美しき転校生
キーンコーンカーンコーン
学校の朝のチャイムがなり先生がドアを開け入ってきた。
「はーい、皆さん席について。今日は転校生を紹介するよ!」
「え!転校生すか!男?女?」
「ふふふー、それは見てからのお楽しみです!」
ほー。俺は教室の後方の席に座っており頬杖をつきながら先生と生徒たちの話を聞いていた。
「せんせー!こんなことを言わずに今言ってくださいよー!」
「聞きたいなら早く席に座りなさい。じゃないといつまで経っても聞けないし、転校生を待たせるのも失礼でしょ」
「ちぇっ、みんなー席座ろーぜー。」
今話しているのは一番前の列に座っている男子の松本 智君である。クラスの人気者で彼女がいるとの噂だが、俺には興味がないので相手が誰なのかは分からない。すると、俺の隣にいた女子が話しかけてきた。
「ねぇねぇ瑞貴?」
彼女の名前は金山 茜。そして俺は高村 瑞貴。今年の春この高校に転校してきた者だ。
「ん?」
「男子と思う?女子と思う?」
「んー、どちらにしろ人数が増えるだけなんだからどっちでもいいんじゃないかな」
「……あんたってやつは」
彼女が俺の発言に呆れていたとき、どうやら全員席に座ったようだ。
「はーい、みんな座ったね。それじゃあ廊下に待っている。西野 京佳さん。入ってきて頂戴」
先生が名前を言った瞬間。転入生の性別が分かった男子の殆どが、よっしゃあああああああああああああ!!と叫んだ。勿論俺は叫んでいない。
ガラガラ
その転校生が入ってきた瞬間
男子が
よっしゃあああああああああああああ!!
女子が
きゃあああああああああああああああ!!
と叫んだ。勿論俺は叫んでいない。
生徒の殆どが叫んだ理由、それは彼女がとても美しかったからだ。まぁ、俺にとっちゃどうでもいいのだが。
彼女の髪は黒くストレートで、顔はとても引き締まりクールな感じ…俺は後ろの席なので良く見えないのだがそんな感じだろう。制服を着ていても胸の大きさがわかる。そして脚はモデルかよ、と思うほど長く、細かった。そして肌は髪の色で余計際立っているのか白い肌だ。よくもまぁこんな人がこんな高校に来てくれたな…
そう思っている間に彼女は教壇の上に立っていた。
「それではこのクラスの新しい仲間の西野 京佳さん!このクラスは3年間ずっと人が変わりませんので皆さん仲良くしてください!では!自己紹介をどうぞ!」
クラスの皆が注目している。そりゃあそうだ、こんなに美しい人が残りの高校生活に加わるのだから。俺らは2年、そしてまだ夏、チャンスはある!と男子共の目は輝いている。勿論俺の目は輝いていない。
「皆さん。はじめまして。西野 京佳です。漢字はこう書きます」
彼女の声は透き通ったソプラノの声でクラス中に響きわたった。そして彼女は自分の名前を黒板に書き始めた。その字は彼女のようにとても綺麗であった。
なるほど…あれで『あすか』って読むのか、言われないと分かりそうにないな…
「はい、こう書いて『にしの あすか』と読みます。好きなものや嫌いなものは後々個人的に…それよりも私はこの場で、このクラスで実現したい夢があります。」
皆は突然の発言に少々戸惑ったあと「おおおっ!」っと声をあげだ。
「私の夢………それは」
ゴクリ…皆が唾を飲む。
あ、勿論俺は飲んでいない。お茶は飲みたいが。
「クラスの皆さんを殺すことです」
彼女は冷酷に、恐ろしいことを口にしたあと、スカートにはさみ隠していたのだろう、拳銃を取り出し近くにいた男子──松本 智に標準を定め、引き金を引いた。
パンッ
乾いた音がクラス中に響いた
その音と同時に智は脳天を撃ち抜かれその衝撃のまま後ろに倒れた。銃弾自体の威力はそこまで強いものではなく、あの至近距離で貫くことはなかった。貫いていたら後ろの人にも被害が出ていただろう。その瞬間、美しき転校生が着た天国のような時間が一瞬にして地獄に変わった。
きゃあああああああああああああああ!!
