対する嫌がらせがぴたりと止んだのだ。
確か対抗戦では、直接二人が会う事はなかったと思うのだけど、神崎武雄が少し顔を赤くして少し緊張しながら毎日のようにミリアに声を掛ける姿をみると本当に惚れたのだと思ってしまう。
まぁそれをミリアは表情を一切変えずにバッサリと断っている訳なんだけど・・・
「何度も言っていますが。私は貴方の事は好きではありませんし、貴方には後ろの子達がいるのでしょう?何故私に声を掛けてくるのか不思議でしょうがないのですが?」
「いや、あいつらはそういった関係ではなくてだな・・・」
その言葉に彼の後ろに立っていた対抗戦のチームメイトの女子生徒達が悲しそうに顔を伏せて、トボトボと去ってしまった。
ミリアは慌てて弁解しようとしている彼の姿を見ずに、その去って行く女子生徒達の姿をみて、気の所為かもしれないけど少し笑ったような気がした。
・・・・気のせいだと良いなぁ
そのまま彼は授業が始まるギリギリまでミリアに話しかけていたが、ミリアは女子生徒達が去ってからは興味を無くしたみたいにそっぽを向いて相手にしていなかった。
彼は自分の教室に帰る時にようやく、付いて来てくれた女子生徒達がいない事に気が付いて首を傾げていた。
「彼かなり鬱陶しいですわね。貴方に対する態度でおおよそは分かっていたつもりでしたが」
「・・・・本当に何もしていないの?」
「していませんわよ。彼は色々な物が見えるのですから、自分に異常があればすぐに気づく筈ですわよね?」
「・・・・・・・」
そう言われると何も言えない訳で
でも、凄く怪しいのだ。
今までなら、僕が尋ねた事に対しても素っ気なく答えていたのに、今回の事に関してはちゃんと答えてくれるし
彼自身も今までならミリアの傍にいた僕に対して何かしら言って来た筈なのに、ミリアにしか興味がないみたいに接している。
”魅了”
という言葉が思い付くが、仮に彼自身が気付かなかったとしても、もう一人の異世界勇者であるリリアさんが気付かない筈がないのだ。
「ほら、いい加減泣くのを止めなさい」
「・・・・そうは・・っ・・言われても・・・」
そのもう一人の異世界勇者のリリアさんは、神崎武雄に付いて来て立ち去った女子生徒達を慰めていた。
「そうですよ。男性何てこの世に沢山いるのですから、異世界勇者様?でしたか?そんな彼に一生付いて行かないといけない訳でもないのですし、他の人も見てみればいいじゃないですか」
「マイさん、お願いですから黙っていてくださいね。話がややこしくなりますから」
「何てことを言うのですか!ご主人様の友人の為に不肖ながらこのマイが人肌脱ごうとしているのに!」
「でも、彼らの事良く知らないでしょ?」
「はい、全く知りません。興味がなかったので」
はっきりと言い切るマイさんの姿に僕が肩を落としていると、その姿を見ていたリリアさんが少し笑っていた。
対抗戦の後に僕以外の皆で話し合って決めたみたいで、銅のカギをリリアさんにだけ渡したのだ。
勿論、神崎武雄や他の人には秘密にするという条件であったのだけど
「ごめんなさいね。流石に彼女らの今の姿を見せる訳にはいかなくて」
「まぁそれは良いのですが、なぜここなのですか?知っていると思いますが、騒がしいですよ?」
確かに、異世界勇者の従者?仲間の彼女らの泣いている姿を他の人に見られると、何事かと大騒ぎになってしまう可能性がある。
だから、誰にも見つからず、落ち着いた場所に連れて行くのは分かるのだが、
正直、ここは誰にも見つからないが落ち着いた場所とは言えないと思うのだ。
「家にはマイがいますからね」
「何と!?それは聞き捨てなりませんねコキさん!」
「・・・一歩後ろに下がって、見守るという事が出来ないのですか」
「無理です!少なくともご主人様の前では私はいつも全力疾走をモットーにしていますから!」
「ご主人様の前だからこそしっかりしなくては」
「ではコキさんは、ご主人様の前とそれ以外で態度を変えるのですか?」
「そうは言っていませんが・・」
マイさんとコキさんが二人でじゃれ合っている姿をみて、泣いていた女子生徒達はきょとんとした表情をしていた。
「ね、成功でしょ?」
「成功何ですかね?確かに泣き止んではいますが・・・」
確かに、女子生徒達は泣き止んではいるが何だか複雑な気持ちになってしまう。
それに
「どうして僕を呼んだのですか?こういう事なら僕じゃなくてリースとかの方が良いと思うのですけど」
リリアさんはこの幻想空間に行く前に、リース達に約束を破る事そして僕を連れて行くことを話していたのだ。
でも、どう考えても男である僕がこの場にいる事はダメな様な気がするのだけど
「本当ならそうなんだけど、別の主従の関係もあるって見せたかったし、何よりアルト君がいないとあの二人凄く静かなのよ」
「コキさんは兎も角マイさんもですか?」
「そ、コキさんの方はまだ小さいから可愛らしいのだけど、マイさんの方はじっと傍に立たれていると変に緊張するのよね。多分、アルト君がいる時のやり取りを知っているから余計そう感じるのだと思うのだけど」
「そうなんですか?僕がいる時は大抵こんな感じですよ?」
僕が幻想空間に来る時は、殆どマイさんが騒いでコキさんが止めようとして結局巻き込まれているという事が多い。
だから、二人が静かという姿があまり想像できない。
「良いじゃない、凄く楽しそうで。現にその雰囲気に釣られて泣き止んだ子達もいるのだから」
