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師匠!何してんですか!?  作者: 宇井琉尊
第二章 学園編(二人の少女)
15/86

その名は幻想空間とメイド?

目を開けるとそこは別世界でした。

色々な形や色をした花が一面を覆い、穏やかな風が甘い匂いを運んでくる。

少し離れた所には湖もあり、その近くには小さな家が建っていた。


「・・何て言えば良いのか・・・」


 一言で言えば、とても綺麗で落ち着ける場所と言えるのだが、これを作ったのが師匠達である事を知っている立場からすると色々と考えてしまう。


正直に言えば、似合わないだ。

それこそ、魔王城を再現してみました!と言って作っている方がピンとくる。

まぁ、今は背中に背負っているお姫様を寝かせてあげたいから有り難いと言えば、有り難い状況なのだが・・・


 転移魔法で飛ばされた時は、周りを警戒して起きていたが、この風景をみて警戒心が解けたのか眠る様に倒れてしまった。

流石にそのままではいけないと背負って、湖の畔にある家まで歩いているところだ。


「・・・役得?・・・いや、考えないようにしよう」


背負ってから気付いたけど・・まぁ、着痩せするタイプなんだと言うことが分かってしまった。

背中や落ちないように支えている手、スカートから覗く脚をあまり意識しないように歩く・・・・無理だが


「それにしても・・・相当無理をしていたのかな?」


いくら何でも今日知り合ったばかりの男の人が近くにいるのに気が抜けたという事はないだろう。

多分、今までずっと無理していたのがブツリと切れてしまったのだろう。


「・・・まるでリース達みたいだ」


 限界以上まで無理をして、それを無理だと感じさせない幼馴染達。

英雄の子供として見られ、それに応えるように無理し続けていた幼馴染達の姿にそっくりだった。


「・・・っと・・お邪魔します~」


 そういう事を考えて歩いていると、目的地の家まで辿り着いた。

その様子は、師匠が前に教えてくれた別荘?の形をしていた。

取り敢えずは、外に立っていても仕方ないと思い家の中に入ることにした。


「いらっしゃいませ。初めましてご主人様。食事にしますか?お風呂にしますか?そ・れ・と・も、登録を先に済ませてください」


 扉を開けると、そこには白い球体の下に三角の形をした何かが立っていて、何やら分からない事を言いながら迫ってきた。


「・・・・・・・・と、取り敢えず後ろの人を休ませたいのだけど・・・」

「いらっしゃいませ。初めましてご主人様、登録にしますか?登録をしますか?登録をして下さい」

「・・・・・・・・・・・・登録させてください」


 シェルムさんを早く休ませる為には、降参するしかなかった。


「では、こちらに名前と血を少し垂らして下さい」

「・・・・・何か呪われそうなんですけど・・」


白い何かが何処からか取り出したのは、黒々とした本だった。


「仕様ですので」

「・・・そうですか・・・」


 いっぱい言いたい事はあったけど、それを飲み込んで出された本の一番最初に自分の名前を書いた。

後は、血を垂らせば良いという話だけど


「では、失礼して」

「痛い!言葉と行動がほぼ同時!」


白い何かは僕の手を取ったと同時に、小さな刃で指先を切り裂いていた


「すぐに治します・・・こう見えて、私は看護能力ばっちりですので・・・メイドですけど・・・何でも修理できますよ・・・・メイドですけど・・・・家事は完璧ですメイドですから」

