懐かしい再会と急な出発
誰かの気配を感じて目を覚ました。
「お、やっと起きたか」
「・・・・疲れましたよ師匠」
その声が師匠のものだと分かると、ホッと息を吐いて少し愚痴ってしまった。
「解決しろとは言ったが、無茶をしろとは言ってないからな、完全に自業自得だ」
「・・・その頬の手形は何ですか?」
「父親としての勲章だ」
「リースに叩かれたのですね」
「勲章だ」
自信満々に胸を張って言い張る師匠の姿に笑ってしまう。
「それで、二つ程聞きたい事があるのですが・・・」
「ミリアの事か?」
ずっと孤独だった少女。
あの決着の仕方が正しかったのかは分からない。
イサオ様が僕にしてくれるみたいに、優しく促せば良かったのか
師匠みたいに、引っ張ってでも歩かせようとするのが良かったのか
それでも、僕は後者を選んだ。
だから、ミリアがあの後どうなったのかが知りたくて、不安になってしまう
「あいつなら、大分前に目が覚めて、元気に喧嘩してるぞ」
「・・・・今なんて言いました?」
「喧嘩している」
「・・・・何でですか・・・」
目が覚めた事は良い。
元気だという事も良いが、何で喧嘩しているのかが分からない。
しかも、相手は誰だと言うのだ。
「リース達とガチの喧嘩だ。お前は見ない方が良い。というか、お前が行かないように見張るのが俺の今の仕事だ」
「・・・・・・」
「ま、リース達も色々考えてんだろ。後、最近無茶ばかりしているからそろそろお前にもキレそうだぞ?」
「・・・大人しくしておきます」
「賢明だな」
旅に出る前に、一度だけリース達が怒った事がある。
原因は、師匠の修行で失敗して死にそうになった事だった。
その時の事を思い出して、ぶるりと体が震える。
ミリアと立ち会うよりも怖いような気がした。
「では、もう一つなんですが・・・・僕の部屋狭くなってませんか?」
目が覚めた所は自分の部屋であることは分かるのだが、その部屋が狭くなっているような気がするのだ。
いや、確実に狭くなっている。具体的には元の半分ぐらい
「いやな、そろそろ増築しようとは思ってはいるんだが急だったからな。空いているスペースがここしかなかったんだよ。どうせ、お前は部屋の半分もあれば十分だろ?」
確かに、いつも使っているのはベッドだけだし、この部屋は広い過ぎるといつも思っていたけど、”なぜ”そんなことをしたのかが分からな・・・
「あぁ、ミリアの部屋ですか」
「ご名答」
何時ぞやの魔法で小さな花丸を作っている師匠の姿を見ながら、師匠達があのままミリアを放って置く筈がないと今更ながら考え付く
「急ごしらえで、ただ部屋の真ん中に壁を作っただけだが・・・・聞いて驚けよ?なんと!?」
師匠は背もたれてた壁に魔力を流し込める。すると
「なっ!」
「ふっふふ、驚いたか。なんと、この壁に魔力を流すと・・・向こう側が透けて見えるのだ!しかも、向こう側からはただの壁にしか見えていないままで、かつ、操作はこちらしかできない!これぞ長年の研究の成果!名付けて”マジックミr”もとい”不思議な壁”だ。悪い事には使っちゃダメだぞ?」
今まで壁だった所が透明になり、向こう側が透けて見えるのだ。
取り敢えず、ベッドと物入れがあるだけの殺風景な部屋見える。
ふざけて片目を瞑っている師匠の姿を見て
「何してんですか!」
と叫んでしまう僕はきっと正しいと思う。
「何って・・・お前、あの歳であの色気だぞ?色々気にならないか?」
確かに、僕も男だし、ミリアがとても魅力的な体をしているのは気になるが
「って、めちゃくちゃ悪用しているじゃないですか!」
「違う、これは監視だ。まだ、あいつの事を完全に信頼はしていないからな。何かあってからでは遅いんだよ」
真剣な表情の師匠を見て、いつものおふざけじゃないんだと思った
「って、理由をつけた訳なんだが色んな人に怒られそうだから、黙っていることにした」
んだけど、やっぱり師匠だった
「本当に何しているんですか・・・・」
「因みに、壁を壊すのは簡単だが、面倒くさいのでやりません。」
これから僕は理性と戦っていかないといけないらしい。
・・・・・だって、男の子ですからね
あの部屋にいると、落ち着かなかったから一階に降りる事にした。
自分の部屋なのに落ち着かないって・・・・
すると広間から懐かしい声が聞こえて来た。
「・・・・で、だからどうしょうかと」
「ルックさん!」
「ん?おぉアルト君ですか。お久しぶりですね。大きくなりましたか?」
誰かと話をしていたみたいだけど、あまりの久しぶり過ぎて割り込んでしまった。
ルックさんはマリルの父親だ。
英雄の一人、聖弓使いのエルフ族。旅をすることが趣味で、その一環で師匠達と出会い、同行したのだ。
今も奥さんと一緒に旅を続けていて、偶にこうして帰ってくるのだ。
「流石に大きくなりましたよ。最後に会ってから大分経ちましたからね」
「そうですね。やっぱり人族は成長が早いですね。私的には、まだついこの間みたいな感じなのですが」
エルフ族がなのか、ルックさんだけなのかは分からないけど、結構のんびりしている性格をしている。
流石にマリルが小さい頃はずっと傍にいたみたいだけど、丁度僕が師匠に引き取られた時ぐらいから、徐々に旅に出ていくことが多くなっていたような気がする。
「それで、どうしたのですか?マリルは多分・・・」
どこかで、今日知り合った人と喧嘩していると流石に言いづらくて
「あぁ、マリルでしたらさっき会ってきましたよ。元気で大変よろしいですね」
喧嘩している娘の姿をみて、元気でよかったの一言で済ますのがルックさんらしい
「それと、精霊の瞳を持っている少女から伝言を預かっていますよ」
精霊の瞳といえば、ミリアの赤い目がそれだったような気がする。
「・・・・なんて言ってましたか」
恨み言を言われるのだろうか不安になる。
「取り敢えず様子見です。貴方達が他の人と本当に違うのか見定めます。だそうですよ」
「・・・・・・」
これはどう受け取ったら良いのだろうか?