確かに、落ち込んでいる時は重い雰囲気になりやすいし、それを吹き飛ばすぐらい衝撃があった方が良いのかもしれない
「あ、ご主人様もうお時間じゃないですか?」
「そうなの?まだリース達が来ていないけど?」
じゃれ合っていたマイさんがコキさんの頭を押さえながら声を掛けてきた。
今日は久しぶりに師匠と遠出の修行をすることになっていて、ケント達もついてくる。
だけど、リース達は行かないらしくて僕と入れ替わりに、こっちに来ることになっていた。
「手をどけて下さい。これ以上小さくなったらどうするのですか」
「ご主人様に抱っこして貰えばいいじゃないですか」
「・・・・・・・」
そんな縋ったような目で見ないで欲しい。
身長が伸びない事を慰めれば良いのか、それともマイさんを叱れば良いのか、またまたコキさんを抱っこすればいいのか。何て言えば良いのか分からない。
そんなことを考えていたら、空間の歪みみたいのを感じて、銀と銅の扉が何枚か出てきてそこからリース達が現れた
「来たね」
「じゃぁ、僕はそろそろ行きます」
「まだ、私の扉は家に繋がっているから使っていいよ」
現れたリースがそう言ってくれたので、言葉に甘えることにした。
「貴女達も帰りなさい。悲しいのは分かるけど、それを表に出さない。貴女達も私達の仲間として見られているのだからね」
「はい。申し訳ありませんでした」
「それと、今回の事は絶対に言ってはダメよ。それがあの人でもよ。この人達の好意を裏切ったら私が許さないからね」
「はい」
そう言って、彼女達はリリアさんが作った扉から出て行った。
「じゃぁアルトも頑張ってね」
「うん、頑張るよ」
リースにそう言われて少し元気になって、扉を潜って
「・・・・・・ここリースの部屋じゃん」
慌てて部屋を飛び出すのであった。
おまけ
「では皆様お席にお座り下さい」
「・・本当にアルト君がいる時といない時で態度が真逆だよねこの人」
「そうでもないわよ?シェルムがいる時なんか何故か服を脱がしたがるしね」
「マリルさん止めて下さい。恥ずかしいのですよ。しかも、それをアル様に見せようとするし」
「成程、しっかりと空気を読んでいるっと、なら今回はかなり真面目な事なのかな?」
「真面目かどうかは分かりませんが、リリアさんも不思議に思っていると思いますが、アルトと私達の関係のことです」
「英雄の弟子と言うのは聞いたけど・・・そういう話ではなさそうね」
「はい、アルトがお父様の弟子であるという事ではなく、本当に私達個人の関係の事です」
「要するに、”魅了されし者”になった理由ってこと?惚気?」
「惚気になるのかもしれませんが、私達がアルトに拘る理由、アルトの過去に興味はありませんか?」
「・・・・そう言われるとかなり気になるけど・・・何で私に?シェルムさんやファミルさん、クーナやミリアさんに説明するのは分かるけど・・・そっちのお姉さんをみてからナインが凄く縮こまっているのも気になるけど」
「いやぁ~私達の事は気にしなくていいっすよ?私も今回は話を聞きに来ただけっすから、ね?」
「あ、はい。そうします」
「それに、アルトの事知りたくないっすか?色々な手段で調べようとしているみたいっすけど?」
「成程、貴女がナインの・・・」
「リリアさんがアルトの事を取り込もうとしているのは知っています。それが、どういった感情なのかは分かりませんが、私達のアルトの想いを知ってもらおうと思います」
「それで、私が諦めるとでも?」
「いいえ、リリアさんも一緒にどうですかと誘っているのです」
「・・・・正気?」
「普通の人から見れば正気ではないのかもしれません。ですが、私達は譲るつもりはありません。なら、皆で一緒の方が良いじゃないですか。それとも、異世界勇者対英雄の子供ってしますか?誰も得をしないですよ」
「そこじゃない。そこじゃなくて、リースはさっきから私が彼に興味以上の感情を持っているかのように話しているけど、私は別に」
「お父様曰く、好きな人の事をあれこれ無断で調べて追いかけ回す人をストーカーと言うらしいのですよ?」
「だから、私は別に・・・それにストーカーって」
「違うのですか?リリアさんがしていることをお父様に尋ねたら、「まるで、ストーカーじゃないか」って言っていましたけど」
「よし、そのおじさんは後で殴る」
「では、どうしましょうか?帰りますか?私達は予定通りにシェルム達に話すだけですが」
「・・・・そこまで言われたら、かなり気になるけど・・・正直、アルト君が来てから貴女達が活き活きし始めて気にはなっていたからね」
「では」
「うん、聞かせて。貴女達がアルト君と何があったのか、貴女達がアルト君にそこまで拘る理由を聞かせて下さい」
「頭を上げて下さい。そんな大袈裟な話でもないですし、ですが」
「分かってる。この事は絶対に誰にも言わない。異世界勇者として、なにより御堂リリア個人として約束する」
「分かりました」
「では、皆様こちらを被って下さい」
「何このヘルメットみたいなやつ」
「名付けて”思い出共有君”です。話だけよりも、実際に体験した方が分かりやすいと思いまして」
「何その超技術!?それに、体験するって!アルト君にべた惚れのこの人達の想い出を共有とか!これって一種の洗脳!」
「それではレッツゴー!」
「何勝手にってこれ取れない!」