「何でメイドを三度言ったんですか・・・・え?メイド!?」


△の上に○が乗っているので、何となく人を模した物かな?ぐらいは分かったけど、流石にメイドだとは思わなかった。


「む、失礼な・・・こう見えてまだ三十年経っても新品なのに・・・誰にも使われた事がないので・・・」

「・・・そうですか」


しか、言うことが出来なかった。


「・・・登録完了。第一マスターをアルト様に指定・・・マスター決定に伴い全ての制限解除・・・外部との情報共有開始します」

「あの・・・もう入って良いですか?」

「仕様なのでもう少しお待ち下さい。胸とお尻と脚で満更でもないくせに・・・後、匂いもですか?」

「・・・・何か嫌われる事をした覚えはないのだけど・・・」


時々、この白い何かの言葉が僕の胸へと突き刺さる時がある。

確かに・・まぁ・・・満更でも無いこともない事はないけど・・・


「ムッツリなご主人様は放っておいて・・・・情報獲得完了・・・状況把握・・・・待機モードより通常モードへ移行します」

「・・・・・・・・」


白い何かは、ガシャガシャいいながらどんどん変形していく


「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・」


ガシャガシャガシャいいながらどんどん変形していく


「・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・ガシャ」

「あ、今本当に言った」


ガシャガシャガシャガシャ言いながら変形して・・・


「これが私の本当の姿です」

「何がどうなった!?」


 ジルとノアが着ている服と同じようなメイド服を着た、兎人族みたいな綺麗な女性が立っていた。


「仕様ですので」

「・・・・言うと思いました」


そして、これを作ったのがノゾムおじさんだと言うことが分かってしまった。

ノゾムおじさんは獣人族が大好きなのだ。

そして、思考回路とかそういうのは多分師匠が作ったのだろう


「それで、中に入っていいのでしょうか?」

「どうぞお入りください。お荷物をお受け取りします」

「荷物じゃないので雑に扱わないで下さいね・・・本当にお願いしますよ・・」


言葉とは裏腹に白い何かだったものは、丁寧にシェルムさんを部屋に連れて行った。


「ベッドはご一緒で宜しいですか?初めてと言うのであれば、湖が綺麗に見える一番いい部屋にご案内致しますが?」

「そんな気遣い結構です!?」

「・・・・了解しました。チキン様」

「・・・・・・・・・・・・」


 もう何も言うまい・・・

あの白い何かだったものの言葉を借りれば、三十年ぐらい誰にも会わずにここで待機していたみたいだから、人との触れ合いに飢えているのだろうと思うが流石に疲れてしまう


「お茶をどうぞ」

「あ、有難うございます・・・・って小さい!」


 近くにあった椅子に座って窓から見える湖を眺めていたら、そっとお茶を出されたのでお礼を言ったらシェルムさんを運んで行った白いなにかだったモノの、縮小版(通常版が20歳ぐらいであれば、縮小版は10歳ぐらい)がお茶とお菓子を持って来ていた。