見定めるという事は、一旦は刃を収めてくれたという事だろうか?
「ま、言葉通り取り敢えず様子見ってことだろ?向こうもこっちもだ」
師匠に後ろから肩を叩かれた事で、ルックさんが話の途中だったことを思い出した。
「ごめんなさい。話の途中で・・」
「いや、大丈夫だ。誠がいないとこれ以上は話が進まない状態だったからな」
ルックさんの話を聞いていたのは、ノゾムおじさんとマリー様とルミス様
要するに英雄一同様たちだった。
「あ、固まりやがった」
「まだ、私達に慣れていないのだろう」
「アルト君大丈夫ですよ?何ならノゾムさんみたいに私もおばさんと呼んでみますか?」
「滅相もありません!」
確かに小さい頃からいた、師匠やノゾムおじさん、ルックさんに対してはそこまで緊張はしないけど、
貴族でもあるルミス様やマリー様にはまだ慣れていない。
しかも、マリー様をおばさん呼ばわり何てできる筈がない
「それは、俺がおじさんっぽく見えるという事か?」
「ふむ、私はもっと仲良くなりたいんだがな。どうも騎士以外の人にどう接すれば良いのか分からん」
「ま、これから慣れるだろ。それで、問題っと言うのはあの水龍の事だろ?」
師匠達が難しい話を始めたから、部屋から出ようとしたら
「そいつは簡単だ。アルト、お前の友達にクーナって奴がいただろ?そいつを呼んできてくれ」
「え?」
「創造主。私も行かせて欲しい」
「う~ん。よし分かった、魔力の補佐があればアルトへの負担も少なくなるだろうしな」
「チッタ?ええ?」
何故、クーナの事を師匠が知っているのか?
何故、クーナが必要なのか?
何故、チッタがそれに同行することになったのか?
色々疑問が残ったまま
「何でこうなったか説明してくれない?」
「ごめんなさい。僕も全然分かりません」
クーナを呼びつけるより、迎えに行った方が早いという事で、僕と師匠とルックさんとクーナが働いている店に行って、その制服のまま師匠達は消えてしまった。
多分、どこかに転移したのだろうけど
「ねぇ君。ちょっと説明して欲しんだけど?」
僕を置いていくの勘弁して欲しかった。
急に来て、クーナを連れて行った師匠達の存在を隠しながら、どう説明をすればいいと言うのだろうか?
結局、偶々一緒に店に入っただけという事をごり押して納得してもらった。
・・・・流石に悪いと思い、店にある一番高いメニューを頼んだけどね
後で師匠に取り立ててやると思いながら、不思議な空間で癒されるのであった。
おまけ
「・・・私の方が癒せる・・・筈」
「急に何を言っているの」
「私もサヤ姉さんと同じ思いが湧き上がってきました」
「私もです!」
「この三姉妹はいつもこうなのですか?」
「偶によ偶に・・・あ、お父さんがまたどっかに行った」
「そういうのは分かるのよね」
「これだけはって両親から説得されたからね」
「他種族の中でも長寿で知られているエルフ族・・・の筈なのに貴女からは全くそういう気配がしませんわ」
「それはまだ秘密よ。その精霊の瞳でも分かるものではないしね」
「ここの人達は凄い人だけですわね。まだ、私は動けませんわよ」
「化け物だけっすからねぇ。英雄の子供全員相手って普通なら死んでるっす」
「・・・私は、貴女の方が一番怖いのですけど」
「何でっすか?こんなにひ弱そうっすのに」
「・・・・・・・腹黒」
「見てみるっすか?」
「遠慮しておきます」




