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1.1話 ほぼ100%

*プロローグ


2024年末に、とある小惑星が発見された。一見、ただそれだけ?と思う人もいるだろう。しかしこの小惑星は、2032年冬に地球に衝突する可能性があるとESA(ヨーロッパ宇宙機関)が、発表した。このような事を言っておいて、結局衝突しなかった事例はいくつもあるが、今回は少し違うのだ。

何故なら、地球に衝突する確率は───



『2.2%』だから。

◇ ◇ ◇


《この冬に行きたいオススメのカフェ、22選!!まず一つ目は……》


面白くない、次。


《驚く程よく眠れる枕を紹介します!まずは、ミトリの安眠まくら……》


どうでもいい、次。


《テストの点数が急激に上がる勉強法、教えちゃいます!とりあえず机に向かっ……》


考えたくない、……次。

…次。…次。…次。…次。…次。…次。…次。


「…本当に記事にできるネタが無いな。」

僕はそう言ってスマホの電源を切る。人気の記事は全て、「外に出ろ」や「勉強しろ」と言わんばかりのものしかなくて……あぁ、本当に何をやっているんだろう。


大星(おおほし) 肖和(しょうわ)。この名前は両親から授かった僕の最初のプレゼントだ。

両親曰く僕には、場を和ませて、自分が尊敬できる人から影響をたっぷりと受けるよう努力して欲しいそう……

しかし、僕は誰に影響を受けたのやら。場を和ませるどころか凍りつかせてしまうことが多々あり、勿論友達も出来やしない。そんな17歳だ。

そして話は変わるが僕は今、学校で行われる「黎明祭(れいめいさい)(文化祭)」で、全校展示されるレポートの記事を探している。これで優秀賞を取ることが出来れば、単位がもらえると言うので、かなり張り切っているのだ。でもやっぱり、ありきたりのモノばかりで……結構悩んでいる。


…よし。少し自分について考えたところで、またネタ探しを始めよう。

秋風が心地よいので、僕は窓を開けつつ横になって、無作為に記事をタップして開くのだが────


刹那、僕の目は有り得ない程にその記事に釘付けになった。


「小惑星が…2032年冬に地球に衝突……しかも『2.2%』て!!

たかが2.2%だと思ったそこの君!これは、スマホゲームのガチャ確率に換算すると、ほぼ(・・)100%なのだよ!!!」


「いやどんな理論だし、誰に言ってんのそれ。…ってかてか、にぃに!」


僕がそう呟いていたら、突然ノックもせずに人が入ってきた。薄手の青いパーカーを羽織り、右手に鉛筆を握っているのは、MY妹だった。

大星 (すい)。彼女は僕と二つしか離れていないのに、性格は真反対。そして学校では評判が良いらしく、告白する人が絶えないそう……まぁ黒髪な上に純粋そうな黒い瞳を兼ね備えてるし、理にはかなっている。にしても非現実的すぎだろ。

すると、彗は思わぬことを口にしたんだ。


「にぃに、私ね………にぃにと同じ学校受けようと思う。」


「いやいや、彗は僕より頭が良いだろ?もっと上の高校目指しなって。」

僕の二つ下、ということはつまり、彼女は今年受験生なのだ。しかし学力には余裕がある故に、こうやって揚げ足を取るようなことを言えるのだ。


「えぇ……でも、第一希望に書いて提出したよ。」


「やってくれたな……まぁ、彗の人生だし僕がどうこう言う権利はないんだけどさ。」


彗は僕の方を見てニヤついている。何かおかしなことでも言ったか?


「何か企んでいる目をしているな。」


「いや〜?別に〜?ていうかさ、さっきにぃにが釘付けになってたソレ(・・)、何〜?」

彗は話を逸らすようにそう言ってきたので、まぁ一応見せてあげることにした。


「ふむふむ、小惑星が地球に衝突…ね。小惑星ってぇ、あれでしょ?火星と木星の間にあるやつ!」


「そうそう、しかも見たか?2032年冬に衝突する可能性、『2.2%』だぞ?こんなのもう100%だろ!!」


「いやだからどーゆー理論?!」

そんなキレのある会話を終始二人でしていたら、ふと玄関のチャイムが鳴った。


「私出るよ。」


「いいや、大丈夫。この時間に来るのはアイツ(・・・)しかいないから。彗はお勉強さんでもしとくんだな。」

今は日曜日の17時、宵の明星が薄ら見える空だった。


「もー、いつまでも子供扱いしないでよ……」

彗はムスッとしていた。


挿絵(By みてみん)


