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物事はいつも彼女から  作者: 七灯
第四章 文化祭
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第93話 文化祭二日目 其の一

 文化祭二日目、つまり、今日で一年生の文化祭が終わってしまうということだ。

そんな中、奏と姉さんと僕であまり人のいない体育館へと足を運んでいた。


「すごい劇だったね。」

「はい。一時間があっという間でした。」

「オリジナルらしいし、構成を考えた人はなかなか考えたんじゃないかな。私の期待以上だったね。」


朝イチの二のCの劇を見終わって、間の時間で劇の感想を言い合っていた。

奏は昨日お風呂に入ってから「歩くんが怪我しないようにです!」と言って手をつないでいて、今も右手は奏の両手に覆われている。


 あまり人からは見られたくないのだが、奏はそんなことを気にすることなく引っ付いてくるので、痛い視線を感じることになる。というか、だんだん視線の数が増えていっている気がする。

姉さんの方を見ると、姉さんは「どうしたの?」と小さい声で聞いてくる。それにならって僕も小さい声で聞くことにした。


「なんか、人増えてない?」

「…確かに。次が吹奏楽部と合唱部のパフォーマンスだからとか?」

「なるほど。音楽なら誰でも楽しめるし、可能性はあるね。」


姉さんの説明に納得していると、奏が肩を叩いてくる。奏の方を向くと、頬に奏の人差し指が触れる。


「…引っ掛かりました。」

「あはは。歩固まっちゃたよ?」

「おーい。春川?大丈夫か?」


僕と奏の後ろの席に夏樹と真冬が座っていて、真冬はいたずらが成功して嬉しそうだった。


「いつからいたの?気づかなかった。」

「すぐに来たばっかりだよ。忍さんは気づいてたみたいだけど。」


姉さんを見ると、「あはは。」と笑ってごまかそうとしていたので、「次からは教えてよ。」と言うと、「その気になったら…」と返された。多分、教えてくれないだろう。


「それで、星野さんと白瀬さんは、吹奏楽部と合唱部のパフォーマンスを見に来たんですか?」

「え?いや、歩と秋山さんをからかいに来ただけだよ?」

「俺も同じく。」


二人の回答に「えぇ…?」と困惑した奏に二人の攻撃が始まる。


「秋山さん、ホント歩のこと好きだよねぇ。今だって手握ってるし。」

「そ、その、これは…!」

「いやいや、大丈夫秋山さん。俺らも春川の隣は秋山さんだって分かってるから。」

「ち、違…いませんけど、これには理由があって!」


奏が手をつないでいる理由を話すと、二人はすぐに納得していた。


「へぇ。歩たちもやったんだ。成績が良い方がなんでも命令できるやつ。」

「それで、春川は謝った回数分お願いを聞くって…。さすがだよ秋山さん。しっかり春川を『観察』してただけあるね。」


夏樹の言った『観察』の部分が気になったので二人に聞くと、二人の体が少し跳ねた気がした。

二人から奏と付き合う前までにしていたことを聞き、奏と関係を持てたのは二人のおかげだと知った。

そして、無自覚にもそのことを全く忘れていることも分かった。


 だが、なぜ奏が僕のことが好きになったのかが分からなかったので、奏になぜ僕が好きになったのかを聞くと、奏は「そ、それは後で話しましょう!パフォーマンスが始まります!」と急に話を逸らした。



 奏が話を逸らしたせいで奏がどんな理由で好きになったのかが気になって、吹奏楽部と合唱部のパフォーマンスを集中して聴けず、気づけばパフォーマンスは終わっていた。


「惹き付けられる演奏だったね!なつもなんか楽器弾けたらなぁ。」

「えぇ!?俺は何も弾けないぞ!?」

「あはは。君たちもなかなか面白いねぇ。」


僕と奏以外の三人は話で盛り上がっていたのだが、僕と同様に奏も集中して聴けなかったようで、曖昧な相槌を打つことしかできなかったため、パフォーマンスを見終わった生徒たちについていこうと立ったのはいいものの、僕の手を離さないので、そこで静止してしまう。


「ん?奏ちゃん、どうしたの?」

「あ、え、あの…お手洗いに?行きましょう歩くん!」

「え、え?」


そうして僕は奏についていくことになった。

そして、残された三人はというと…


「秋山さん、ホント誤魔化すの下手なんだから。男女で同じタイミングでトイレは行かないでしょ。」

「まあまあ、多分秋山さんもそろそろ話したいと思ってたんでしょ。演奏中もチラチラ春川のこと見てたし。」

「どうする?みんなで跡付ける?」


三人の意思が一致したところで、対象にバレないように移動を始めた。



 僕らは体育館の二階にあるトレーニング室の前でようやく足を止め、床に座った。

入学式で一年生の待機場所がこのトレーニング室だったので、一応あることは知っていたのだが、あまり来ない場所である。


「なんでこんなところに?」

「多分、三人で追いかけてくると思ったんです。見てみますか?」

「え?見るってどういう…?」

「私、これ持ってるんですよ。」


奏が取り出したのは、奏の財布。そして、財布から出てきたのは、あのときと変わらずつけられていたクリップ。


「え!開けるってこと!?」

「ちゃんと閉めれば大丈夫です。ちょっと待っててください。」


奏がピッキングしている間、誰も来ないことを見ていたが、やはりというか、誰も来なかった。


「開きました。」

「…失礼、します?」


誰もいない暗いトレーニング室に入り、窓からさっきまでいた席を見下ろすと、誰も座っていなかった。


「ほんとだ。」

「ほら、早く出てください。誰かが来たら大変ですから。」


奏に急かされるままトレーニング室から出ると、先ほど開けるのに使った形のクリップを鍵穴にさしてクリップを回すと、カチャっと音がなって扉は完全に閉まった。


「これでバレないでしょう。」

「そのクリップ、どうするの?」

「うーん。いらないですし、戻しておきます。」


そう言って奏はクリップを折り曲げて、使う前とほぼ同じ形に戻してから財布に取り付けていた。

なんでも開けられるのではと思い、あまり使わないように言うと、「必要なときだけですから。」とさらっと奏はやることを宣言した。


 一方で、歩と奏を追いかけていた三人はというと、全く二人の姿を捉えられていなかった。


「ここにもいないね。」

「だな。ほんとに二人でトイレ行ったのか?忍さんはどう思いますか?」


振り返ると、さっきまで話していた忍さんがいなくなっていて、ふゆと顔を見合わせる。


「「え!?」」


結局、三十分ほど探し回り、渡り廊下で何かを見下ろしているのを見つけた。


「探しましたよ。忍さん。って何見てるんですか?」

「うん?奏ちゃんが階段上がってきてるなって。ほら、あそこ。」

「え?」


忍さんが指差した先には階段の窓があり、チラッと春川と秋山さんが登っているのが見えた。

いつの間にか忍さんが姿を消していて、辺りを見回すと、図書館がある旧校舎に入っていた。


「二人ともこっち!早く!」

「え?なんでそっちに?見えないじゃないですか。」

「いや、あの子たちは来るから。」


謎の自信を感じて、促されるまま忍さんについていくと、忍さんは階段の踊り場で待機したので、同じようにふゆと一緒に踊り場で待つことにした。

遅れてしまい申し訳ありませんでした。

明日からは頑張ります。

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