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物事はいつも彼女から  作者: 七灯
第三章 文化祭まで
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第80話 知らない単位

 目が覚めると、奏が僕の胸辺りに引っ付いて寝ていた。時間としては、もう起きてもいい時間だが、昨日遅くまで起きていたので仕方ないと思う。


 奏を撫でながら、今日の三者懇談で何を言われるのか考えていると、腕の中の白猫から「んぅ…?」と寝惚け声が漏れた。奏の名前を呼んであげると、意識がはっきりしてきたようで、昨日の夜のことを思い出し、顔を赤くしつつも、僕に笑顔を見せる。


「おはようございます。歩くん。」

「おはよう。奏。」


朝の挨拶も済ませ、奏はおずおずと聞いてくる。


「あの、昨日、私、寝落ちしたような…」

「うん。気持ちよさそうな顔でキスしながら寝たよ。」

「え、歩くん、キスするとき見てるんですか!?」

「うん。いつも奏が可愛いなって。」

「も、もう!…誰にも言わないでくださいよ。」

「言わないよ。『僕だけの奏』だからね。」

「…はい。これからも、お願いします。」


『僕だけの奏』を否定せず、また引っ付いてくる奏に時間のことを言うと、奏はすぐに上体を起こして、「が、学校に遅れちゃいます!」と慌てていた。多分、何もない限り、この時間で遅れることはないのだが。



 リビングに行くと、姉さんと雫さんは寝ていたが、零さんがいなかった。キッチンに行くと、起きていた零さんが料理を作ってくれていた。


「おはようございます。お父さん。」

「おはようございます。零さん。」

「うん。二人ともおはよう。今日は三者懇談だね。」

「はい。一日目なので、今日が過ぎれば後から楽です。」


奏と一緒に零さんを手伝おうとすると、「今日は僕に任せて。」と止められてしまった。


「え?でも、一人じゃ大変…」

「僕と雫は今日で一旦帰っちゃうから、最後くらいは君たちを楽にしたいんだ。」

「…分かりました。なら、僕らは着替えてきます。」

「うん。そうしてほしいな。」


もう一度リビングに戻り、着替えを持って僕はお風呂場に、奏は寝室に行って着替える。


 猫の着ぐるみの下はシャツとパンツだけなので、着替えるのがすごく楽に感じた。

(着ぐるみにこんな利点があったとは…!)



 制服に着替えようとしたのだが、登校するときには必ず身に付けないといけない一番上の服を寝室に置いてきてしまった。


 奏は着替え終わったと思い、寝室の扉を開けると、そこには僕の制服に顔を埋めて女の子座りをする、着ぐるみを脱いだ奏がいた。つまり、奏は下着姿で僕の制服を抱えている。扉が開いた音で奏は顔をあげ、僕と目が合う。


「えっと、奏さん?」

「うぁ!?…っ!」


奏の名前を呼ぶと、奏はまた制服に顔を埋めてしまった。耳まで赤くなっている。


 できるだけ奏を見ないようにして奏に近づくと、いきなり奏に右手を引かれて、奏の抱える制服の上にダイブすることになった。

奏は持っていた制服を離したらしく、頭に制服が乗る感覚がした。

(これ、今顔を上げたら奏の下着が見えてしまうのでは…!?どうすればいいんだ!?)


 奏は何もしない僕を抱き寄せて、制服越しに温かく、柔らかい感覚がした。奏が息を吸う度に膨らんだりへこんだりしているのが嫌でも分かる。

右手は握られて動かせないので、左手で奏から離れようとして、どこか掴んだ感触がすると、奏が「ひゃん!」と可愛い声をあげた。

そんな柔らかいものを掴んだ感触ではなかったので、顔をあげると、左手は奏の右肩にあったが、それと同時に、ピンク色の防壁で守られたものも見えてしまう。そして、奏の顔が赤いのも分かってしまった。


「これでも、歩くんは、好きですか…?」

「大丈夫。奏を嫌いになんてならないから。」

「私が、Aカップ、でも…?」


奏の口から知らない言葉が出てきて、思考が停止する。考えられなくなってしまったので、素直に聞くことにしよう。


「…え、何それ?」

「え、それは…!っ…」


聞かない方が良かったらしく、奏も固まってしまい、寝室に気まずい空気が流れる。


「…着替えよっか?」

「そ、そうですね!そうしましょう!」


寝室を出ようとすると奏に呼び止められ、ちゃんと着替えられるように見ていて欲しいとお願いされた。


「見せていいの?」

「はい。でも、歩くんにだけですよ?」


そう言って奏は人差し指を口に当ててから、着替えを始めた。

奏が着替えているのを見ていたら、女子の制服は楽でいいなと思うのであった。


 白猫と黒猫の着ぐるみをハンガーにかけていると、奏が「また着ましょう。」と言うので、「着ないよ。」と返したのはいいものの、着脱の楽さを考えると、案外悪くないのかもしれない。ただし、たまに奏が服に入ってくる危険性がある。



 零さんが作ってくれた朝ごはんを食べ、お昼ごはんを持って、玄関で靴を履き替えていると、零さんと雫さんがやってきた。姉さんがいなかったが、キッチンから音が聞こえてくるので、姉さんは皿洗いを引き受けたようだ。


「僕らは奏の三者懇談が終わったら、そのまま帰っちゃうから、二人とも、喧嘩しないようにね?」

「大丈夫です。」「大丈夫ですよ。」


僕と奏が同じことをいって、お互いを見てクスッと笑うと、零さんも雫さんも大丈夫だろうというように笑顔を見せる。


「ふふっ。それならよかったわ。二人とも、いってらっしゃい。」

「「行ってきます。」」

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