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師匠!何してんですか!?  作者: 宇井琉尊
学園対抗戦(異世界勇者二人)
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修行風景2

「え?水龍の力?」

「うん・・・・あの人に連れて行かれてそのまま・・・・私も何が何だか分からなかったのよね」


頬を掻いて、たははと笑うクーナの姿は普段とかなり変わっていた。

茶色い短い髪が、鮮やかな青色になり膝ぐらいまで長くなり、頭の所には角が生えていた。

師匠に連れて行かれて、久しぶりに会った時にみせられた地面を陥没させる程の力。

以前のクーナにはそんな力はなかった。

魅了騒ぎから一緒に修行をするようになったクーナに聞いてみたら、水龍の力だと言うのだ


「元々私の能力は、憑依能力。心を通わせた動物の魂を取り込んで、その力を発揮する力。今までは、昔飼っていた猫や犬の力しかなかったから強くはなかったのだけど・・・」


そう言って、髪の色が戻り角もなくなると代わりに猫の耳と尻尾が出てきた。


「生身より多少は運動能力は上がるけど、魔物を倒せる程ではなくて、精々聴覚や嗅覚が敏感になるぐらいの力しかなかったの」


その姿は、ファルと一緒に入った時にみたクーナの姿と似ていて


「・・・気付いた?猫耳のカチューシャなんかはこれを再現してもらっているの」


耳と尻尾を恥ずかしそうに震わせているクーナ。

そのクーナの話によると、強くなることに精一杯になっていた時に無理して格上の魔物と戦い、瀕死の状態になってしまったこともあるというのだ。

憑依能力は、保管している魂が強ければ強い程、術者にも影響を与える。

だからクーナは強い動物や魔物を探しては倒してを繰り返していたみたいだ。


「でも、倒した後から魂を回収しても全然力を発揮させることが出来なかった」


そこでやっと気付けたのだと言う。

唯一力を発揮できていた猫と犬の力は、クーナが小さい頃から一緒に過ごした家族の一員で、クーナも二匹を可愛がったし、二匹もクーナに懐いていた。

それに気付いて、無理をして瀕死になったこともあってクーナはそれ以降、魂の回収をしてこなかった。

野生の動物や魔物と心を通わせる事なんか無理だし、魂の回収と言うのは、魂と肉体が離れるという事で


「せっかく仲良くなった相手が死んでしまうって結構キツイ事なのよ」


因みに、クーナは猫犬の二匹が死んだ時は三日以上泣き続けたらしい

そういう、クーナだからこそそう言った能力が発現したのかもしれない。

そして、そういう能力を何故か師匠が知っていて、ルックさん達が困っていた水龍の所に連れて行ったのだという。


「私達が着いた時には、その水龍は瀕死の状態だったのよ。何かに汚染されたように黒い嫌な雰囲気の闇に包まれていて、凄く苦しそうだった」


後から聞いた話だけど、その水龍はこの大陸と向こうの大陸の間の海に生息している龍で、その龍が苦しくて暴れまわっていたから船が出せない状態だったらしいのだ。


「いきなり頭の中に水龍の声が聞こえてきて、私に一つの条件を伝えてきたの。”我が子を殺し同族を闇に染めた魔王の子を探せ、そして我の無念を・・・”水龍の心は復讐心で一杯だった。私もその闇に飲み込まれそうになった時にチッタさんが助けてくれたの」


師匠が何かして僕と離れてクーナと一緒にいたチッタが、黒龍の姿に戻り水龍を殴って何かしら話をした後、何故かその水龍が力を貸してくれる事になり、魂をクーナが膨大の魔力や肉体をチッタが譲り受けたらしい。


