通称○○部屋誕生!
二、三日は安静にして体の様子をみろと師匠から言われ、じっとしていたけど新しくくっ付いた手足も違和感がなく動かせるようになっていた。
ケントとの模擬戦みたいに、体を全く動かせない程ではなかったから、今回は例の二人のお世話をある程度抑えることができた。
ナナシさんがニヤニヤと「残念だったっすね」とからかって来なければまだゆっくりできたのだけど・・・
普段通りに体を動かせるようになってから、新しくくっ付いた手足の状態を調べようと魔力を通したり、軽く運動してみたりしたけど・・・
何て言えば良いのか・・・・
良く言えば、動かしやすい
悪く言えば、振り回される。のだ
魔力を通さなければ、殆ど変わらないのだけど、魔力を通すと全く違うのだ。
イサオ様や師匠からは、僕自身の本来の動きはそっちの方で、動きが鈍い方が問題なのだと言われている。
新しい手足の動きに、追いつけるようにと修行の量が少し増えた。
僕的に問題だった魔力の補給だけど、これはリース達が嫌がることなく率先してしてくれた。
逆に僕の方が恥ずかしくて、リース達の顔を見れない程だった。
そんな色々なことがあって、少しのんびりできる時間ができから外に出ようと家の中を歩いていたら、今までなかった所に扉ができていた。
「・・・・怪しすぎる」
確かこの辺りに部屋を拡張するスペースは無い筈だから、このまま扉を開けてしまうと外に出てしまう筈である。本来なら
でもしかし
ここには常識が通用しない人が住んでいるのだ。
扉を開けると、ドラゴンが住んでいると言われている龍峰に繋がっていても不思議ではない。
恐る恐るドアノブを握ると少しだけ魔力を吸われた感じがした。
カチャリ
と鍵が外れ簡単に扉が開いた。
そこには
「大きな部屋?でもまた扉がある」
真ん中には大きなテーブルがあり、その周りにはソファーが置いてある。談話スペースみたいになっていた。
そして、部屋の壁には食器棚や本棚が置いてあり、それ以外には並ぶように扉があった。
片面に四つ、反対側に四つで計八個の扉がある。
どういう事なのか頭を悩ませていると、タイミングが良いのか同時に六つの扉が開いた。
「あら?結構綺麗な所ですね」
「家具まで置いてあるのか」
僕と同様に部屋の中をみて驚いているシェルとファルが
「うわぁ~結構広いですね」
「扉の数が何か多くない?」
「・・・でも、これですぐに会いに行ける」
キョロキョロと周りを見ているミヤ、アヤ、サヤが
「あ、アルト君おはようございます」
そして、僕に気付いて挨拶をしてきたマリル。
マリルの声で僕に気付いた他の人達も僕に挨拶をしてくる。
「おはよう?・・・みんなはどうして?・・・っていうか、この部屋はなに?」
色々と頭が混乱してしまう。
頭の中で師匠のしてやったりという顔が浮かんでくる。
「聞いていないのですか?」
「・・・・」
誰にと言いそうになったけど、そんなの一人しかいない。
「ほら、私達は君達みたいに家が近くないだろ?そんなの羨ま・・いや、訓練をするのに行き来するのに時間が勿体ないだろ?」
「それに、私達も立場がありますから、堂々とこちらまで来ることができないのですよ」
ファルやシェルの件から、二人も一緒に修行をすることになっていた。
剣と盾を上手く使うファルに回復や補助魔法を得意とするシェル。
この二人が加わった事で、今まで見たことがない動きや魔法がみれて勉強になっている。
しかし、二人は貴族という立場もあり、あまり頻繁に来れていない。
確かに、この扉があれば周りの目を気にせずに、これまで以上にここに来ることができる。
「でも、マリルとサヤ達は・・」
同じ家には住んではいないが、同じ敷地内でいつでも来れる筈だけど
「・・・羨ましい。私達も一緒に住みたい」
「直球で言ったわね」
