エデンの園
幼少期の頃はよく言っていた。
『大きくなったら兄様のお嫁さんになるっ!』
けれどこの言葉をもう言ってはいけないと知ったのは何歳の頃だっただろう。
「...兄様」
兄が木の上で何かを食べていて、気になった私は兄の名前を呼んだ。
「ん?アリスも食べるかい?」
そう言って兄は私に自分の食べかけの林檎を渡した。
兄の齧った跡に胸をドキドキさせながら、同じところにかぶりつく。
私は禁断の果実を食べてしまった。
この胸の高鳴りは、決して許されるものではない。
けれど私は、兄を愛してしまったのだ。
「兄様これ、なんていうの?」
「これは、林檎っていう果実さ」
まだ、この時の私はこの気持ちが罪だとは知らなかった。
「兄様、どこ行くの...?」
大きな荷物を持った兄に私も連れて行ってとお願いをした。
「僕は来週からターラント学園に通うことになったんだ。休みの日には帰って来るからね」
そう言って私の頭を撫でて、兄は家を出た。
(行かないで)
兄様の表情が嬉しそうだったから出かけた言葉は声にならなかった。
そして、学園に行った日から全く帰ってこなかった兄様が次に帰ってきたのは、あの日から4年の月日が経ってからだった。そして成長した兄の隣には綺麗な女性が並んでいた。
私は嫉妬の炎を燃やした。
離れ離れの4年、消えることはなかった想い。
兄様に触れないで。兄様を見ないで。
私の兄様を盗らないで。
とてもじゃないけれど笑顔を向けることなんて出来ず、私は部屋に籠った。
その日の夜、私は兄の部屋に向かった。
そして、眠っている成長した兄に胸が高鳴り、そっと呟く。
あの日、食べかけの林檎を食べなければ、胸が高鳴ることなんて無かったのに。
そしたらこの気持ちに気づくことなんてなかったかもしれないのに。
「兄様、愛してる」
ぽつりと出てしまった私の気持ちを言葉にした瞬間、私の視界は一転した。
柔らかい感触が背中に広がり、兄様が寝ていた温もりを背中に感じた。
そして私が見下ろしていたはずの兄様が今度は私を見下ろしていた。
「アリス、僕のことを愛してるの?」
そう問われ、私の喉がヒュッと悲鳴をあげた。
私は自分の気持ちを兄に知られたことが怖くなり、涙がこぼれる。
「兄様がっ、あの時、私に林檎を渡さなければっ、こんな気持ちに、ならなかったかもしれないのにッ!!」
そう叫び、好きだと、愛してしまったと兄に言った。
終わってしまった。兄妹でもいられなくなってしまった私たちはこれからどうなってしまうのだろうと思った時だった。
私の唇に優しく温かいものが触れた。
え。と驚いていると、視界いっぱいに兄が目を閉じた姿が映る。
「...兄様...?」
「僕も、アリスを愛してる」
そう言った兄の瞳からは涙がこぼれ、それは私の頬に落ちた。
「...どうして...?あの人は...?」
「...隠さなければと思っていたんだ...」
そう言って兄は、私を抱きしめた。
それから兄は私に全てを教えてくれた。
私を愛してしまったこと。離れなければと思い学園に行ったこと。両親からの手紙でさすがに帰らなければと思ったが、4年間気持ちが消えることがなかったため、私のことを愛してしまったことをバレないように誤魔化したくてあの人を連れて来たらしい。
あの日、決して周りに許してもらえない罪を犯した。
これは、私たち家族が幸せに暮らすため、私たちの為にふたりで決めたこと。
次の日兄達を見送った。
そして、その数ヶ月後、兄だけまた帰ってきた。
そして、帰りを私は兄を送ると言ってふたりで馬車に乗った。
そして私たちを乗せた馬車は脱輪による馬車の事故で崖から転落した。
数年後
ここはエデンの森と呼ばれる最果ての北の森。
人がおらず、人里まで降りるのにも3時間はかかる森の中。
「母さん!父ちゃん!」
小さい男の子が鍬を肩に乗せ、泥だらけで駆け寄ってくる。
「見て!林檎ができてた!」
そう言って両手を出し2つの林檎を出した。
「まあ、綺麗な赤い林檎」
そう言って女の人はその林檎を一口かじった。
そしてそれを隣にいた男性に渡すとその人も齧られたところと同じところを齧った。
「懐かしい味がするわ」
そう言って2人は微笑んで、男の子を抱きしめた
❁⃘*.゜
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