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物事はいつも彼女から  作者: 七灯
第四章 文化祭
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第84話 文化祭一日目 其の一

 文化祭当日、いつもの時間に学校に着くと、いつもこの時間には来ていないクラスメイトが数人いて、景品の準備をしていた。夏樹は射的のリーダーとして景品の監督をしてくれていた。


「おはよう夏樹、朝からお疲れ。」

「ああ、春川も秋山さんも、おはよう。」

「はい。星野さん、おはようございます。」


今いるメンバーを見ると、いつも夏樹と一緒にいる真冬がいないことに気づいた。


「そういえば真冬は?」

「ふゆは寝たいって言ってたから、多分いつもと同じ時間にしか来ないよ。」

「真冬らしいというか…まあ、うん。」

「まあ、春川も秋山さんも、どっちかが先に行こうとしたら絶対合わせると思うけどな。」


夏樹にそう言われて奏は少し顔を赤くしていた。夏樹が「秋山さんが照れている…!」と驚いていたので、「ほんとだ。」と奏をからかったのだが、奏に「歩くんもです。」と言われ、頬に手を当てると普段より熱く感じた。


始業時間の8時半の直前に真冬はやってきて、息を切らしていた。そしてすぐに時間になり、チャイムが鳴り、その後すぐに全校放送が始まる。

そして、その全校放送は聞き馴染みのある声だった。


『皆さん、おはようございます。生徒会長の加藤(かとう)風太(ふうた)です。今日から待ちに待った文化祭が始まります。各クラスの展示や体験、演劇などのクラスの頑張りをそれぞれで評価し、充実した文化祭にしましょう。

それでは、ここに文化祭一日目開始の宣言をします。文化祭一日目、開始!

皆さん、怪我のないよう楽しんでくださいね~!』


陸上部部長が生徒会長だったことを忘れていたのだが、この際分かったのでいいだろう。


「文化祭、始まったね。」

「どうします?」


特に回りたいところを決めていないので、適当に回って、気になったところに入ってみることにする。


「じゃ、俺らは回るところ決めてるから、そっち行ってくる。」

「そゆこと。じゃ、また後で。」


夏樹と真冬は颯爽と教室を出ていってしまい、奏と文化祭を回ることになるのだが、この学園の文化祭では、学校関係者以外の来校が許可されている。ただし、一人あたり二人までで、親や親戚、他校の生徒などを呼ぶことができる。来校した人は事前に生徒から受け取ったチケットを校門でリストバンドと交換し、入場することができる。



 というわけで、僕は姉さんに一枚チケットを渡していたので、下駄箱の前で姉さんを待つ。奏は零さんと雫さんに渡したがっていたが、さすがにお休みを取れなかったらしく、今回は二日とも来れないらしい。


「お、二人ともお待たせ。」

「わぁ。忍さん、すごく似合ってます。」

「そう?」


なぜか姉さんは高校時代に着ていた制服を着て、髪は後ろで一つに結んでいた。


「弟くんはどう思う?」

「…可愛いんじゃないか?」

「…むぅ。」


奏が頬を膨らませていたので、「奏だって、可愛いよ。」と言ったが、それで奏の機嫌が直ることはなかった。


「行きますよ!もう。」

「はい…。」

「あはは。弟くんは大変だね。」


姉さんは笑って僕らの後をついてきて、たまに「ふーん。」と興味があるのかないのか分からない反応をしていた。


 奏が初めて足を止めたのは、アーチェリー体験をしている三のAの教室の前だった。


「アーチェリーって、難しいんでしょうか?」

「う~ん。分からないけど、空いてるみたいだし寄ってみる?」

「そうですね。」


一人百円でできるらしく、姉さんが一括で三百円支払い、三人でアーチェリー体験をするのだが、これがなかなか楽しかった。説明が分かりやすく、ある程度の姿勢維持ができれば大体なんとかなった。姉さんは当たり前のようにパーフェクトを取っていた。…姉さんも初めてだよね?


