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物事はいつも彼女から  作者: 七灯
第三章 文化祭まで
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第83話 永遠の約束

 三者懇談と文化祭準備が淡々と進んでいき、気がつけば、ほとんどの人が三者懇談を終え、文化祭の出し物はほとんど完成していた。相変わらず、倉敷さんはお面のチェックに忙しそうだった。

僕たちのクラスの三者懇談の最後は15時に終わるはずなので、そこから出し物を教室にセットすることとなっている。


 三者懇談を最後に割り振られていた夏樹が空き教室に戻ってくると、「これから移動するぞ!」と意気揚々と空き教室にいる人全員に聞こえるように言うと、それぞれ出し物使う道具や部品を教室に運んで行く。

そして、空き教室には15個のお面が残された。


「えっと、お二人とも、私の、やりたいことに、付き合って、いただいて、本当に、ありがとうございます…!」

「いいんですよ。倉敷さん。みんながやりたいことをするのが文化祭ですので。」

「…!ありがとうございます。秋山さん。それに、春川さんも…!」


倉敷さんは満足そうにしていたので、本当になくさなくてよかったと思う。かといって、お面を担当したのは倉敷さんと奏、そして僕の三人だったので、みんなというほどみんなではないのだが。


「そういえば倉敷さん、一ついいですか?」

「えっと、なんでしょう…?」

「これ何円で売るつもりなんですか?」


確かに、『お面売り』というので、販売するのが目的だったのだろう。


「えっと、何円なら、いいんでしょう…?」

「「…え?」」

「あ、えっと、そこまで、考えて、いなかった…、というか、えっと、そんな、感じ、です。すみません。」


販売をする場合は、生徒会にクラスごとに最大収益を伝える必要がある。

なので、とりあえずお面は一個百円で10個ほど売る予定だったので、お面売りからは千円、射的(3発分)とおみくじも一回十円で、おみくじは千本で一万円、射的は当日来る人数が分からなかったので、一日百人と計算して、二日で二百人として、二千円で、計一万三千円としていたのだが、お面の数が予定より多くなってしまった。

別に最大収益を超過しても、収益はすべて学園に寄付されるので問題はないのだが、部長の話だと、毎年適当に報告するクラスがあり、少しでも超過すると、生徒会と先生方から何か言われるらしい。


「以前と同じように百円でもいいんじゃないですか?さすがにおみくじ千本全部引かれることもないでしょうし。」

「うん。奏の言うとおり全部は引かれないと思うし、倉敷さんが良ければ、それで。」

「あ、でも、どうせなら、射的の景品にしたら、どうですか…?」


確かに、射的の景品にすれば、もしも当日射的に多くの人が来ても、射的百回分は補える。奏と顔を見合わせて、奏もいい提案だと思ったらしいので、倉敷さんの意見を採用することにした。



 お面を5個ずつ持って教室に戻ると、なにやら言い合いが発生していた。言い合っているのは、真冬とあまり関わりたくない北村くんだった。


「だから、当日人が来たときに並べないでしょ!」

「いいだろおみくじなんて。射的がメインなんだからよ!」


夏樹が仲裁に入ろうとしていたのだが、なんともならないようだ。近くの机にお面を置いて、奏と状況整理へと向かう。


「何があったんですか?」

「…ちっ。」


奏が二人に聞くと北村くんは僕を見て、舌打ちをして鞄を持って帰っていってしまった。


「大丈夫ですか?歩くん。」

「こういうことは慣れてるから大丈夫。」

「…そう、ですか。えっと、白瀬さん、何があったんですか?」


奏はギクシャクとした様子だったが、まずは文化祭の準備をすることを優先する。


「場所取りで少し揉めちゃってね?北村さんが言うことも間違ってはいないと思うんだけど、もともと二つやるって言ってたんだから、全部を射的に使わないでしょ?って言ったら怒っちゃって。」

「そうでしたか。ごめんなさい。場所まで決めていればこんなことには…」

「いやいや、秋山さんが悪いわけじゃないから。ね?謝らないで。」


真冬は「それより、場所は決まってるの?」と聞いてくるので、奏の代わりに伝えると、残ったクラスメイトはてきぱきと動き、17時には景品を並べる以外の作業が終わっていた。

