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物事はいつも彼女から  作者: 七灯
第三章 文化祭まで
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第73話 今後の予定

「…くん、歩くん。」


名前を呼ばれた気がして目が覚めると、腕の中の奏と目が合う。


「おはようございます。歩くん。」

「…おはよう。奏。」


良い笑顔に迎えられ、思わず目を逸らしてしまう。目を逸らした僕の背中にそっと腕を回して、ぴったりと引っ付く奏は、昨日のようにドキドキしていないことが分かった。

目を逸らしたついでに時計を見ると、すでに8時を回っている。


「もしかして、結構前から、起きてる?」

「え?ま、まあ…」


妙に奏が落ち着いていると思ったら、時間が経って落ち着いたようだ。


「え、えっと、とりあえず、起きるか?」

「そうですね。んっ!?」

「え?どうしたの?」

「お、お腹がちょっとつった感じが…」

「もしかして、昨日の腹筋で…?」


奏は上体を上げられないらしく、痛みが増さないように奏を支えて起き上がらせる。


「すみません。私が無理するから…」

「まあまあ、そういう日もあるって。」


奏は「そうですね。」と言って両手を伸ばして抱っこの要求をする。


「えっと、それは?」

「抱っこ、してください。」


仕方ないので、奏の膝裏と背中を支えてお姫様抱っこをしてあげる。


「痛くない?」

「大丈夫ですけど…、どういう抱っこかは指定してないですよ?」

「…。」



奏に痛いところを指摘されたが、奏を降ろすことなく、リビングへの扉に向かう。奏は両親に見られるのは嫌らしく、「あの…お姫様抱っこは恥ずかしいです…」と呟いていたが、気にせずリビングに入ると、姉さんしかおらず、その姉さんは「今日も大胆だね…」と少し呆れているようだった。



 奏を椅子に座らせると、キッチンから「できた…!」と声が聞こえ、すぐに大皿を持った雫さんがやってくる。奏は少し不安そうに「お母さんが作ったんですか?」と聞く。


「そうなの!歩くんの料理がおいしくて、私も作りたいなって言ったら、れーくんが付き合ってくれたの。」

「そ、そうですか…」


奏も大体予想がついていたようで、零さんが手伝っているなら安心らしく、上がった肩がだんだん下がっていく。


「そういえば、おでかけは今日でいいのよね?」

「週末のどちらかで行ければいいと思っていたので、私は今日でも明日でもいいですけど、歩くんはどうですか?」

「僕もどっちでもいいですよ。」

「そう?なら、今日行きましょう。明日はいろいろ準備しなくちゃいけないし。」

「準備、ですか?」


何の準備なのか気になり、雫さんに聞くと、「私たちも三者懇談が終わったらお仕事だから、帰る準備をするの。」と理由を説明してくれた。


「今月三日も有給使っちゃったし、お仕事いっぱい溜まっちゃってると思うわ。」

「えっと、雫さんはどんなお仕事を?」

「私は秘書官のお仕事をしてるの。私の代わりに三人で回してるらしいけど、大丈夫なのかしら?あ、ちなみにそんなに大きくない会社だけどね?」

「そ、そうなんですか。」


失礼ながら、こんなにおっとりとした雫さんの仕事が三人で回さないといけない量だと思わず、少し驚いた。

(見かけによらないってこういうことなんだな…)



 雫さんと話で盛り上がっていると、零さんが「おまたせ。」とリビングに入ってくる。

全員が揃ったところで、いつもより遅めの朝ごはんが始まった。


「今日は軽めなんですね。」

「僕たちはいつも朝はこのくらいだから、いつもの調子で作っちゃったけど、歩くんが食べたいなら分けてあげるよ?」


零さんの心遣いは嬉しいが、僕もあまり食べる方ではないので、「大丈夫ですよ。」と断っておく。



 あの場にいなかった零さんは、まるで話を聞いていたように、「おでかけは今日で良いんだね?」と言うので、また驚かされた。

本当に聞いていなかったのか気になり、「聞こえてたんですか?」と聞くと、「聞こえはしないけど、大体分かるよ。ちなみに僕は技術県職員だよ。」と本当に聞こえていなかったのか不思議なくらい、すらすらと言うので、逆に盗聴器でもあるのかと心配になってくる。



 朝ごはんを食べ終わり、零さんは「洗い物はやっておくから、みんな準備しておいで。」と言うので、準備がない僕は零さんを手伝おうとしたら、「歩くんは、奏を助けてあげないと、ね?」と言われ、後から肩を持たれてリビングに戻される。

リビングでまだ椅子から移動していない奏が僕を見て助けを求めている。姉さんと雫さんは寝室に入って着替えているようで、奏だけが取り残されていた。零さんは「奏を頼むよ?」と言ってキッチンに行ってしまうので、奏と二人きりになってしまう。


「えっと、奏さん?き、着替えるんですよね?」

「さすがに、この服では…」


着替えないという選択肢は無いようで、仕方なく奏を再びお姫様抱っこする。奏は零さんに見られるのは特に嫌らしく、「あ、歩くのはいけますから…!」と言って降りようとするので、足からゆっくりと降ろすと、クローゼットの方に向かっていき、奏がクローゼットを開けると、奏がフリーズした。


「奏?」

「…あの、この服、何ですか…?」


そう言って奏がハンガーごと取り出した服(?)は、猫の着ぐるみだった。


「…猫?」

「もう一着あるんですけど…。」

「…えっと、とりあえず、それは、閉まっておこう?」



 奏は二着服を取って体に当てて、「どっちが良いですか?」と聞く。白のブラウス+黒のスカートか、白のカーディガンか、どちらも奏に似合うので、どちらがいいのか判断に困る。


「…似合い過ぎて決められないって言ったらどうする?」

「えぇ…、じゃあ、じゃんけんでもしますか?私が勝ったらカーディガンで、歩くんが勝ったらブラウスとスカートにしましょう。」

「分かった。じゃあ、じゃんけん…」



「奏ちゃん、すっごい似合ってるよ!」

「うん。可愛いよ。奏。」


姉さんと零さんが奏に素直に褒めていて、奏は少し照れているようだった。

…ちなみに奏が着ているのは白のカーディガンで、一回負けた後にもう二回ほどじゃんけんをしたのだが、一度も勝てなかった。なぜだろう。

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