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物事はいつも彼女から  作者: 七灯
第三章 文化祭まで
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第79話 攻めの強い彼女

 黒猫姿にさせられ、奏に引っ付かれつつも、課題を進めていると、右隣に座る奏の頬が膨らんでいくのが分かった。それでも無視し続けていると、休憩を入れたタイミングで、奏に横から押し倒された。


「もう、私はそんなに待てるタイプじゃないんですよ?」

「それは知らなかったな。でも、今は休憩だから、休みた、いっ!?」


奏が着ぐるみのお腹辺りから頭を突っ込んで、目の前に現れる。着ぐるみは少し大きめのサイズで伸縮性もあるため、すっぽり奏が入ってしまう。


 そして、我慢の限界だった奏が唇を重ねてくる。長い間その状態が続き、どれだけ我慢したかを教えられた。


「ん~っ♪」

「っは…、もう、分かったから。勉強中はここまでにするから、ベッド行こ?」

「はい♪」


そうして奏は一度黒猫から白猫に戻り、黒猫とともに寝室に向かう。背後から「あら~。」と声が聞こえた気がするが、気のせいだろう。



 昨日の夜と同じように、奏の隣でベッドに寝転ぶと、奏に「歩くん♪」と機嫌よく名前を呼ばれる。


「今日は奏がご機嫌だ。」

「ふふっ。今日も黒猫ちゃんを可愛がれますからね。」

「え、ちょっと待っ…」


奏は僕が言いきる前に耳元まで近づき、ふーっと息を吹きかけてくる。昨日奏にばれた、僕の弱点だ。


「っ…!」

「…可愛いです。」


吐息交じりの声が耳元で囁かれ、頭がチカチカする。

(昨日と同じだ…!)


 次の攻撃が何か予想できた僕はいち早く体をひねったが、予想とは異なり、奏は耳をはむっと唇で軽く挟んだ。

突然の出来事に「ひゃ!?」っと今まで出したことのない声が出た。慌てて口を手で隠すと、耳元から離れた奏が隣で面白そうに笑っていた。


「ふふっ。黒猫ちゃんは反応も可愛いですね。」

「…うるさいな。もう寝る。」


寝るには一時間ほど早いが、寝たら奏には襲われないだろう。そう思ったのだが…


「駄目ですよ?」

「え、って、待て待て!」


奏はまた着ぐるみに頭から入ろうとするので、急いで止めようとするのだが、侵入を許してしまう。


 首元から顔を出した奏は、すごく嬉しそうだった。その嬉しそうな顔は少し動けば触れる距離にある。


 奏は何を思ったのか、黒猫の着ぐるみの中で僕のシャツの中に手を入れてきた。白猫の生地が肌に触れて、くすぐったい上に奏に触られて恥ずかしくなる。


「黒猫ちゃん、ほっぺたが真っ赤ですよ?」

「可愛い白猫ちゃんがいるからだよ。」

「嬉しいこと言ってくれますね。そんな黒猫ちゃんにはサービスです。んっ。」


奏は僕の着ぐるみから右手だけ出して僕の顔に添えて唇を重ねてくる。着ぐるみの胴体に右腕を戻すと、直ぐに奏の左手と指が絡まる。


「この手は何しようとしてたんですか?」

「え、えっと…、奏を可愛がろうかと…」

「ふふっ。黒猫ちゃんは嘘つきですね。」

「え、なんっ、んっ!」


奏に嘘がばれてしまい、お仕置き(軽め)をされるが、すぐに奏は唇を離してしまった。そして、もっといいお仕置きを思い付いたようで、右手を着ぐるみの中に入れて、そのまま腕の先から手を出して僕の手を握り、体を僕に預けるようにピッタリと密着する。