「だから、チッタも少し成長したんだ」

「あくまで緊急用の魔力と肉体です。魔力が足りなくて主を守れないのは嫌ですから」


小さい黒龍の姿で急に出てきたチッタは、そう言いながら僕の肩にのり尻尾を僕の首に巻き付けてきた


「ごめんね、僕の魔力が少ないから」

「いえ!そう言った意味では・・・」


謝罪を込めて頭を掻いてやると、慌てた様子のチッタが次第に大人しくなってきた。

魔力の量を増やす事は可能だ。

毎日、一定の魔力負荷を与え続ければ良い。

だから、一日二日で急激に魔力量が増えるという事はないのだ。

筋力や持久力が増えるように、徐々に増えていくのだ。

ただ、チッタの能力を十分に発揮できるまでの魔力量がいつになったら満たされるのかはまだ分からないのだけど


「アルお兄様休憩は終わりましたか?」

「うん、大分休めたよ」


心配そうな表情のミヤを安心させるように、腰掛けていた地面から勢いよく立ち上がる。


「では、主また会いましょう」

「私も、早くこの力を制御できるようにしないと・・・」


チッタの姿が消えて、一緒に休憩していたクーナも立ち上がった。

別に修行をサボっていた訳ではなく、休憩していたのだ。

クーナは師匠達から水龍の力の制御を学び、僕は


「でも・・・私が張り切り過ぎたから」

「ははは、確かに疲れるけど、でも僕も久しぶりで楽しいよ」

「・・・本当に大丈夫ですか?」

「大丈夫、大丈夫。次こそは負けないぞ」


まだ心配そうにしているミヤの頭を軽く撫でて、歩き出す。


「それに、二人とも待っているみたいだしね」


その先には、サヤとアヤの二人が待っていた。

何をしているのかと言えば、簡単に言えば鬼ごっこだ。

ただし、逃げる役は僕一人で鬼役は、人族より身体能力に優れていると言われる獣人三姉妹だ。

しかも、魔法も可となっている。


今まで、三回程繰り返しているけど、

一回目は、開始の合図に反応できなくてサヤに簡単に捕まった。(その後、凄くスリスリされた)

二回目は、アヤが撃ってくる魔法に迫られて、逃げ場がなくなった所で捕まった。(凄く恥ずかしそうに抱き着かれた)

三回目は、最初の二回で活躍できなかったミヤが張り切って、クタクタになるまで追いかけ回されて、体力が尽きた時に捕まった。(抱き着かれて匂いを嗅がれた)

散々な結果で、しかも最後には体力の限界だったから、少し休憩をしていたのだ。


「・・・・アルトも疲れているし、これで最後」

「そうですね。あまり無茶をしてもいけないですし」

「なら最後は」


サヤの指示で、アヤが下がりサヤとミヤが前に出てきた。

魔法に長けるアヤが後衛、素早い動きが得意なミヤとサヤが前衛、かなり本気でくるみたいだ。


「・・・・よしっ!いつでも来い!」

「では・・・」


僕が気合を入れるように声を出すと、アヤが空中に火球を上げた。

この火球が爆ぜたら特訓の開始なのだ。


「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」


・・・・ドォン!


