プロローグ
ボーイズラブ要素といっても、非常に軽いものになると思います。しかも、かなり長い間、友情としか思えないかもしれません。でも最終的には誰かを選びます!
……リーン……
リン・ゴーン……
リーン……
鐘の…、
どこからか、鐘の音がする……。
――――祝せ
生誕を祝せ
世界よ、■■の生誕を祝せ
どこからか、声が聴こえる……、
幾重にも重なり合って反響する声……。
(苦しい……)
胸の中、否定する想いが湧き起る。
めでたい事などあるものか、喜ばしい事などあるものか。
(哀しい……)
犠牲の上の生誕を、笑って祝う事などできないものを……。
ふいに、暖かな何かが頬に触れた感触を覚えた。その何かは優しく目じりをぬぐって、濡れた感触を残した。
(……?……)
離れていく温もりが惜しくて、追いかけるように瞼を開こうとしたが、震えるばかりでなかなか瞼は持ち上がろうとしない。
なんとか薄く眼を開けてみると、すぐ近くに濡れた指先が見えた。
(……涙?)
そう、哀しかったのを思い出した。ではこの指が流れた涙をぬぐってくれたのか。
「――泣くな」
視線を上にあげて、この指の持ち主を眺めてみる。
「泣くな、お前に罪など無いのだから」
優しい言葉を紡ぐ人に感じる、この安堵感は何であろうか。初めて会う人であるにも関わらず、この人は自分の味方だという、絶対的な信頼があった。
「独りで、苦しむな……」
そう言うこの人こそ苦しそうで、思わず手を差し伸べた。
「――泣かないで、ください……」
差し伸べた左の手の平で、彼の暖かな頬を包み込むと、苦痛に耐えるかのように眉を歪ませた。
他人の痛みを自分のものであるかのように、共に苦んでくれる、優しい人だ。
短く清潔に整えられた黒髪、言葉よりも何よりも感情を現す、濡れて光る青灰色の瞳。そして大地の祝福を示す浅黒い肌。
明るい色彩は何一つ持っていないというのに、光だ、と思った。
僕を導く、清冽な光だ――…
物語の触りですので、どういう話か全然分からないかと思いますが、可能な限り更新していきますので、最後までお付き合いくださいませ。