「はわはわ!サヤお姉様!」
「サヤ姉さん・・・流石です」
何て答えれば良いのか分からず、そしてどうすれば良いのか分からず立ち尽くしていたら
「もう皆来ていたの?」
後ろからリースの声が聞こえてきた。
「ご、ご主人様。旦那様がお呼びになっていましたよ」
「私達はこちらの片付けなどがありますので」
そして、ジルとノアの二人も入ってきた。二人の手には掃除道具などがあった。
「ほう、なかなか良い所っすね」
最後にナナシさんが入ってきて、こちらに向かってくる。
「ナナシさんは知っていたのですか?」
「それが、私も今日教えて貰ったすよ。何でもあの二人には秘密ってことらしくて、二人と離れるのを見計らっていたら今日になったみたいっすけど」
ナナシさんが言う二人というのは、ミンクちゃんとヴォルの事だと思うけど、なぜ二人に秘密にするのかが分からない。
特に、ヴォルであればこの部屋をみせるととても驚いて喜ぶと思うのだけど
「まぁ、二人には悪いっすけど、私は納得できるっすけどね。私もこういう部屋は欲しかったす」
「???」
「アルトは分からなくていいっすよ」
そう言って、テーブルや椅子などの配置をどうするかなど話している、リース達の所に向かっていく。
僕もついて行こうとしたけど、師匠が呼んでいるという事でそっちに行くことになった。
「お、来たな」
下の階に降りると玄関前に師匠が立っていた。
用事は何なのか聞こうとする前に
「もう見たか?中々良いだろ?ドアノブには魔力識別を組み込んで、転移魔法の応用で各部屋に繋げた扉。部屋の中の照明は色々調整ができるし、中から鍵を掛けれるから外からも邪魔されにくい。なかなかの物だと思うんだがどうだった?通称ラブ部屋は」
っていう言葉に驚いてそれどころじゃなくなった。
「師匠!何してんですか!」
「何って、ラブ部屋をだな」
「その言葉は禁止です!リース達に聞こえたらどうするんですか!?」
「良いも悪いも、あいつらぁぶらぁば!」
師匠が何か言いそうになった瞬間に、師匠の頭にバケツが勢いよく飛んできた。水が入ったままで
「あら、手が滑ってしまいました」
「手が滑っただけで、バケツが弾丸みたいに飛んできてたまるか!」
「師匠、よく無事でしたね」
「無事なもんか!水でびしょびしょじゃねぇか!」
「丁度良かったじゃないですか。頭が冷えて・・・・ね、お父様?」
「・・・お、おう」
二階から見下ろしている、リースの笑顔に師匠も僕も何も言えなくなった。
「リース、下着がぁ!」
いや、師匠だけは余計なことを言って、また物をぶつけられていたが
「・・・見ましたか?」
顔を赤くして、スカートを抑えながらリースが聞いてくる。
「・・・見えてはないけど・・・いくら家の中でも短すぎるのでは・・・とは思う」
外に出る時はそうでもないのだけど、家の中ではゆっくりしたいのか、薄着でいる事も多くて、僕はドキドキすることが多い。
リースは顔を赤くしたまま、皆の所に戻ってしまい、僕と師匠だけが残った。
おまけ
「ここですか・・・」
「姉ちゃん。手続きが済んだならさっさと進みな、後がつっかえてるぞ」
「あ、すみません。少し聞きたいのですが、この町に英雄がいるっていう話は」
「あん?姉ちゃんは英雄様に会いに来たのか?」
「ええ。私の母が昔お世話になったみたいで」
「そうか、英雄様は確かにここに住んでいるが、俺は場所までは知らねぇな。姉ちゃんは冒険者なんだろ?」
「一応、旅をするには便利ですから。最低限のランクですが」
「それなら、ギルドに聞けばいいと思うぞ?ちゃんとした理由なら教えてくれるだろ」
「ありがとうございます」
「なに良いってことよ。ところでこの後何もなければ・・・・あれ?いねぇ?美人だったんだがなぁ・・・ちょっとおっかないような気もしたが」




