登校 3
「たくっ…………出過ぎた行動をするなよ」
俺は佐藤に軽く釘を刺す。たまにとんでもないことをするからな。
「イエッサー!」
佐藤は敬礼をして元気良く返事した。
「それじゃ俺は情報収集してくるぜ!」
「おう」
敬礼をするため額に当てていた手の薬指、小指、親指の三つを軽く折り、軽く前に振る。
佐藤が教室に入るとちょうど目の前に背中をこちらに向けている西野ま真後ろで素早くしゃがみ右手でスカートをたくし上げながらパンツに顔を向けて質問する。
「京佳さん、ちょっと昨日のことで尋ねたいことがあるんだけど……」
「くっ///」
「お前ええええええええええええええええええええ!!」
俺はいきなりとんでもない事をしでかした佐藤を怒鳴り、西野は両手でたくし上げられているスカートを無理やり下ろして顔を真っ赤に染めながらこちらを向いた。クールな印象の西野もあんな顔をするんだなぁと俺はのびのびと思っていた。
「貴様っ!」
西野は顔を真っ赤に染めてしゃがんでいる佐藤をサッカーボールを蹴るかのように廊下の壁まで蹴りで吹き飛ばした。勿論その軌道上には俺もいた。
「うおぁっ!」
俺はなんとかそれをよける。
「げふっ」
佐藤は背中から突撃をして声を漏らす。
「アンタねぇ……」
西野は誰から見ても確実に怒っているというオーラを醸し出しながら佐藤にドスドスと近づく。
「京佳さんのパンツはピンク色かぁ……クールな顔して可愛らしいのを履くんだね」
こんな状況で、危機的状況で、命が危うい状況で佐藤は今言ってはならない……そもそもまずいつでも言わない方がいい言葉を口にした。
西野の顔を見るとさらに顔を赤くして歯軋りを軽くしながら完全に怒っていた。
「あんた……死にたいの?」
脅しのつもりか右膝を佐藤の頭の右隣に思いっきり打ち付ける。当たった瞬間壁にはヒビが入りその場から微風が発生する。……あれは、一種の壁ドンだな。
「やばいぞ……佐藤も殺されるぞ!」
誰かがそんなことを口にした。俺はそれを言った主……黒瀬 竜也に質問を繰り出す。
「なぁ、竜也。佐藤もってどういうことだ?まるで京佳が前に誰かを殺したような口ぶりだけど」
「ん?俺佐藤もって言ったか?」
「ああ、言ったぜ?」
どうやら無意識のうちに言ったらしい
「いや……一昨日来たばっかだし…昨日も一昨日も思い出しても……そんな場面はなかったはず…………だな」
「だよな……じゃあどうして佐藤もって言ったんだろうな……」
「さぁ…………ホントは殺してて誰かが記憶操作をしてただ忘れてるだけってことかもしれないけどね」
「!!」
「いやまぁ冗談だよ!そんなファンタジーなのができるはずもないし
「そ、それはそうだな!」
なるほど……確かにそれなら皆が昨日のことを忘れられる……でも、なんで俺は忘れていないのだろうか。俺の他にも覚えている人はいるのだろうか。そう頭の中で色々と考える。
そう言えば一昨日俺らの体に盗聴器的なのを仕掛けてるとかどうとかって言ってた気がするな。もしかしたらそれが皆が忘れている原因なのだろうか。俺は忘れていない……もしこの仮説が確かなら、俺にはそれが仕掛けられていないということになる。なら……俺が警察に話せば………。いや、だめだ。まだ仮説の段階で行動に移すのは危険すぎる。もし俺にその機械が埋め込まれていないのなら、それを悟られないように今後注意をしながら生活をしなくては…バレた場合は口止めのため殺される可能性がある!…………俺は軽く冷や汗をかいていた。
「お、京佳さんな姿勢でいいのかな?艶かしい太ももと未知なる境地を覆い隠すピンクのパンツが丸見えだぜ?しかも壁ドンまでしてくれるとは」
その時西野の目がキラーンと瞬いた気がした。
「フンッ!」
西野は何も言わずただ右膝を佐藤の肩に向かって思いっきり振りおろした。さほど距離もないはずなのにかなり大きな音がその場から発生した。
「ああっ……かわいこちゃんから肩揉みされるなんて最高」
佐藤って……Mなのかな。今度聞いてみよう。
そんな疑問が頭に浮かぶ。
「へっ、変態っ!」
肩に打ち付けていた脚を戻して今度は左足の蹴りを胴の側面に当てるために振り込むのだか……
「なっ!」
佐藤はその目に見えないような素早さの蹴りを片手でいとも簡単に足首を掴んだ。
「は、離しなさい!このっ……変態っ!」
慌てて引き剥がそうとするが掴まれた左足は逃げることを許されない。
「ああそうさ…俺は変態だ。変態というものは可愛い子の前ではな…身体能力が何倍にも膨れ上がるんだ……」
と、訳わからないことを言いながら佐藤は立ち上がる。それと同時に足を掴んでた手を足から離した。すると西野はみっともなくその場に尻餅をつく。
「あ……ああ…」
西野は人を殺す人の前に、一人の女の子なんだなとこの場で初めて実感する。
「俺を殺したけりゃ努力するんだな。……変態の凄さを骨の髄まで教えてやるからよ」
佐藤は真面目な顔でとんでもない事を口にする
「……い…やっ…ぁ………」
次第に西野の声が小さくなる。
「はっはっは!そんな怖がらなくても大丈夫だって!ところでさ京佳さん、聞きたいことがあるんだ……昨日のことなんだか……………」
佐藤は右手を差し伸べながら質問する。その手を受け取らずそれを聞いた西野の顔つきが真面目なものに変わった。……………てか、怖がらなくていいって変態に対してそれは難しい話だろ。俺はあきれ顔で心の中で軽く突っ込んだ。