「私は子機と言います」

「コキさんですか」

「ニュアンスが違うような気がしますが・・・取りあえずはそれで良いです。それであちらの大きい方は・・・そうですね・・・マイとお呼び頂ければ良いと思います」

「マイさんですか・・・因みに、姉妹みたいなものですか?」

「いえ、誠に遺憾ながら私はあれに作られた存在なのです」

「性格が違いません?」

「仕様ですので」

「・・・・そこは一緒なのですね・・・ところで、此処はどこか教えて貰ってもいいですか?・・・あの人が来るまでに・・」


 何やら向こう側でドタバタと音が聞こえてくるが、今うちに質問しないとあっちの方が帰ってくると話が進まないような気がするので、コキさんに聞くことにした。


「その判断は正しいと思います。今マイはかなり興奮状態になっていますので・・・一時すれば落ち着くと思われますが・・・・」


 コキさんはマイさんが行った方へ視線を向けるが・・・ドタバタの音の他にシェルムさんらしき悲鳴とマイさんらしき笑い声何かなんか聞こえないのだ。


「・・・・では、質問にお答え致します。此処は幻想空間と呼ばれる場所です。空間の中に幻想を作り出しそれを固定して作り出された物です。」

「では、ここにあるものは全て幻想・・所謂、偽物なのですか?」


今、座っている椅子や飲み物はとても幻想でできているとは思えなかった。


「幻想を固定した時点で本物になります。しかし、この空間自体は幻想によって作り出されたので幻想空間と名付けています」

「・・・・よく分からないのですが・・」

「簡単に言えば、ご主人様は誰も知らない、秘密の場所(空間)を手に入れたと思って頂ければ良いと思います。正直、この空間の成り立ちなどは知らなくても良い事なので」

「そういう事にしておきます・・・では、元の場所に戻る為にはどうすればいいのでしょうか?」


 一番聞きたい事はそれだった。

過ごしやすい空間である為にこのまま出て行かなくても良いかな?と思わない事もないが、流石にそれは拙いと思う。


「よいではないか~よいではないか~」

「だ、誰か、助けてください!」

「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・」


決して、マイさんにからかわれるのを防ぎたい訳じゃない


「・・こほんっ・・鍵があれば出ることも入ることも簡単にできます」

「その鍵はだれが・・・」

「ほらっ残り一枚!」

「いやぁぁ!誰か助けてください!」


 段々と近づいていくる声に冷や汗を出しながら、コキさんに尋ねると

コキさんは無言で顔を横に振って


「・・・・マイが持っています」

「・・・ですよね~」


そう諦めた瞬間


バンッ!


と大きな音を立てて扉が開いた


「これで最後です!汗をかかれていたのでお着替えをしようと思っただけですのに何故逃げるのですか!?変に時間がかかったじゃないですか・・・まぁ私は楽しめましたが・・」

「うぅぅ・・・もうお嫁に行けません・・・目を覚ましたらハァハァ言っている人に服を脱がされそうになってたら逃げるのは当たり前です!それに何ですかその手に持っている服は!」

「何って貴女様の着替えの服ですが?」

「それを私に着せようとしたのですか!?背中とか丸見えですよ!?それに胸元も・・・」

「大丈夫です!ちゃんと首でしっかりと結ぶタイプの物ですし・・・この、見えそうで見えないという男心くすぐる・・・あぁ良いです」

「見えそうって背中は完全に丸見えじゃないですか!」

「男の人は女の人の後ろ姿で興奮するみたいですよ?確かに上はまぁ大胆かもしれませんが、下の方は足首まである長さですし、ドレスならこれぐらいが普通ではないですか?貴女様が着ていたスカートの方が短くて少しエロいですよ?」

「制服はエロくありません!それにどうしてドレスに着替えないといけないのですか!」

「何故と言われたら、私達の初ご主人様にお見せする為だとしか言えないのですが・・・・あ、ご主人様!このドレス似合うと思いませんか」


 後ろからマイさんの声が聞こえてくるが、返事をする余裕がない。

扉が開いてすぐに顔を背けたとはいえ、全く見えなかった事もなかったので合わせる顔がないのだ。やっぱり大きかった等とは思っていない。

っていうか、まだあの状況なら今も顔を向けることができない


「誰に向かって・・・・・」

「何をしているのですか!早く服を着させてください!ご主人様が困っています」

「む、子機さんの癖に生意気ですね・・・ご主人様もみたいですよね?これぞザ・聖女様って感じな綺麗な身体してますよ?神々しいっていうのですか?こういうの」

「い・・・・」

「それとこれとは別です。男の方は、全裸よりも半脱ぎに興奮される方もいるのですよ!」

「論点はそこじゃない!」


やっぱりコキさんもマイさんと同じような物だった・・・


「いゃ・・・」

「っとそう言っている場合じゃなくてですね!シェルムさんに早く服を着せるか、部屋に戻らすかして下さい!」

「おっとそうでした」

「・・・・もう遅かったかもしれません・・・・気絶してますよ」

「よしっ!シャッターチャンス!」

「やめい!」


 ブゥブゥ言うマイさんを説得して、シェルムさんを制服に着替えさせてからもう一度ベッドに運んで貰った。



ほんとにおまけ


「・・・因みに、本当に写真ありますけどいりません?」

「・・・・・・・・・やめときます」

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