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物事はいつも彼女から  作者: 七灯
第三章 文化祭まで
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第82話 人は車だった?

 六者懇談が終わり、夏樹にそのまま帰ることと、射的とおみくじは夏樹と真冬に任せたといった内容を文章で伝えると、以外なことにOKと描かれた犬のスタンプが返ってきた。


 駐車場まで零さんと雫さんを見送り、姉さんの先生に対する愚痴を聞きながら三人で歩いて帰った。



 いつもよりかなり早い時間に帰ってきたため、少しの間、制服のままソファーに座って姉さんの愚痴の続きを聞くことになった。


「だって、あの人、私が身分証見せたら、T大生なはずがないって怒ってさぁ!」

「ああ、それは先生が悪いね。」

「…んぅ。」


姉さんの罵声が飛び交う中、奏は気持ちよさそうに僕の腕の中で寝ていた。奏には、後でもっと感謝しないといけないと思い、姉さんの話を聞きつつ、ゆっくりと奏の頭を撫でていた。



 その後、姉さんの怒りも鎮まり、姉さんは「体動かしてくる。」と言って部屋を出ていった。部屋にゆっくりとした空気が流れ、ほとんど誰も動かない部屋で、奏とソファーに挟まれながら本を読んでいると、耳元から「うにゅ…」と可愛い声が漏れて、奏がそろそろ起きることに気がついた。

本をテーブルの上に置いて、奏の目覚めを待つ。少しすると、奏は目を覚まし、「おはようございます?」と疑問形で挨拶して、腕の中で寝ていたことを理解して少し恥ずかしがっていた。


「起こしてくれてもよかったのに…」

「気持ちよさそうに寝てる奏は、さすがに起こせないなぁ。奏の可愛い寝顔も見れたし。」

「ちょ、ちょっと、どういうことですか!?」


奏はさっきよりも赤くなって、逃げようとするが、僕の腕によって逃げられない。


 奏に感謝しようと思い、逃げようとする奏を抱き締めると、奏は少しびっくりしたようだが、すぐに、「今日は甘えたいんですね。」と頭を撫でてくれる。そういう意味ではなかったのだが、嬉しいのでそういうことにしておく。


「良いですよ。いっぱい甘えてください。」

「奏、ちょっと押さえる力が強くっ…!」


奏に思いっきり抱き締められて重心がずれたことで、そのままソファーに二人で倒れる。もちろん奏に負担が無いように奏を支えながら。

奏は僕から離れようとはせず、そのまま体を預けてくる。


「やっぱり、歩くんは優しいですね。」

「奏が怪我するのが一番心配だし…。」

「そうですか。でも、私だって、歩くんが怪我するのは心配なんですよ?」


結局お互い様だと二人で笑うと、奏が「そういえば」と前置きした。


「私たちも、ここでできる文化祭の準備、しませんか?」

「そうだね。本来帰るつもりはなかったからね。やろうか。」


奏と一緒に人数配分の確認や、予備の確保を紙にまとめていると、奏が晩ごはんを作っていないことに気づいて、明日の朝までの支度をする事となった。



 晩ごはんを作っていると、奏が何か疑問を持ったように話しかけてくる。


「歩くんって、料理ができるのに、なんで最初の頃はコンビニのおにぎりばかり食べていたんですか?」

「え?だって、一人用に作るより、買った方が安く済むんじゃない?」

「それは歩くんが食べないだけじゃないですか。だからそんなに細いんですよ。」


奏はジト目を向けてくるので、苦笑いで誤魔化すと、「まったくもう…」と呆れられてしまった。

奏が心配してくれるのはありがたいのだが、無理なものは無理なので仕方ないと心の中で思うと、奏に「やらない方がもっと駄目ですよ。」と言われた。もしかすると、秋山家の人間は人の心を読むのが得意なのかもしれない。



 晩ごはんを作り終わり、明日の朝ごはんの準備もしたので、再び文化祭について考える。

考えていると、やはり、一つ悩むところがある。


「…結局、お面売りって何なんだろうな。」

「えっと、私もあんまりよく分かっていないというか…。何なんでしょうね?」


よく分からない事をするのはどうかと思い、頭を悩ますが、考えたところでどうしようもない。


「倉敷さんは結構やる気があるみたいだし、やらないのはちょっと気が引けるというか…。」

「そうですよね。でも、誰を担当に回せば良いんでしょうか。多分、お面を作るなんて、倉敷さん以外の方はしていないでしょうし…。」


結局、答えが出ないまま、射的とおみくじについてだけ配分と作成物を決めた。

情報を夏樹と真冬にも伝えておくと、真冬からはOKスタンプが、夏樹からは『お面の件はどうなったの?』とメッセージが飛んでくる。

文章だけで伝えるのも苦なので、『説明は明日でもいい?』と送ると、『了解』とだけ返ってきたので、アプリを閉じて、奏と課題を進めることにした。



 課題を始めてから数分たった時に、姉さんは少し疲れた様子で帰ってきた。


「はぁ~。楽しかったぁ~!」

「楽しかったって、何がですか?」


さっきまでの怒りがなかったかのように腕を伸ばす姉さんに、何があったか分かっていない奏が不思議そうに聞く。


「いや~。電車と自転車はどっちが速いか試してたの。」

「え?」


僕が予想していたことと同じだったので、「やっぱりか。」と言うと、奏は再び「え?」と混乱していた。

姉さんは昔から機嫌が良くないときは、思いっきり走るか自転車を飛ばすのだ。


「速度メーターの61キロには驚いたけど、それでも楽しかったなぁ~!」

「最高速度更新じゃない?」

「うん。風が気持ちよかったよ。弟くんも後ろに乗せてあげようか?」

「それは遠慮しておくよ。」

「私はいつでも構わないんだけどなぁ。」


奏を見ると、口を開けてポカンとしていた。開いた口が塞がらないとはこういうことなのだろう。

後から奏に「忍さんって、車か何かなんですか?」と真顔で聞かれたので、「人間では?」と答えたのだが、奏の望んだ答えではなかったらしく、また少し考えていた。

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