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物事はいつも彼女から  作者: 七灯
第四章 文化祭
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第86話 文化祭一日目 其の三

 お化け屋敷に時間を使いすぎて、当番の時間まであと十分もないくらいだ。夏樹のおかげで、当番は奏と一緒にすることとなっている。


「奏、そろそろ時間。」

「ほんとですね。」

「ん?何?二人とも当番?」

「そうなんです。」


奏が肯定すると、姉さんは「じゃ、私も行こうかな」と言って、ついてくるらしい。姉さんらしいといえば姉さんらしい。


一のEの教室に入り、二人で射的の当番をしている服部さんと安藤さんのもとに行く。


「お疲れ様です。服部さん、安藤さん。」

「おお、秋山さん。ん?その方は?」


服部さんは姉さんを見て、奏の友人で他校の生徒だと思ったらしく、奏に聞く。


「春川忍さんで、歩くんのお姉さんです。」


服部さんは姉さんが僕の姉だと知って、少し驚いていた。安藤さんはあまり興味がなさそうだった。


「どうも。いつも歩がお世話になってます。」

「え、あ、いえ、私の方がいつも頼らせていただいてます。特に文化祭の準備のときは…」


姉さんと服部さんがなんだか話で盛り上がっていたので、安藤さんに「時間より早いけど交代するよ。」と言うと、「せんきゅー。」と言って、興味なさげに姉さんの話を聞きに行った。



 射的は案外人気だったようで、予想より多くの景品がなくなっていた。そして、まだまだ人が来る。

そこに朝の放送で聞いた声がかかる。


「やあ。春川くんも、秋山さんもお疲れ様。」

「あ、部長。お疲れ様って、なんですか?その服。」

「ああ。これは演劇で使ったんだよ。今日はもう終わっちゃったから、明日の最後の時間だけなんだけど、よかったら来てほしいな。」


部長は王様のような服装をしていて、廊下を通る生徒たちが足を止め、「キャー」っと声をあげていた。


「君たちは目立ちたくなさそうだし、すぐに終わらせるよ。」

「いいんですよ。部長のペースで。」

「あはは。優しい後輩だね。」


部長から十円を貰い、おもちゃの銃を渡す。弾は先端に吸盤がついた円柱のスポンジで、しっかり当てれば景品が倒れるようになっている。


「三発か…まあ、ほしいのはあれだけだし、十分だね。」

「試射できますけど、どうします?」

「大丈夫。なんとなく分かるから。」

「なら、机に手をつかないようにして、撃ってください。落とした景品が貰えるので、ちゃんと落としてください。」


説明をすると、部長はお祭りでよくある狐のお面に向かって一発撃った。

お面は揺れはしたが、当たった位置が下すぎて、落ちることはなかった。


「下すぎたね。なら、今度は…!」


二発目はお面の上あたりに当たって、お面は少し揺れてから、下に敷いてある毛布に落下した。

廊下から「キャー!」や「素敵!」などの女子生徒の声が聞こえるが、部長はそれを無視して、奏から落としたお面を受け取って、すぐに着けた。

王様の格好に狐のお面…あまり似合っていないが、歓声をあげる生徒たちからすれば似合っているのだろう。


 狐のお面から、少しこもった声で「これ、撃っていいの?」と聞こえるので、「そのまま撃つんですか?」と奏が聞くと、やはり、こもった声で「うん。」と聞こえる。奏は戸惑いを隠せず、こちらを見るので、対応は僕がしよう。


「大丈夫ですよ。ちゃんと狙ってくださいね?」

「任せて。お面があってもそんなに変わらないから。」


そして、三発目はちゃんとお菓子の箱に当たり、当たったお菓子は毛布に落ちる。


「すごいです。お面を着けていても当てられるなんて…!」

「いやいや、あんまり変わらないから、きっと君たちもできるよ。はい、これはあげるよ。」


部長は感情が読めない狐のお面で僕を見て、銃とさっき落としたお菓子の箱を渡してくる。


「え、でも、これは部長が取ったやつだし…」

「いいのいいの。これがほしかっただけだからさ。」


そう言ってお面を指差して、廊下の方に歩いていってしまう。


「じゃ、君たちも文化祭楽しんでね。」


部長は手を振って、教室を出ていくと、集団ストーカーのように生徒たちが後をついていった。

部長は本当に文化祭を楽しめるのか不安になりつつも、その背中を見送った。



 部長と入れ替わるかのように姉さんがやってきて、「お面着けてる人とストーカーみたいな人たちがいたけど大丈夫?」と言うので、奏と一緒に苦笑いするしかなかった。


「じゃあ、私もお面取ろうかな。」

「え、姉さんも取るの?」

「え?だって楽しそうじゃん。」


そう言われれば、引き下がれないので、姉さんから十円を受け取って、銃を渡す。


「えっと、試射できるけど、どうするの?」

「ちょっと弟くん。私もお客さんなんだから、ちゃんと対応してよ。」

「え、あ、うん。じゃないや、はい。えー、では、試射ができますが、どうしますか?」

「ぷっ、ふふっ。やっぱりいつも通りでいいよ。ふふっ。面白いから。」


わざわざしたのに結局変わらずしろと言われ、奏にも少し笑われて、説明が面倒になってきた。


「じゃあ、落としたら景品獲得だから、ちゃんと落としてね。」

「はーい。じゃ、まずは…!」


姉さんは狐のお面に継いで置かれた鬼のお面を見て、しっかりと狙って一発お面に向けて撃つと、お面は毛布に落下した。


「忍さん、すごいです。一撃です。」

「ふふん。これで節分用のお面は確保できたね。」

「それが目的かい。」

「あはは。いいでしょ。大体三円くらいで手に入るんだし。市販品の二百分の一くらいだよ?」


姉さんはお面を受け取り、お面が頭の横側にくるように着け、再び銃を構える。


「んー。まあ、なんでもいいかな。」

「え?」


姉さんは二発連続で撃ち、同じお菓子の箱を落とした。


「じゃあ、これは二人にあげるから、私はおみくじ引いてくるよ。」

「あ、はい。」


奏に銃とお菓子二箱を押し付けて、おみくじにできた列の最後尾に並びに行った。

その数分後には大吉のおみくじと小吉の恋愛おみくじを持って帰ってきた。


「いえーい。大吉。」

「よかったじゃん。っていうか、恋愛の方も引いたんだ。」

「とりあえずだけどね?まあ、小吉だったし、今年もいい感じの人はいないんだろうなぁ。」

「でも、忍さんなら、いっぱい声かけられるんじゃないですか?」


姉さんは少し苦笑いをして、「大体は体目的だからなぁ~。」と言っていた。その後、「弟くんみたいな人なら大歓迎なんだけど。」とわざとらしく奏に言うので、奏は「あげませんよ!?」と引っ掛かっていた。

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