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物事はいつも彼女から  作者: 七灯
第四章 文化祭
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第95話 文化祭二日目 其の三

「これが、私の気持ちです。誰にも言わなかった、私だけの気持ちです。私は、歩くんの(こころ)になれましたか?」

「…うん。奏がいなかったら、もう折れてるかもしれないけど。そのくらい、奏は僕の(こころ)になってるよ。」


奏の話を聞いて、記憶にはないが、奏が言うこたなので、間違ったことではないということを実感する。

もしかしたら、他の人にも同じようなことをしていたのかもしれないが、相手が言ってこないなら、こちらが気にすることではないのだろう。

奏は「あの…」と何か呟こうとしていたので、耳を傾ける。しかし、話し出そうとしないので、こちらから聞くことにする。


「どうしたの?」

「え?あ、えっと、星野さんと白瀬さんに聞かれてたら、からかわれるなと…」


奏が発言した瞬間、背にしていた本棚の向こう側で誰かがぶつかったらしく、聞きなれた声で「痛!」と聞こえた。


「今のは?」

「多分、真冬…?」


急いで反対側を見に行くと、後頭部を押さえている真冬とそれに動揺した夏樹がいた。


「あ、えっと、どうも…?」

「もう!なんでいるんですか!」


その後、司書の先生に注意されて、図書館の椅子に座って落ち着くことにした。



 夏樹から事情を聞いて、奏が一言。


「はぁ。それで追いかけて来たんですか…。」


僕も奏と同様にただ『からかいに来た』という理由にため息をついた。


「あれ?でも、姉さんは?」

「そういえば、どちらへ?」


二人は姉さんもついてきたと言っていたが、姉さんの姿が見当たらない。


「いやぁ。奏ちゃんもいい人だねぇ。」

「うわっ!?」

「ひゃ!?」


いつの間にか夏樹と真冬の後ろにいた姉さんが突然話し始めて、夏樹と真冬を驚かすことに成功していた。


「二人とも驚きすぎじゃない?」

「いやいや、さすがに今のは驚きますって。」

「そうですよ。いなくなったと思ったら、いつの間にかいるし、どこいたんですか…?」

「え~?ちゃんといたよ?奏ちゃんの話を聞いてたときも、本の隙間から見てたから、ちゃんと見えたかどうかは置いといて、みんな見てたから。」


姉さんがいたことの説明をするも、夏樹と真冬は信じられないようで、姉さんに疑いをかけていた。


 結局、姉さんへの疑いは晴れず、お昼になっていたので、お昼ごはんの調達に行くことにした。

夏樹と真冬は食堂で知り合いと会うらしく、図書館を出てすぐに別れることになった。


「そういえば、忍さんって髪は切らないんですか?長いと洗うとき大変だと思いますし。」

「それはそうなんだけど、冬場は暖かいからやめられないんだよね。あ!あと、弟くんは長い方が好きだよ。」

「「!?」」


奏は少し伸び始めた髪の先をいじりながら、夏樹「そうなんですか…?」と上目遣いで聞いてくる。

そんな奏を見て、姉さんは「今なら私も弟くんとれちゃうかも?」と奏を不安にするので、奏もぎゅっと腕を握って、「歩くんは渡しません!」と宣言した。

(周りからの視線が痛い…!)



 周りから視線を受けつつも、『焼きそば五十円引き!』と書かれた紙が廊下に貼ってあった二のAの教室に入った。

教室に入った途端、焼きそばの匂いと受け付けの男子生徒の大きな声で出迎えられた。


「いらっしゃいませぇ!ご注文はなんでしょうか!」


注文には焼きそばしかないのだが、何を注文するのかを聞くのかと思いながら、「焼きそば三つでお願いします。」と言うと、男子生徒は「あいよー!焼きそば三つ!」と鉄板で焼きそばを作っている生徒たちに向かって大きな声で連絡を伝える。

男子生徒が連絡をしてから5分もしないうちに、四百五十円と三つの焼きそばと割り箸を交換できたので、座って食べられるところを探すことにする。


「…もういっそのこと、階段で食べる?」

「そうですね。」


座って食べられるところを探していたのだが、わざわざ食堂まで行くのも時間の無駄に感じ、僕も姉さんの意見に賛成すると、すぐさまUターンしてあるところへ向かう。



 僕らは屋上に続く階段の踊り場の一段上に移動してから、奏と姉さんは


「荷物、お願いしますね?」

「すぐ戻ってくるから。待っててね。」


とそれぞれ言い残し、荷物を置いて手を洗いに行ってしまった。

(また何かに巻き込まれないと良いけど…)



 忍さんと手洗いをしに廊下の手洗い場に来てから周りの視線をいつもより感じました。


「あの、忍さん。」

「ん?どうしたの?」

「周りの視線が痛いというか…」


忍さんは「昨日と一緒じゃない?」と気にしていないようです。

多分、皆さんは忍さんの長いポニーテールを見ていると思うのですが、私も最初に見たときはさすがに長いと思ってしまいました。


 いつまでも歩くんを待たせるわけにはいかないので、手洗いを終えて歩くんのところへ戻ります。

廊下を歩いていると、忍さんが「奏ちゃんは告白とかされるの?」と突然聞いてくるので、最近は少なくなったことを言うと、無理矢理な人や手を出してくる人もいるから気をつけるようにと心配されました。


 忍さんは歩くんのところへ戻ると、いつものように歩くんをからかってみたり、ふざけてみたりして、歩くんのツッコミをもらって嬉しそうにしていました。

忍さんが歩くんで遊んでいるのを見ていると、私も少し歩くんで遊びたくなってきます。


「歩くん。はい、あーん。」

「え、あ、あーん。ん?」

「ふ、ふふっ。」


割りばしを咥えたまま、目をパチパチとする歩くんを見て、思わず笑ってしまいました。

私たちを見て、忍さんは「おお~。」と感心してくれました。


「弟くん、餌付けされたね。」

「食べた瞬間に気づいた…」

「なんでそんなに残念そうなんですか…?」


歩くんは少し頬を赤くして顔を逸らしてしまいました。また焼きそばを歩くんの口元まで運ぶと、歩くんは目を合わせないまま焼きそばを食べました。

…やっぱり歩くんは面白い人です。



 奏に一パック分餌付けされて、ようやく恥ずかしい気持ちが消えた頃、奏が焼きそばを食べ終わり、パックのゴミは二のAの教室の前で回収してもらい、体育館に移動した。


 体育館にはやはりというか、女子生徒が多く、劇の始まりを待っていた。


「いっぱいいるね。」

「多分、部長が劇に出るからじゃない?」

「ああ…。」


姉さんが察したような声をあげると、『まもなく三のEによる、劇が始まります。』とアナウンスがされ、前の方に固まっている女子生徒たちとは逆に、静かに席に座って劇が始まるのを待つことにした。

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