景品を並べるのは当日を予定していたので、作業の終わりの声をかけると、ほとんどの人は帰っていった。

残った人はいつもの四人だ。


「さっきは大丈夫でしたか?」


奏が心配して寄ってきて、周りを気にせず僕を抱き締める。


「わ、奏、夏樹たちが見てるって。」

「星野さんと白瀬さんにはいいんです。信頼してますから。」


夏樹は少し照れたらしく、顔を逸らし、真冬はなぜか僕らを見て嬉しそうにしていた。


「それじゃあ、後は二人の時間を。ほら行くよ。なつ。」


なぜか二人とも奏に親指を上に立ててから帰っていった。

別に学校ですることは終わったので、鞄を持って帰ろうとすると、奏に呼び止められる。


「あの、私用事があって。ついてきてくれませんか?」

「うん。いいけど。」


奏が助けを求めるのは珍しいので、何か困ったことがあったのではと思い、帰る支度をして教室を出た。



 奏と一度一階の職員室に寄り、教室の鍵を閉めた。その後、もう一度職員室に寄り、そのまま帰るのかと思いきや、奏はまた階段を上っていってしまう。

階が上がっていっても、奏は廊下を歩くことなく、屋上の扉の前まで来てしまった。


 奏はためらいなく、屋上の扉を開いて進むので、僕もついていく。

奏は僕が完全に屋上に入ってから振り向き、「歩くん。」と名前を呼ぶ。


「なんで屋上まで?」

「覚えてないんですか?私の手紙。」


屋上まで呼ぶことを書いた手紙なんて貰っただろうかと考えていると、奏が手紙を取り出した。そこには見たことが文章が書かれていた。


[文化祭までに問い自体が分からないようでしたら、文化祭事前準備最終日の17時半から18時まで学校の屋上でお待ちしております。]


「これです。」

「…!」

「思い出しましたか?」

「うん。でも、問いには答えたけど、なんで屋上に?」

「そ、それは…。」


奏は言い淀んでしまい、続きを聞くことはできなかった。

奏は屋上の端のフェンスまで移動し、僕はそれについていく。


「歩くんは、住んでいた町は好きですか?私は、歩くんみたいな仕打ちをされたことはないので、悪いところを探す方が難しいんですけど…」

「…本音を言えば、嫌いなんだろうけど、でも、奏に一回は見せてあげたいとも思うんだ。」

「でも、それは歩くんを虐めていた人に会うかもしれないし、歩くんに負担が…!」


奏が心配することはもっともなのだが、それでも、一度は奏をつれていってあげたいと思う。


「なら、そのときは奏が慰めてよ。奏がずっと隣にいてくれるなら。ほら、行くよ。先生にばれたら大変だし。」


屋上は転落防止のため、先生の許可がなければ入れなくなっているのだが、たまに入る生徒がいるので、その都度全体に入らないように放送が行われる。

そして、僕が屋上から出ようとすると、奏が追いかけて手を掴んだ。


「…ずっと一緒に、いてくれますか?」


奏は俯いたまま、不安そうに聞いてくる。握られた手に震えを感じるのが、一番の証拠だろう。


 奏を引き寄せてそのまま抱き締めると、少し見上げた奏と目が合う。


「この前、奏は『僕しかいない』って言ってたよね?それは、僕も一緒なんだ。僕だって、奏しかいないよ。」

「…はい。」


奏の手から手を離して、小指を出す。奏は何をするのか分かったようで、小指を交わらせてゆっくりと指を曲げる。


「約束するよ。僕が奏を幸せにする。」

「私も、歩くんを幸せにします。」


交わった小指が離れ、逆の手の指に交わらせる。僕の方からすることはあまりなかったので、奏に「歩くんから求めてくるなんて珍しいですね。」とからかわれた。


 屋上の扉をしっかりと閉めて、屋上を後にした。学校を出るまでに先生方に会わなかったので、きっと疑われることはないだろう。



 その日の奏はいつもより甘々しようとしてきて、耐えるのに精一杯だったことは、きっと姉さんも知らないことだろう。

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