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物事はいつも彼女から  作者: 七灯
第四章 文化祭
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第87話 文化祭一日目 其の四

 11時半をまわり、次の当番の倉敷さんが来たのだが、もう一人が来ていない。全体に送ったメモを見ると、倉敷さんと同じ時間に当番の予定がある人は、北村さんだった。


「あの、秋山さん、春川さん。当番、お疲れ様でした。変わります。」

「でも、一人だと大変じゃないですか?私、お手伝いしましょうか?」

「そ、そんな。皆さんの時間を、使うわけには…!」


倉敷さんは僕らに迷惑だと思っているらしく、大丈夫だと伝えたいのか、目を閉じて手を顔の前で振っている。


「大丈夫だよ。僕らは適当に回ってるだけだしさ。なら、北村さんが来たら、僕たちが回りに行くのはどう?」

「倉敷さん。そんなに遠慮しないでください。私たちは大丈夫ですから。」


僕と奏が条件をつけると、倉敷さんは「そ、それなら…いい、のかな…?」と(たぶん)了承してくれたので、お客さんの対応をする。


「歩くん。私、お昼ごはん買ってきますね。」

「あ、なら、私も行くよ。奏ちゃん一人だとちょっと不安だしね?」

「な、なんでですか…?」


不安だと言われた奏は少し戸惑いつつ、姉さんに聞く。姉さんは僕に説明を求めてくる。


「女の子一人は危険ってこと。今日は知らない人もいるんだし、奏は可愛いから狙われやすいの。姉さんがいれば相手の身に心配いないといけないくらいには安心できるから。」

「そうですね。では、当番は任せます。行きましょう忍さん。できるだけ早く帰ってきます。」

「うん。いってらっしゃい。」

「はい。いってきます。」


奏と姉さんがお昼ごはんの調達をしに教室を出ていくと、倉敷さんが「あの…」と何か聞きたそうにしていたので、「どうしたの?」と聞き返すと、倉敷さんは少しいいとどまったが、やはり言うようだ。


「お二人って、お付き合い、されているんですよね…?」

「え、うん。」

「あの、少し、思ったのですが、付き合う、というより、すでに夫婦、みたいだなって、あ、本当にすみません!わ、私が思っただけなので!不快に思われたなら、謝罪でも、させていただきます!」


