好きなように書いた結果
「好きなものを好きに書けばいいんですよ」
先生はぼくにそう教えてくれた
「全力で書いた作品には感動が宿るんですよ」
その言葉で心が楽になった
ぼくは小説が好きなんだ 唯一できる自己表現だ
もう二年も書き続けているが 読者はちっとも増えないな
それでも書きたいと思えるのは ほんとうに小説が好きだから
そんな言葉が虚しくなったのは あの作品を完結させた次の日
先生の言葉は嘘だった
やっぱり力を抑えるべきだった
辛うじてついてきてくれた数少ない読者が
最終話を読んで一人残らず離れていった
「王道をバカにするやつは邪道も書けない」
2ちゃんねるの意見は辛辣だ
「マイナーを書いてても腕は伸びない」
でも先生より的確な意見に思えた
ぼくはあの作品を削除した それを咎める人はいなかった
あれはただの黒歴史だ 二度と見たくはないな
いま考えれば欲望の捌け口でしかなかった だから作品として成り立ってなかった
作者のオナニーに誰が付き合えるんだ それが分からないほど馬鹿じゃない
分かったよ ヘイト作品を書けばいいんだろ
この恨みの捌け口を創作に回せばいいんだろ
今までハッピーエンドしか書いてこなかったぼくだが
これからはバッドエンドでみんなを悲しませてやる
「なんでそんな作品を書くようになったの?」
うるせえ てめえらのせいだ
「昔は曲がりなりにも明るかったじゃんよ」
うるせえ てめえらのせいだ
「昔は昔で味わいがあったのに」
ならどうしてそれを賞賛しなかった
「今のお前には魂を感じない」
ならどうしてあの時ぼくを止めなかった
全部お前らのせいだろうが
「どうせ」なんて言いながら投稿するのは
それでも誰かに分かってほしいから
「やっぱり」って言った後に再び書くのは
それでも誰かを救いたいから
ぼくは救いたい
ぼくは救いたい
ぼくは ぼく自身を救いたい