◇ ◇ ◇


僕が玄関の扉を開けると、そこには秋風に吹かれ髪がなびく爽やかな青年が立っていた。


「おっ、ようやく出てきた。妹さんとの時間邪魔しちゃうようで悪いね。」

青年は少し申し訳なさそうに言う。ちょっとした事でも謝れるあたり、本当に良い人格なんだろうな。


「おま、…見てたのか。」

彼は、「てへぺろ」と言わんばかりの笑顔を魅せた。

多須(たす) 賢人(けんと)。彼の名前だ。賢人は、僕が中学生の時からずっといてくれる。僕と、賢人と、もう一人(・・・・)の三人でいることが日常だったんだ。


「それで、要件は?」


「肖ちゃんなら既に知っているかもしれない。まず、これ見て。」

すると賢人は、自身のスマホ画面を僕に見せてきた。

そこには、僕が先程釘付けになった記事について更に発展した情報が記載されていた。


「地球に落ちる可能性がある小惑星1000以上を追跡。その中でもこの小惑星は『2.2%』と一番可能性が高い…………」


「しかも、小惑星ってのは数千年に一度くらいの頻度で地球に落ちてきているらしいよ。」

僕が背筋を凍らせていると、賢人は更に追い打ちをかけるようにそう言った。


「…これを見せて、どうするの。」

僕は少し(こわ)ばった声で賢人にそう問う。

すると彼は、とんでもない事を口にしたんだ。


「どうするのって、……俺たちで()()止められないかな。」


「………へ?」

賢人はあまりにスケールの違う話をするので、僕は思わずポカンとしてしまった。


「賢人、勉強のし過ぎで遂に狂気ったか。」


「至って普通だけど?!……あっでも、急な話しすぎてやっぱり取り乱しちゃうよね。ごめん。」


「い、いや、別に責めているわけじゃなくて……え、えっと……僕もさっきこの記事見つけて、興味深い内容だったからつい見入っちゃったんだ。でも『止める』って…?」

やっぱり僕って、人に謝られるの苦手なんだよなぁ。


「まぁ少し大袈裟に言ったけど、要はこの小惑星について研究してみない?ってこと。」


「それだとさっき言ってたことと大分話が変わってくるな……本当に大袈裟な人だよ君は。」

僕は少し鋭くツッコむ。

しかし『小惑星の研究』か……結構面白そうなんだよな。

人生何事も挑戦って言うし、少しやってみようかな。


「その提案、僕が乗るよ。」

僕は本当にチョロい。


「よし、じゃあ取り敢えず明日放課後、天文台室に集合で!」


◇ ◇ ◇


賢人との話を終えて、僕が部屋に戻ると彗はいなかった。僕らは一部屋を二人で分割しているため、僕に言われた通り勉強をしているなら此処にいるはずなんだけど……


「彗さーん、昨日買ってきたレモネード飲むかー!」

僕は彼女の好きな物は大体把握していたので、それらを使っておびき寄せようとした。

──しかし、僅かな反応すらない。

そして手当たり次第で探してみることにした。キッチン、トイレ、バスルーム、各部屋、押し入れ……おっと、いた。

彗は押し入れでうずくまっていた。


「どしたの?彗。」


「いやだって、にぃにがまだ子供扱いするから……」

恐らく彼女は、俗に言う『ブラコン』なのだと思う。他の連中からすると、()()()()()なのにブラコンはギャップ萌えってやつを起こすだろう。おっと、今の世の中でそれは偏見だよな。


「まぁ、…まだ彗は義務教育だし。」

刹那、彼女は鋭く睨んできた。地雷を踏んでしまったみたいだ。言葉の選択には気を付けねば。


「そーゆーにぃにだって、まだ仮面サイダー見てるくせに。」

彗は拗ねた口調でそう言った。


「お、おい!今の時代にそれは叩かれるぞ!!」


彼女は僕の言い分を無視し

「いや二人しかいないし……じゃあ高校に入ったら…私の事、ちゃんと一人の女として見てくれるの…?」



「なんだ、その変な言い方。……まぁそうだな。まずはその、『にぃに』呼びをやめることだ。」

僕は笑顔でそう答えた。


「何それ……ばか。」

まぁこれも、刺さる人には刺さる言葉なんだろう。


「そうだ、彗。今日流星群あるってよ。」

僕はふとそれを思い出した。確か今日はしし座流星群だったはず。


「えー!本当にー!?」

僕がそう言うと、彼女はまるでさっきとは別人のような形相で近寄ってきた。こいつの情緒はエベレストか?


◇Our normality ends◇〉〉〉


「流星群って言ってもさぁ、私毎回見るタイミング悪くて、まだ一回も見たこと無いんだよねぇ。」

ふと彗はそう言ってきた。


「彗、流星群の日はいつも見ようと頑張ってるからな。流石に三階の窓から身を乗り出した時は生きた心地しなかったけど……」

僕が苦笑しながらそう言うと、彼女は肩を力一杯に叩いてきた。痛いが?!


「よーし、何か今日は見れそうな気がするから動画撮ろ〜」

彼女はそう言った後、スマホを構えて動画を回す。


しかし、動画を回してから1分、2分、10分、15分、───一向に見える気配が無い。そして彗は、動画を止めた。


「もー、容量重くなったし……ここまで来たら私、見えるまで勉強も何もしないから。」

こいつは本当に変なところで意地を張る。


刹那、彗の見てないところで空にほんのりと淡い光が一本流れた。その光は時間経過と共に濃色になっていく。


「ちょちょ、流れ星!!!彗、流れてる!!」


「え、えー!タイミング悪いってばぁ……!!」

彼女は、流れ星を横目でしか見えなかった。


しかし、その流れ星はまだ流れている。

何ならその光は、更に彩度を増していく。


「なんだ。流れ星って、結構長いじゃん!」

今流れ星に釘付けになっている、大星 彗は無知だった。



これは─────流れ星じゃない。



刹那、民衆の悲鳴と共に重い衝撃音が響いた。

これは、…尋常じゃない被害が出そうだ。


そして彗は、まだ流れ星に釘付けになっていた。いや、呆然としていたんだ。


◇ ◇ ◇

【挿絵】にゃんコ様


※この物語は、実際の出来事とフィクションを織り交ぜて構成したものです。


アドバイス、誤字報告の程宜しくお願いします。

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