うわあああああああああああああああ!!
クラスの皆の叫び声が響きわたる。勿論俺は叫んでいない。代わりに目を見開いて驚いている。近くにいた女子は衝撃のあまり失神していて、隣の茜は目を見開き、口元を抑え、少々涙目になっている。もしかして彼女が……いや、違うかな。
「これは警告よ。もしこのことをこのクラス以外の人に話せばその人と話した人を殺す。死にたくないならむやみに口に出さないようにね。あと、この学校は一つのクラスの騒音がほかのクラスにまで響かないように防音設備がされているようですね、たとえ発砲音でも………」
彼女が喋ったあと一人の男子が立ち上がり
「おい、お前は俺らが他人に喋ったことがわかるのかよ!」
彼の質問に彼女は冷酷に答えた
「ええ、貴方達の体のどこかに盗聴器を埋め込んでるわ」
「!!!」
「警察に訴えてもいいわよ。その言葉を口から発したあと盗聴器の中にある盗聴器自体を溶かす液体があるから、それで証拠を無くすから。警察には子供の冗談かと思って相手にしないでしょうね。そのあと私が殺してあげるから」
と言ったあと彼女は彼を睨んだ。彼は蛇に睨まれたカエルのように身をすくませ
「わ、わかりました」
小さく返答をして席に座った。すると彼女がまた発言をする。
「あ、そうそう、喋らなければいいじゃない思うかもしれないけど、バレるよ。ふふっ」
彼女の言葉にクラス全員の顔がさらに白くなった。
「あ、先生。貴方も他の先生に言うのは禁止ですよ。その場で殺します」
「…………」
先生は白くなった顔から青くなった。
「さぁ、先生?私はどこに座ればいいのかしら?」
「え、あ、あそこに……」
先生は震える指で俺の方を指した。
「えっ?」
そうだ…俺の後ろの席が空いていた……
「わかりました」
彼女は教壇を降り、こちらの方に歩いてくる
「?」
突如彼女が立ち止まり隣にいた女性…真部 咲希と言う名前の人の方を向いた。
「あなた…その、手に持ってるカッターはなに?」
「!!………え、ええっとこれは紙を切るために」
「そう」
実際に真部さんの机の上に紙が置いてあったのだろう。彼女は納得をしまたこちらに歩き始めた。
「…………くも…」
彼女はそのまま歩いているが真部さんは突然震え始めた。すると、真部さんは立ち上がり、
「よくもさっちゃんを!!」
彼女に襲いかかった。
なるほど真部さんが智の彼女だったのか…。
カッターが彼女─西野さんに刺さりそうになったとき、西野さんはそれを小さくよけた。
「えっ?」
真部さんは驚いている。
そして真部さんからカッターを奪ったあと、真部さんを進行方向とは反対側に弾き返し、一気に詰め、真部さんの首元をカッターで深く斬りつけた。
カッターから飛んだ血が近くの人の頬に当たる。
「…………!」
真部さんはそのままの流れで倒れ込んだ。
きゃあああああああああああああああ!!
今日で何度目だろう…またまた叫び声
「……確かに私を殺せば皆は殺されないわ。だけど感情任せで襲ってきても死ぬだけ。残念だったわね」
そう西野さんは言葉と共にカッターを真部さんの制服の上に投げ捨てた。
そして西野さんはまたこちらに向き直り歩いてきた。俺は彼女に質問をするために立ち上がった。
「ちょっと…瑞貴!」
茜が止めようと声を掛けたが俺は無視をした。
「質問ですか?」
「ああ…なぜ、クラスの皆を殺すんだ」
「復讐の為よ」
「一気に殺すのか?ジワジワなのか?」
「私が殺すと判断した人を殺していくわ」
「へぇ…それを防ぐには」
「私を殺してみなさい」
その日、二人の生徒が命を落とした。明日は一体誰が…何人死ぬのだろう。もしかしたら……明日死ぬのは俺かもしれない。