「えっと、これは…?」

「黒猫ちゃんはこっちのほうが嬉しいですよね?」

「え、待って…」


両手をぎゅーっと握られ、手で奏を動かすことができず、そのままふーっと息を吹きかけられ、体がビクッと反応してしまう。


 奏は勝利を確信したようで、耳元に正面から密着した状態で迫ってきた。


 奏に攻められてばかりではこちらが持たないので、一矢報いるつもりで、目の前の奏の耳に息を吹きかける。


「にゃあ!?」


猫の鳴き声のような反応をする奏の手が緩んだところで右手を奏の背中に回し、奏を逃げられないようにする。そして、奏の耳元にゆっくりと呟く。


「可愛いね。『僕の』白猫ちゃん。」

「そ、そこは駄目です!」

「今日は可愛いがってあげる。」

「だ、だめぇ!」


奏が嫌がったそのとき、リビング側から扉が開き、姉さんが「奏ちゃん!?」と焦ったように入ってきた。


「「「あっ。」」」


三人の声が重なり、しばしの沈黙が訪れたのだった。



 その後、姉さんに奏と二人でお説教されることになった。


「はぁ。もう、迷惑かけちゃ駄目でしょ?」

「「はい…」」

「奏ちゃん、私は奏ちゃんを信用してるから二人で寝せてるんだよ?こういうことが続くなら、別々で寝てもらうからね?」

「そ、それは、嫌です…」

「なら、気をつけること。いい?」

「…はい。」


奏は叱られて少ししゅんとしていた。そんな奏の頭を撫でてあげると、顔を上げて目を合わせる。


「ごめんなさい。歩くん。私、ちょっと…」

「そんなことないよ。僕の方こそごめん。今回は僕が止めなかったのが悪かったんだから、奏は気にしないで。奏はこれまで通り甘えていいから、ね?」


奏の曇った顔は、だんだん明るくなり、姉さんはそれを微笑ましく見ていた。


「歩くん…!あ、でも、そうしたら、歩くんにストレスなんじゃ…」

「大丈夫。奏といれば、ストレスなんて消えてくからさ。」


奏の透き通った水色の瞳が僕を貫いて離さない。そして、嘘ではないことが分かったらしく、ようやく破顔した。


「ありがとうございます。歩くん。でも、歩くんも、私に甘えていいんですよ?そのときは、私がちゃんと受け止めてあげますから。」

「うん。そのときは、ちゃんとお願いするよ。今回みたいにびっくりしないようにさ。」

「…ぁ、はい♪そのときは、満足するまで甘やかしてあげますよ♪」


姉さんは、僕たちの話を聞いて、「まあ、君たちなら大丈夫と思ってるから。」と言って、寝室から出ていった。



 奏は姉さんが出ていったのを確認して、ベッドの真ん中で寝転がった。僕も同じように寝転がると、奏はわざわざ一度起き上がり、僕の右側に移動した。


「歩くん、いきなりなんですけど、…甘えて、いいですか?」

「…うん。いいよ。おいで。」


寝転がりながら手を広げて奏を待つと、奏は腕の中に収まった。


「…さっきの続き、して、くれませんか?」

「え?いいのか?」

「次は大丈夫です。お願いします。」


奏がそこまで言うなら、やってあげようと思い、奏の耳元に近づくと、奏は体をビクビクさせていたが、しっかり手を僕の背中に回して逃げるつもりがないことを表していた。僕も手を回して奏を安心させる。


「…奏。」

「っ!」


背中に回された手に力が入って、奏が怖がっているのが分かった。「大丈夫。力抜いて。」と声をかけると、だんだん力が抜けていく。回していた右手を奏の頭に移動させ、奏を撫でると、奏の鼓動が加速していく。


「可愛がるよ?」

「…うん。」

「可愛いね。」

「…っ。」

「好きだよ。」

「私も…」

「大好き。んっ。」

「んっ、ん~っ。…ぷはっ。」


いつもより長く唇を重ねていると、奏が少し苦しそうだったので、離してあげると、奏はとろんとした目を僕に見せる。


「大丈夫?」

「うん。もっと、して…?」

「っ!あ、ああ。いくよ?」

「ぅ、んっ♡」


そうして、いつもの寝る時間よりも三十分も長く起きてしまった。奏は唇を離すことなく、幸せそうに寝てしまい、奏を起こさないように唇を離して、奏が楽に寝れるように体勢を調整して、しっかりと抱き締めて僕も眠りに落ちた。

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