頭を下げる倉敷さんに少し驚き、周りの人が見ていることに気付き、急いで頭をあげさせる。

「倉敷さん、謝罪なんていいから。ほら、顔をあげて?でも、僕はそう思ってくれる人がいて嬉しいな。前までは奏の隣に立てるか不安だったからさ。」

「そ、そんな。秋山さんの隣は、春川さんしか、いませんよ。」


倉敷さんに認められていることを知れて少しほっとしていると、倉敷さんは「そういえば…」と呟く。


「ここに着くまでに、他校の可愛い方が来ていると、あの、聞いたんですけど…秋山さんと、一緒に行かれた方、ですかね…?」

「ああ…。あの人は僕の姉さんだから…」

「…え?」



 一方その頃、奏と姉さんはというと…


「ねえねえ、君、可愛いね。どこ高出身?」

「…なんですか?」

「おお、怖い顔。可愛い顔が台無しだよ?いいじゃんちょっとくらい教えてくれても。」


胸あたりに伸びてきた手をはじくと、男子生徒は血相を変え、「なんだ、お前。いてぇな…!」と睨んでくる。


「…。」

「おうおう、なんだ?やろうってか?」

「忍さん、あまり周りに迷惑のかかることは…!」

「分かってる。奏ちゃん。おんぶされて。」

「え?」

「走るから。」

「なんだ、そっちの子もやるのか?」


男子生徒が指を鳴らしている間に奏ちゃんを背負って、180度ターンしてから走り出す。


「ちゃんと掴まっててね?」

「え?ひゃあ!?」

「は?おい!逃げるのかよ!」


とりあえず階段まで行き、男子生徒を振り切って、奏ちゃんに二のAと二のDの教室の場所を聞く。


「い、一階上です。」

「了解。じゃ、行くよ?」

「え、待って、ひゃ!?」


六段飛ばしで階段を上り、二歩程度で踊り場につき、奏ちゃんを降ろす。


「ここからは大丈夫。とりあえず、トイレ行くよ。」

「え、あ、はい…?」

「ボーッとしない。ほら、行くよ?」


奏ちゃんを抱えて今度は八段分を一気に上る。やはり、抱える方がいいかもしれない。



 各階のトイレの場所は同じなのは二階までで確認済みで、すぐにトイレに入り、持ってきていた鞄から服を取り出す。


「そ、それの中身って服だったんですか!?」

「まあ、変装用だけどね?はぁ。もうちょっとこのお面もつけれたと思うんだけどなぁ。今のところ恋愛おみくじは外れだね。」


胸にサラシを巻きながら、冗談めいたことを言うと、奏ちゃんは少し笑ってくれた。優しい。

その後、奏ちゃんは私の持ってきた服を見て、固まってしまうのだが。


「こ、これ、歩くんのじゃ…!」

「おお、匂いで分かっちゃった?さっすが奏ちゃん。」


一つにまとめていた髪を解いて、服とシャツの間に挟む。奏ちゃんに、シャツから髪が少し出ていることを指摘され、予備で持ってきていた上着に腕を通す。


「これならバレないでしょ。」

「忍さん、別人みたいです。」

「それじゃ、お昼ごはん買いに行きますか。」

「買いにいくなら、食堂や購買が一階にありますけど、どうして三階に?」


実は校舎に入る前、購買を見て、品数が少なく、売り切れる可能性が高く、幟に描いてあった屋台の二のAの焼きそばと、二のDのホットドッグを候補に入れていた。なので、先程奏ちゃんに場所を聞いたのだ。


「奏ちゃんは焼きそばかホットドッグなら、どっちがいい?」

「ゴミの捨てやすさ的にはホットドッグでしょうか?」

「うん。合理的な判断だね。じゃ、二のDに行こうか。」

「え、二のDは屋台としか…」

「ホットドッグ専門だけどね?」


そう言うと、奏ちゃんは困惑していた。それもそのはず、私はまだ二のDには行っていないし、三階の廊下にはほとんどいなかった。つまり、みる時間などほとんどないはずなのだ。

結論からすると、二のDの教室からホットドッグを持った生徒が出てきていたのをほんの一瞬見て、二のDの前の廊下にはホットドッグを持った人が多く、それより奥では焼きそばを持った人が多かった。幟のことも考慮すると、二のDはホットドッグ専門店だと確信できた。

そのことを少し説明すると、奏ちゃんは理解しているのかしていないのかよく分からない反応をしてくれた。(やっぱり奏ちゃんは何しても面白いから飽きないなぁ。)


 そうして、実際行ってみると、二のDはホットドッグ専門店、二のAは焼きそば専門店だった。


「す、すごいです。当たってました。」

「まあね?あ、トッピング設定できるらしいよ?奏ちゃんはどうする?弟くんのは私がやっておくから、奏ちゃんは自分の分だけ決めればいいよけど…」


私がいいかけたときに、奏ちゃんが「なら…」と言う。


「私、歩くんのと一緒のにしたいです。」

「おっけー。じゃ、奏ちゃんは全部乗っけたやつ作ってくれる?」

「え?全部ですか!?」

「うん。配置は奏ちゃんに任せるよ。」


奏ちゃんは少し戸惑ったようにしていたが、ちゃんと全部乗せてくれた。六百円を店員係に渡してお店を出ると、焼きそば店の前にさっき絡んできた生徒がいたが、無視して弟くんのところに戻る。



 弟くんはお昼なのに忙しそうにお客から銃を受け取っていた。


「ただいま~。」

「あ、おかえり、って姉さん、今度は何があったの…?」


弟くんはすぐに変化に気付いてくれるので、変装する身としてはうれしい。


「いやぁ、ちょっとめんどくさいのに絡まれてね。バレたくないから変装してきた。」

「変装て。っていうか、それ僕の服じゃないの?」

「わぁ。弟くん女の上着の下なんかじろじろ見ちゃ駄目だよ?」

「…はぁ。で、何買ってきたの?」


弟くんをからかってみたのだが流されてしまった。最近弟くんのスルースキルがさらに上がってきたような気がする。なんでだろう。


「ほれ、ホットドッグ。ケチャップだけにしておいたから、食べやすいでしょ?」

「姉さんのはいっぱい乗ってるんだね。」

「うん。全部乗ってる。いいでしょ。」

「…そう、だね?うん。よかったね。」


やっぱり弟くんのスルースキルが上がっている気がする。


 弟くんはお客が来ないことを確認してから、ホットドッグを食べ始めた。

弟くんと一緒に当番をしていた倉敷さんと呼ばれていた子に持っていたクッキーを渡す。


「君も、ちょっと休憩。これどうぞ。」

「え、いいんですか?」

「うん。休憩は大事だからね?」

「あ、ありがとうございます。」


少しお腹がすいていたであろう彼女はクッキーを受け取って、こぼさないように慎重に食べていた。

(弟くんは、いいクラスメイトがたくさんいるクラスになっててよかったな…)

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