「っ!」


音が鳴った瞬間、反射的に横に飛んでいた。


「・・・・読まれた」


すぐ横をサヤが通り過ぎるのが分かった


「まだです!」

「んのっ!」


ミヤならサヤに続いて動いていると予測して、転がった勢いを殺さずに転がりながら無詠唱で土壁を作っていく


「とっとと!アル兄様は器用ですね」


それでも、ミヤは器用に作り出される土壁の上を飛び乗ってくる


「今のミヤには言われたくない!」


最後に手をついた勢いで立ち上がり、様子を見ると


「いつの間に!」


僕を囲むように火球が浮いていた。

転がりながら土壁を作っていたのは、迫ってくるサヤとミヤを抑える為もあったけど、本当の目的はアヤに魔法の標準を合わさせないようにする為だったのだけど


「確かに、私一人なら難しかったのかもしれないですけど、今は二人がいますから」


良く見ると、サヤもミヤもアヤの方に何かの仕草をしている。

まぁ、耳がぴくぴく動いたり、尻尾が揺れたりとそういう少しの動きではあるのだけど


「相変わらず、三人の連携は凄いね」

「・・・・・仲良し姉妹だから」


サヤが土壁の上から降りてきて


「これだけは誰にも負けません」


ミヤも上から降りてきた


「もう諦めますか兄さん?」


アヤは全体を見渡す為か、土壁の上から降りて来ない


「諦める訳がない・・・けど、アヤ少し下がった方が良いと思う・・・学園のスカートは少し短いから・・・」

「っ!」


ばっ!とスカートを抑えてしゃがみ込むアヤ。

集中力が乱れた為か、周りを囲んでいた火球の数が減った。


「アヤ集中して!どうせアルお兄様しか見えてないから!」

「兄さんに見られたから恥ずかしいのよ!」

「・・・・訂正。アルの言葉で私達の連携はすぐに崩れてしまう」


狙った訳ではなかったけど、隙が出来た瞬間この場から逃げようとする。


「!!逃がしません!」


それに気付いたミヤが僕を追いかけるように前傾姿勢になると


「やっぱり!」


ミヤの姿が増えた。

五人ぐらいに増えたミヤが次々と襲ってくる


「っ!の!・・くら!いっ!」


いつも腰に吊るしている木の棒に魔力を通して、襲ってくるミヤを避け、受け流していく


「流石アルお兄様!」


全員の攻撃を何とか躱す事ができたけど、気が抜けない。

何故か嬉しそうなミヤの声に振り向くと


「あ、ダメだ」


ミヤの目は楽しそうに輝いていて、尻尾が千切れないか心配になる程振られていた。

その姿は、ミヤが凄く楽しい時にみられる光景で、その時のミヤは


「・・・・どうせ最後だから付き合ってあげて」


サヤはそのミヤの姿をみて構えを解いて、恥ずかしくてしゃがんでいるアヤの所に向かっていく


「・・・兄さんのエッチ」


アヤも赤い顔をプイっと背けてしまう。


「アルお兄様、行きますよ!今度はこれならどうですか!」


テンションが高く成り始めているミヤ。

今度は十人ぐらいに増えて、しかも、氷でできた狼みたいなものまでいる。


「ははは・・・・よしっ!こいやぁぁぁぁ!」


やけくそみたいに叫んで構えた所で、僕の意識はなくなるのであった。



おまけ


「あっち楽しそうっすね」

「楽しそうですか?・・・・彼、ボロボロになってますよ」

「わんこがお気に入りの道具をボロボロにするのと一緒っすね。そういうミリアも楽しそうっすよ?」

「・・・・私がですか?」

「ちょっとニッってしてたっす」

「・・・・そうですか・・・」

「まだ、慣れないっすか?皆ミリアを受け入れているみたいっすけどね」

「・・・受け入れられ過ぎて逆に落ち着かないぐらいですわよ。一応私敵のつもりだったのですけど」

「それだけ、皆覚悟をしているってことっす」

「覚悟ですか?」

「ミリアを受け入れようとしたアルトを信じたっす。ミリアを受け入れようと努力したし、ミリアに自分達の事を知ってもらおうともしたっす。・・・・まぁ方法が喧嘩だったのはご愛敬ってことで」

「あの時は、復讐でもされそうで怖かったのですわよ」

「まぁ腹を立てていたのは本当すっけどね・・・それで、私達もミリアを受け入れようと決めたっす。アルトがじゃなく私達がっすよ?そして同時にこうも覚悟したっす・・・・・貴女が裏切れば私達が貴女を殺します。それは、貴女を受け入れようと決めた私達の責任で、単純に裏切られて悲しいと言う気持ちもありますからね・・・・と、そういう感じの覚悟っす」

「・・・大分怖い人達の所にいるのですね私は」

「それだけ、大事にしていきたいと思っているっすよ皆」

「・・・そうですか・・・・ところで、私も少しお手伝いしたいことがあるのですけど」

「何の事っすか?」

「例の勇者の事ですわよ」

「協力してくれるっすか?」

「えぇ、私も少し嫌な気持ちになりましたし・・・」

「どういう心の変化か気になるところっすけど、協力してくれるなら感謝っす」

「では・・・・・」

「・・・・前回、私の事腹黒いって言ってた言葉そっくりそのまま返すっす」

「いらないですわ」

・・・・・・

・・・・

・・

「おい、なんか腹黒二人が何か企んでいるぞ?」

「いいからお前はこっちに集中しろ!水龍の力が暴走しているぞ!お前が連れて来たんだろうが!」

「望の作った檻が壊れるようなら俺が出る番はないと思うぞ?」

「ってことは?」

「まぁ、頑張れ?」

「ちっくしょぉぉぉぉ!覚えていろよ!」

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