「あー楽しかった。」

「はい。なかなか楽しかったです。次はどこに行きましょうか。」


姉さんと奏が楽しそうにしていて、さらに奏の機嫌が良くなっていて安心した。この調子なら楽しく一日目を過ごせそうだ。


次に姉さんが寄りたいところを見つけ、そこに入る。入ったところは三のCがやっている占いの館というところで、無料で人の関係を占えるらしい。


 中に入ると、なにやらすごく手の込んだ衣装で目元を隠した占い師の前まで案内される。

大きな青色の水晶玉が机の上に置いてあり、移動しないようがっちりと固定されていた。

占い師に「一人もしくは二人でお願いします。」と言われ、まずは奏と僕で試してみることにした。


「それでは水晶に手を触れて。」

「「はい。」」


奏は僕の上に手を重ね、占い師に水晶玉に触れていないことを注意されて、恥ずかしそうに水晶玉に触れ直した。

特に変化のなさそうな水晶玉を見て、占い師が顔を上げる。


「そうですね…。あなたたちの関係は…」

「関係は…?」

「とても良く、互いを補いあえる関係ですね。それに、互いのことを信頼して、どんな困難にも二人で協力していけることでしょう。」

「良いってことであってます?」

「はい。そういうことです。」


奏は顔を赤くしながら、姉さんと席を変わり、僕の後ろに立ち、結果を見ようとする。姉さんが水晶玉に触れると、青かった水晶玉が分かるほど緑色に変化する。


「!?これは…!?」

「こ、これ大丈夫なんですか!?」


占い師が立ち上がり、僕と姉さんを交互に見てから、席に座る。


「あなたたちは、家族に匹敵するくらい仲がよく、今後とも仲が良いでしょう。」

「「…(家族なんだけどなぁ)。」」


そして、姉さんが水晶玉から手を離すと、水晶玉は青色に戻った。どうなっているのか仕組みがよく分からない水晶玉に困惑しつつも、席を立ち、奏と入れ替わる。

再び姉さんと奏が水晶玉に触れると、今度は水晶玉は色が薄くなり、透明に近い青色になった。


「あなたたちは、一つの目標に協力できるパートナー的な存在になることでしょう。」

「へぇ。よかったね。奏ちゃん。これからも協力しようね。」

「はい。頑張りましょう。」


何か二人の間で友情が成長した気がするが、気のせいなのだろう。


 占い師の方にお礼を伝えて、教室を出ると、隣の三のDの教室の前の廊下にすごい行列ができていた。そして、その列の先頭に近い位置に夏樹と真冬が並んでいた。


「あ、歩だ。」

「ん?あ、春川。って、誰その人?」

「私は歩の姉の春川忍です。いつも弟くんがお世話になってます。」

「あ、こちらこそ。えっと、どこの高校ですか?」


夏樹は姉さんの服装を見て高校生だと思ったらしく、姉さんに聞き、姉さんが夏樹と真冬の耳元で所属大学を言って、二人は呆気にとられていた。


「す、すごいですね…」

「いや、ホントに。歩も頭が良いから、センスあると思いますよ!」

「あはは。僕のことはいいから。っていうか、これは何の列なの?」


夏樹たちが並んでいるのは三年生の教室の前。きっと先輩に会いにきたのだと思うのだが、ここまでは列を作ることはまずないだろう。


「これはね、メイド喫茶だよ。」

「…メイド?」

「喫茶?」

「え、二人とも知らないの?ほら、見てみてよ。」


真冬に勧められるまま教室の中を見ると、メイド服を着た生徒たちが料理を運んでいた。そして、その奥あたりで写真撮影をしていた。


「なんで写真撮影を?」

「ふっふっふ。歩も秋山さんもなんとも分かってないなぁ。あの写真撮影ではメイド服が借りれるのだよ!」

「「…?」」

「歩はなんとも…」

「いや、いいから。えっと、つまりメイド服が着たいと?」


また同じ内容を話すと感じ、真冬が話す途中で割り込む。真冬が「最後まで言いたいのに…」と言っていたがそんなことは無視させてもらう。


「まあ、そういうことだ。」

「…まあ、頑張れ。」


そう言って、列から離れようとすると、真冬に腕を掴まれる。


「ちょっと待ってよ!歩も秋山さんのメイド服見たくないの!?」

「!?」


奏がびっくりしていて、周りを見ると、奏を見ていた生徒たちと目が合い、その生徒たちはすぐに目を逸らす。


「ここでは嫌だ。奏が他の人に見られるから。」

「おお。独占欲だねぇ。あ、ちなみに男性用のもあるらしいよ?秋山さん。」

「そ、それは…あ。」


期待のこもった眼差しが向けられ、奏から目を逸らすと、「今日は遠慮しておきます。」と行って、その場を離れた。真冬を含め何人かの生徒は悔しそうにしていた。離れてよかった。

年末だったので、二つほど投下しておきました。年始からは一つに戻ります。ごめんなさい。

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